領地開拓
フーデルヒース国王は、苦辛していた。
自国の三割程の国土、いや、更地を、いきなり渡されたからだ。
まずは兵を送り、他国との国境門を閉じて、御使い様に滅ぼされた罰当たりな国であることを告げる。
「行方不明者、取り引きや借款に対する保証は、一切を受け付けない。その様な国と取り引きしていた者に対する神罰だ。我が国でも多数の被害が生じている。」
「ヌアンベクト共和国の国民だった者の権利など、当然、認めない。住む場所が無いのなら、我らが国王の慈悲によって家と地域が与えられるが、異端者として扱われ、出入りを禁じられる。」
「我が国は、更地を開拓せねばならない負担を背負わされている。豊かな領地を与えられたのではない。資金や資材の提供が無いのなら、口出しするのは、御門違いと言うものだ。」
あらかじめ、不満に対する応対は、七日の間に草案を作らせておいた。
再度の天罰が、そうそう有るわけがないと、軍事行動に出ようとした国には、友好国ラージァニース魔導帝国の駐留軍が、脅しをかけた。
再建計画は、何度も再考と変更が行われ、結局は国境門の周辺に都市を作り、外国との取り引きを行うだけにした。
外国人の領内立ち入りや通過は、基本的に禁止となった。
国境門都市を中心に農園を広げ、かつての街道を利用して、領内の移動や流通は、王国民限定とした。
多くの土地が放置されたが、それもある意味では自然の姿と言える。
今すぐ開拓しないだけで、将来は開拓するのだ。
開拓の期限は切られていない。
国境門都市。いや未だ国境門街と呼ぶべき規模だが。
そこでは、以前のヌアンベクトの商品を求める者が少なくなかった。
国交の関係で、第三国で模倣された物を、輸入し再輸出も行われたが、王国内の職人が健闘して、国内製も多数がつくられた。
巨大な大地と生産基盤を背景に、諸外国のコピーよりも、良品が開発されつつある。
国境門街は、小規模ながら、かつてのヌアンベクトに近いと言える。
無理をせず、必要な事と、出来る事に重視したフーデルヒース国王の、旧ヌアンベクト開拓は、数年で一応の落ち着きを見せた。
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誰かが栄華を極めているのを、見た時。
他者が、素晴らしいと評価を受けているのを見た時。
他者の行為に感銘を受けた時。
人間は、それを模倣しようとする。
競技スポーツの優勝者や技術の表彰を受けた者を見て志す。
俳優やアイドルの真似や同じ衣装を着たりする。
難病から医術で助かった者が、医療関係者を目指す。
国単位も、同様である。
社会制度や文化を模倣し、同じ様に栄えようとする。
ヌアンベクト共和国という国は、特殊で突出していた。
他国は、商品を輸入し、模倣し、後進国である人件費の安さを使って、安く量産する。
当然、『安かろう、悪かろう』と言われる物が増える為に、ヌアンベクトの近くでは商売にならない。
しかし、離れた国や奥地では、意外と商売になったり、偽せブランドが横行する。
売っている人間が、偽せブランドだと知らない事も少なくない。
ある日、栄華を極めていたヌアンベクトが消滅した。
何の前触れも無く、七日間で無人の更地になった。
しかし、商品の消費国は無くなっていなかった。
コピー商品が飛ぶ様に売れ、バブル経済となる。
生活水準は高くなり、生活は物に溢れ、浪費が美徳とされる。
泡の如く、経済は一気に空洞化し、第一次産業は輪国に依存する様になった。
しかし、泡はいつまでも膨らみ続けはしない。
消費国が自国生産を始めると、一気に経済は破綻し、町は失業者で溢れ、ゴーストタウンが増える。
既に戻るべき農地も無い。
外国に出稼ぎに出る者、移民する者が増えるが、行政で甘い汁を吸っていた者達は、権力を維持しようと、軍事政権で税を搾り取り、更に経済は悪化する。
つまらぬ事で、同じ弱小な隣国に戦争を仕掛け、生産力と財力を吸収しようとするが、長引く戦争は、共に疲弊して併合後は、更に悪い状況となる。
中には、自ら、より大きな国の属国となる事で生き延びた国もある。
大陸の国々は、朝廷崩壊直後以来の、激動に見舞われていた。
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