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天罰

国会の出口で待っていたのは、ゼルータだった。


「奴の居場所は、判ったか?」


ゼルータの問いに、イフィルは首を横に振る。

ゼルータは、あからさまに溜め息をつく。


国会前の通りまで出たステファンが見たのは、遠方に赤く燃え盛る炎だった。

祭壇の壇上に居た男が、イフィル達の後を追い、国会の出口まで来ていた。

男は警備兵を捕まえて、問いただす。


「何が起きた?」

「副司祭様。ドラゴンが、ドラゴンが多数飛来して・・・」

「馬鹿な!エデンからは来ない契約になっているとシータ様が・・・」


壇上の男。副司祭は動揺していた。自分達に敵対するのは、人間だけだと思っていたのだ。


「奴等はエデンから来たのではない。海を越えた西の大陸から飛来して来たのだ。御使い様の契約は破られてはいない。」


フィグロが、笑いながら答えた。

無知は害悪だ。システムから離れて久しいシータには、プロジェクトの進行状況や変更は掴めない。


国会前に、アルデバランが引く行商人馬車がやって来た。

連れて来たのはフィグロだ。


「フィグロが二人?」

「ガースを食べ終わりましたので。」


ステファンが見ている前で、二人のフィグロが一つに溶け合う。

ステファンは、ガースの家での光景を思い出し、身を屈めた。

同時に、彼の耳に付いていたゼリー状の塊が、地面に落ちてフィグロに融合する。


「ば、化け物め!」


フィグロの融合を見た副司祭が叫ぶ。

フィグロが鼻で笑う。そして、上を見上げた。


国会前で周りを伺う彼等の頭上に、大きく黒い影が迫っていた。

激しい風と共に、それは地上に舞い降りる。


「「兄上!」」


ワイズとバーンが同時に叫ぶ。

それは全長30メートル越えのドラゴンであった。

ドラゴンはワイズ達とアイコンタクトをとると、地べたに頭を付けた。


「御使い様。御呼びに従い、参上致しました。御命令通りに殲滅を開始しております。」


ドラゴンは、まさに土下座のまま、人の言葉を発した。

その巨体の前に、ゼルータが進み出る。


[遠路遙々、御苦労。ここから東へ戻る。道を開け。]

「御意。」


ドラゴンは、踵を返すと、国会前の道を東へ歩み始めた。

東の国境まで延びる大通りを、真っ直ぐ進む。

同時に翼を広げて風を起こし、大通りの左右の家屋を吹き飛ばしてゆく。

レンガも吹き飛び、土台しか残らない。


見渡す限り空は赤く燃え、破壊の砂煙が舞う。

騒音と悲鳴と泣き声が響き、一メートル位の巨大な虫が飛び交い人を襲っている。


「こんな暴力が正義な訳がない。」


副司祭が、泣きながら叫ぶ。

フィグロが彼の顔を覗き込んだ。


「何を戯言を吐いているのやら。創造主の意思に反して好き勝手やっているヤカラが正義を語るな。」

「我等は御使い様の、シータ様に従い・・・・」


フィグロは呆れた顔で、イフィルの方を見る。


「シータ様は御使い様だが、創造主ではない。人間の創造主はイータ様だ。この不良品めが!」


副司祭は唖然とする。

御使い様が、全て創造主だと思い込んでいた事に気付いた。

御使い様が複数存在する事は知っていたのに、考えが及ばなかった。


「質問だ、人間。お前達は家や餌を与えた家畜が、飼主の手を噛んだら、今まで通り離してやるのか?殺すのか?」

「・・・・私はシータ様に騙されたのだ。」

「違うな。お前は、お前の意思で、イータ様を信じない事を選らんだのだ!」


否定など出来ない。

安易で都合の良い言葉に酔いしれて、古い教えを否定した自分が居る。


「イータ様。我等に御慈悲を!」

「図々しい。お前達が祈るのは、シータ様と決めたのだろう?」


副司祭の言葉は、ことごとく、フィグロに否定された。

フィグロは許せなかったのだ。この様な不良品が、同じ空気を吸っていると言う事実が。


ステファンが、胃を押えながら、両名のやり取りを見ていた。

胃が痛いとか、言っている場合ではない。

この、やり取りを理解しなければ、明日は我が身が業火に焼かれるのだから。


彼は、嘔吐する程の経験を積んでしまった後悔と、存続に関わる貴重な知識を得た喜びを、一日で味わってしまった。



いや、まだ阿鼻叫喚の地獄絵図は終わっていない。

目の前で、一つの国が国民が、滅びようとしているのだ。

ワイズに押されて、馬車に乗る様に促された。

御者台などは無理だ。

馬車の後方から梯子を登り、仮眠スペースに潜り込み、毛布で耳を塞ぐ。


走り出した馬車の中にまで、壊される振動と肉が焼ける匂いが伝わる。

悲鳴が毛布越しに聞こえてしまう。



更にドラゴンの叫びが聞こえる。


「聞け!愚民共よ。この国の民は創造主の命令を守らず、己れの身勝手を通し、他の者に魂を売り渡した。よって、この国は呪われ、創造主の言葉により排除される。滅べ!滅べ!滅べ!」


こんな風にはなりたくない。こんな死に方はしたくない。

切り刻まれた死体。痙攣しながら溶ける肉体。燃えながら転げ回る姿、虫に襲われ喰い千切られる肢体。


目を閉じると浮かんでくる光景に、毛布で頭を押さえて、目を見開いている事しか出来ないステファンは、人間の非力さを、自分の弱さを痛感していた。


38話から43話までの皇太子の名前間違いを修正しました。m(._.)m

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