魔導師
『導師』。正確には『魔導師』と呼ばれる。
一人前になると、名前に『ガーランド』と言うミドルネームが許される。
この世界には、『魔導』と呼ばれる力を持つ者が、いくらか存在する。
この国では、主に王族と、その血をひいている者に多いが、平民からも突如として産まれる事がある。
先祖返りの一種だと考えられているが、妻の浮気と間違われる事も少なくはない。
魔導の力を持つ者は、儀式を用いて大地の精や大気の精。水の精等に願いをして、土地を豊かにし、農業の促進を助けているのだ。
マスの力を借りて行えるのは、土地改良だけではない。
結界に代表される知覚の拡張。攻撃、防御など多岐に渡るが、範囲は導師の能力によっては狭く、万能ではない。
力の大きさには環境や条件が有り、使えば蓄える為に時間がかかる。
そして、マスは不可視の霊的存在等ではなく、大気や地中などに実在する、砂の様な存在だ。
有能な魔導師は、それらを集め、衣服の中に忍ばせて使ったり、道具に仕込んで使う事がある。
魔導の力を持たぬ者にとっては、砂粒にしか過ぎないが。
当然、その様な魔導師は、貴族に次ぐ地位を与えられるが、地位を誇示する為には、国への登録と貢献が強要される。
平素は、国の役人同行の上での国内の土地改良に従事しているが、攻撃力や防御力から軍人や使者として徴用される場合もある。
レベルの低い魔導師には、ガーランドの名を捨てて、商人や平民に成る者も少なくはない。
そんな魔導師の割合は、国によって異なる。
ラージァニース魔導帝国が最も多く、フーデルヒース王国が次に多い。
他の国は、皆無と言える。
魔導の力は、もともとが巨大朝廷の支配階級にのみ与えられた力であったが、その支配階級が分裂してできたのが、この二国と言う歴史的背景がある。
他の国々は、被支配階級の者達が分裂に乗じて分かれ、建国した国であるため、表向きには友好的な立場をとるが、魔導師や王族といった、かつての支配者の末裔に、根強い敵意はある。