皇太子の人選
組織において、トップの仕事は『選ぶ事』である。
有能な部下を選び、情報から有益な物を選び、あげられる提案から行動方針を選ぶ。
それ以外に秀でている必要性は無い。むしろ、無い方が良い。
全てを自分でやる様では、組織として成り立たず、やれる範囲が小さくなる。
最前線に出て戦う様では、戦場全体の把握が出来ない。
情報収集に走り回っている様では、他者の提案を採決したり、情報を聞く暇がない。
自分で方針案を作成する様では、視野の狭い物しか出来ない。
小さな集団では、トップが多くの能力に秀でている事が重要であるが、大きな集団においては、そうではない。
つまりは、優秀な副官を多数徴用する事が必要とされる。
これは、大企業、財閥、政治家に必須の事であり、もちろん国王にも言える。
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国王は勿論、皇太子は、次代の行政の為の人脈と配下を選択し、育成しなければならない。
ステファンは、迷っていた。
この世界の王は、御使い様の命を受け、人間を導いて行かねばならない。
幸いにも、前国王の御代には、御使い様の引き継ぎだけで、大した事は起きなかった。
現在の国王は、御使い様関係の事を皇太子に行わせる事で、情報の秘匿を行っている。
しかし、その皇太子ステファン個人では、既に限界を感じていた。
ラーミァが居るとしても、彼女に任すべきではないと考えている。
彼女は重要な立場ではあるが、為政者ではない。
ステファンにとって幸いにも、前回はクイントが自主的に申し出て来たので同行させたが、ステファンが指示して彼に御使い様の補佐をさせるのでは、限界があるだろう。
今後、先代国王の時の様に、平穏無事であれば良いが、ここ一年の様な事が有れば、クイント一人では荷が重い。
現に、例の洞窟教会から帰ったクイントは、寝込んでしまった。
ステファン自身も、ヌアンベクトでは寝込んでしまったのだから、同情しかない。
「関係者の増員をするとして、誰を宛てるべきか?」
ステファンは自問し、自分に宛がわれた側仕えを見回す。
「国是に係わる事、神事に係わる事で機密が守れ、行動力のある者を選びたいが、誰ぞ心当たりはないか?」
ステファンの問いに、一同が頷く。
「側仕え筆頭のクイント・バーナッシュが最適と思われます。」
彼は、先のシスタ教殲滅にも参加したと聞いている側仕え達は、迷う事は無かった。
「うむ。クイントの他には居らぬか?」
そうなると、側仕え達は考え込む。
件のクイントは激務で寝込んでいて、部屋で臥せっているらしい。
誰も、そんな激務を望まないし、推薦して恨みを買うのも嫌だ。
側仕えの一人が、考え倦ねた挙げ句に外部に思考を回した。
「従妹のリリアナ様は、如何でしょう?王族血縁ですし、知性に富み、女性ながら行動力もお有りと聞きます。」
叔母の娘である、リリアナ・サイスフォート。
ステファンの聞いた範囲では、単なる『御転婆』で、嫁の貰い手も、行くつもりも無い様だった。
しかし、王族血縁者と言うのは、アデバンテージが高い。
「一考に値するな。先方に打診の書状を送れ。陛下にも御相談してみよう。」
まずは先方に話を振り、国王に提案する。
根回しと報連相は、組織運営の要だ。
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