人間というもの
御使い様の命令で、人間というものを学んでいる。
エデンとカナンでトラブルが起きた時に、わざわざ御使い様の御手を煩わせない様に、仲介者を育てるのだそうだ。
我に、その役を仰せつかった。
人間とは、我々の根源種の一つを再現した物らしい。
本来はリンクシステムを持っていないらしいので、亜種と言うべきなのだろう。
観察によると、知性はあるが、本能や感情が制御出来ておらず、下手に知恵が回るだけ、獣よりたちが悪い。
いや、兄たるワイズを見ていると、それは人間の文化や教育の質が悪いからなのかも知れないとも思える。
そして、肉体的にも脆弱だ。
未熟児である我々と同じ位しか無い。
自分の身長位しか飛べないし、一メートルの高さから落ちても骨折する。
下手すると脊髄損傷や内臓破裂や出血で死ぬ。
寿命も短い。
至らなければ、兄者の様に工夫すれば良いのだが、その為の知識や技術すら無い。
いや、禁止されているのだろう。
あの不安定な精神構築と、性質では、技術があったら自滅する未来しか予測出来ない。
マリコスの基礎知識は勿論、兄者が使っている高周波ブレードやキャパシティアーマーも、相談した結果、身近な者にも教えない事にした。
駐屯地と呼ばれる兵士の集落では、功績の称賛よりも、力の伝授が求められる傾向を目の当たりにした。
やはり、教えなくて正解だったと、今でも思う。
そして、彼等は自分に属する者の命を過剰に重視する。
身近な不適合者の命より、身近でない適合者の命を軽んずる。
命は、中長期的に増やす事ができるのだから、不適合者を切り捨てるべきかなのに、それをしないから、身近な者が全て不適合者になっていく。
腐ったオレンジを棄てないで、混ぜておくと、他のオレンジも腐りやすい事を知っては居る様なのだが、行わない。
我等には、理解出来ない。
現にエデンでは、未熟児で不適合な我は、一族の元を離れて、別の用途を選択させられているのだ。
このような人間との付き合い方を考えなければならない。
有意義や必要性ではなく、基本的に本能で動き、それの要望を満たす為に稚拙な知恵を使っている。
幸い、良いサンプルが手元に居る。
兄者に生殖本能を掻き立てられているが、拒まれるのを恐れて懐柔策を練っているメスだ。
特に有能な点は無く、兄者の配偶者に相応しいとは思えない。
兄者に相応しいメスは、リンクシステムに長けた者とかだが、人間社会では、王族や貴族と呼ばれ、組織的な配偶が望まれている。
ラーミァと言うメスが理想的だったが、王族が目をつけている様なので断念した。
機会が有ればと、見張ってはいる。
兄者も、この点は理解している。
他の価値観を刺激される者を探すしか無い様だ。
まぁ、気長に観察と配偶者探しをしたいと思う。




