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タウリの蹄鉄

馬や牛は、ヒヅメで走る。

自然界では、体重しか掛からない上に、時折に走る程度だが、人間に使役されると、人間を乗せて頻繁に走る様になったり、馬車を引いて、蹄に負荷がかかる。

その為に蹄が割れてしまい、怪我に至るのだ。


人間に飼われている物は、蹄の保護の為に、蹄鉄テイテツを取り付け、半月から一ヶ月で定期的な交換と、蹄を削る削蹄さくていを行う。


ラーミァ達は、開拓中の街道沿いを旅していたし、駐屯地では長居が出来なかった。


「馬車の馬も、そろそろ蹄鉄を交換しなければなりません。」

「蹄鉄?」


トッカーナの話を聞いて、ワイズが興味を持った。

エデンでは無かった概念だ。


蹄鉄は馬によって、既製品を微調整して使われる。

旅馬車の場合は、その馬に合わせた予備が準備されているのが、普通である。

停車場の近くには、そういった業者。装蹄師ソウテイシが居る。


トッカーナが、馬車の馬、二頭を装蹄師の元へ連れて行く。

理由を聞いたワイズは、タウリを連れて、見学する事にした。


最初は釘を抜いて、古くて磨り減った蹄鉄を外していく。


「こちらが、蹄鉄です。」


トッカーナが、馬車に用意されていた予備の蹄鉄を装蹄師に手渡す。

装蹄師は、馬の蹄と蹄鉄を見比べて、足の近くに蹄鉄を置いてゆく。


蹄鉄は、馬によっても大きさや形が違うし、前後左右によっても異なる場合がある。

何度か、置いた位置を交換しながら、蹄と蹄鉄の組合せを調整する。

場合によっては、蹄鉄を加工する必要性もある。


「よし!これでいいだろう。」


装蹄師が八個の蹄鉄の組合せを決めた様だ。

彼は次に刃物を取り出した。

それで、蹄を皮を剥く様に、削ってゆく。


「人間の爪を削る様なものです。」


トッカーナがワイズに説明し、されている様を、タウリも見ている。

されている馬は、蹄鉄を持たないタウリに『何て事ないさ』みたいな視線を送っている。


蹄鉄を充てがい、爪の切り方を微調整している。

装蹄師は、ナイフをハンマーに持ち替えて、前掛けから釘を何本か出して咥えた。


最後に蹄鉄が、蹄に釘で固定されてゆく。

打たれる度に、タウリかビクついていたが、そんな行為も八回も続けば慣れてしまう。


装蹄が終わった馬は、足踏みをして具合いを確かめ、満足そうに歩き出す。


タウリが、馬の足と顔を交互に見ている。

一ヶ月程も一緒だったので、気心は知れている。


「馬車の馬が、蹄鉄の先輩らしさを見せて誇っている様にも見えますね。」


トッカーナが、微笑んだ。

タウリが、装蹄師の元へ行き、予備として飾っている蹄鉄に興味を示している。

タウリは先輩達が装蹄された馬車に立ち、片足を上げて見せた。


「初めてなんですが、着けてもらえませんか?」


タウリの気持ちを汲んだワイズが装蹄師に頼む。


「合うのが有れば、良いがな。」


装蹄師は、一通りタウリの足裏を見てから、停車場の横にある小屋へと入って行った。


タウリが、少し驚いた顔をしている。

駄目だと判断されたと思ったのだろうか?


少し時間が経ってから、十個程の蹄鉄を持って出てきた。


「コイツの蹄は、少し変わっている。今回は蹄の方を合わせるが、特注品を作った方が良いぞ。」


装蹄師は、そう言いながら、おおよその候補を足元に置いてゆく。


「最初は恐いもんだ。手綱を持ってやっててくれ。」


初めて爪を切られ釘を打たれるのだ。人間だって恐いだろう。

ワイズが、手綱を握り、タウリの顔に手を添える。


ジョリジョリという音で、目を見開き、釘を打つ衝撃に頭を動かしてはいたが、先輩馬の視線も有って、堪えていた。

流石に後半は落ち着いていたが、脚をばたつかせていたのは間違いない。


慣れない為か、少し歩き辛くしているのと、蹄鉄の音に違和感を感じていたが、良き先輩に導かれゆっくりと歩みはじめた。


数日後、再び検問を出て西部で試し走りをするワイズと馬の姿が、目撃される事になる。


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