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秘匿

途中で、軽い昼食をとって、夕刻には作業が終了する。

ラーミァの能力は、多くの魔導師五人分に迫る効率がある。


普通は四・五日かかる作業が、実に一日で終わるのだから、担当役人がラーミァの来訪を喜ぶ訳だ。

貴族相当の食事を用意するのは、なかなか負担なのだから。


今回、ワイズ達が豊穣儀式を試してみてわかったのだが、ワイズの魔力は、トッカーナより少し勝る位で、ラーミァとは比較にも成らなかった。


彼は、身体に付けた鎧に、大量のbatteryタイプのマイクロマシンを仕込み、常にエネルギー充填しておく事で、自分の周りに爆発的な瞬発力を生んでいたのだ。

彼の戦法は、大容量のフル充電と、瞬発的な殲滅による物だ。

カナンの民とは違い、マイクロマシンに対する正確な知識があるから出来る行為である。


この知識の差違に、ワイズ達は驚いたが、あえて話題にはしなかった。

マイクロマシンの知識を、カナンの人間に供与する事は、イフィルに禁じられていたのだ。

だから、ラーミァ達でも教える事はしない。


情報は、一度流れ出すと収拾がつかなくなる事がある。

ワイズの見てきた愚民共が、力を付ける可能性を、彼も善しとしなかった。


ワイズがラーミァに勝るとすれば、応用力と戦術の構成能力と、掌握範囲内である鎧にに蓄積されたエネルギー量であろう。


悪く言うとワイズやトッカーナに、豊穣儀式は向かない。

逆に、ラーミァに戦闘は向かない。



仕事を終えて、簡易宿場の宿では、完了を祝して、皆で比較的豪華な晩餐を、頂だいていた。

手空きの宿場護衛も呼ばれたので、ワイズやトッカーナもラーミァ達に同席した。


座る時に、剣士は腰に付けた剣を外す。

食事の後、トッカーナは、ワイズの外した二本の剣をみて、かつての賊の事を思い出していた。


「ワイズ殿。貴方の剣は何故、あれほどに切れるのですか?鋼鉄の剣でも、あれだけ両断出来る物は見たことがありません。」


剣士が強く成りたがる理由は幾つかある。

護りたい対象が居る。

強くなって賞賛されたい。

強くなって見下したい。

負けて不利益を被った。

目標とする人に並びたい。

自分がどこまで出来るか知りたい。


トッカーナの場合は、自分がどこまで出来るか知りたいのが理由だった。

そして、強くなる為に感心を持つ物の一つに、武器エモノの質がある。

武器が優れていれば、技の不利を補える。

武器と技が優れていれば、量以外で負ける事はない。

ワイズには技でも負けたが、あの両断は武器による物だと確信していた。


「御覧になりますか?」


ワイズは、後で見て騒がれても面倒だと考え、ある程度は開示する事を考える。

そして、脱いだ鎧から、一本の投げナイフを取り出した。

屋内での食事なので、ワイズはバーンと離れているし、鎧も脱いでいる。


剣の一本を抜くと、刃を上に向け、投げナイフを重力を使って、剣の刃にに向かって落とした。

剣の刃が白っぽく光り、異音を放つ。

落とされた投げナイフは、弾かれる事も、音もなく両断されて、ワイズの膝の上に落ちた。


ハガネを切る?」


常識を逸する現象に、トッカーナは勿論、ラーミァもリリアナも驚愕する。


「これは、武器とリンクシ・・魔法の併用による物です。」

「魔剣に属するものですね?拝見しても良いですか?」


ワイズの説明に、トッカーナが願い、剣を手渡される。

魔剣とは、柄にマスを封じ込める事で、刀身に魔法発動させる物だ。

有名な物だと、炎を纏わせ避けても火傷する、灼炎剣バーニングソードなどがある。


ワイズの剣は、細身で片刃の片手剣だ。

形状は、江戸時代の日本刀に似ている。

世界の片手剣としては長め、両手剣としては短め。

日本の実戦刀である胴田貫ドウタヌキより、携帯性を重視されており、長さも肉厚も抑えられている。


この世界で標準的に剣士に使われている剣は、基本的に地球テラの中世の物と同じで、長く、厚い両刃剣だ。

切れ味はよりは、鎧を割ったり、鎧越しの骨折を目的に重量と強度重視で使われる。


丁重に剣を預かったトッカーナは、まず、刀身を観察する。


刀身の波紋は、流し込みによる量産ではなく、幾層にも折り返された複合素材である事を伺わせる。

色の違いは、刃先が鋼鉄、峰が軟鉄で出来ているのだろう。

硬さと柔軟性を併せ持つであろうコレは、それだけでも逸品と言える。


更に注意を引くのが、刃の部分に、薄く纏わされている、透明な被膜。


「この透明な部分は、何ですか?」

「それは金剛石です。」

「金剛石?あの鉱山から時々発掘される、堅くて加工も出来ず、割れやすくて熱でも溶けず、火にくべれば燃えて無くなるアレですか?」


この世界では、金剛石ダイヤの粉で、金剛石を削る技術力がない。

宝石として重宝されず、使い道の無い邪魔者でしか無い。

トッカーナは、この剣が模擬戦に向かないと言われた理由を理解する。

これで普通に戦えば、金剛石の被膜は簡単に砕け散る。


そして、刀身と柄に若干の遊びがある様に感じる。

剣にとっては寿命を縮める為に、普通はしっかりと固定する物だ。


柄の中に魔力を注いでみる。

マスが入っているのは解るが、掌握出来ない。使えない。

何らかの保護がされているのだろう。


訳の判らない事が多い。


だが剣士とは、いつ敵対的な立場になるかわらないので、武器や技について、根掘り葉掘り聞くのはマナー違反だ。


トッカーナは、ぐっと堪えて剣を返した。




それらのやり取りを見ていたラーミァは、エデンについて考えていた。

森が生い茂り、道も建物も無く、力が支配する世界だと、教えられ、考えてきた。

しかし、実際には礼儀と文化を持ち、人間を越える魔力と身体能力、カナンを凌ぐ魔導知識と技術力が有る様だ。


彼等には、衣服や街、道具などが『無い』のではなく、『要らない』のだろう。


それに比べて人間は、なんと無知で愚鈍で、非力なのかとラーミァは考えていた。

が、言葉にはしなかった。


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