表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/100

改宗

イフィル達は、夕食が終わってから、ガースの家に向かった。

ポールも、半日もすれば落ち着いていた。いや、諦めていた。


イフィルがドアをノックする。


「どちら様ですか?」

「王国から来ました。ガースさんのお宅ですよね?」


イフィルが声をかけた後、しばらく沈黙が続いたが、静かにドアが開いた。

鎧姿のワイズを外に残し、イフィル、フィグロ、ポールの順に入室する。


「王国諜報省の使いで参りました。」

「今は、ガースと名乗っていません。それに諜報活動も・・・」


主人は、来客に椅子を薦めた。

三人は、ゆっくりと腰をおろし、うつ向き加減だったポールが、顔をあげる。


「で、国家を捨てて、自由を手に入れたと?」

「殿下?なぜ、ここに?」


来客の一人が、王国の皇太子である事に、驚かない者は居ない。


「妄想に毒されない、強い意思を持っているからだよ。」


ステファンが軽蔑した目でガースを見下ろす。


「あぁ、奥さんが教会に駆け込んでいますね。流石に手回しが早い。」


椅子に腰掛けたフィグロが、服の裾を直しながら、口にした。

ガースは、驚いて奥のドアから逃げようとしたが、ドアが開かない。


「我等を前に、足掻けると思って居るのか?」

「そうやって他者を見下していればいいさ!今に、今に!」


ステファンは、『ドン』とテーブルを叩く。


「見下して居るのは、裏切り者だ!」

「・・・・・・」


フィグロが椅子から立ち上り、ガースの頭を片手で鷲掴みにする。


「いろいろと吐き出してもらいましょうか?」

「あがっ!あぐぅ、がっがっ・・・」


ガースが変な苦しみ方をする。

足掻くが、動く事も、逃れる事も出来ない。

頭を鷲掴みにしたまま、フィグロがステファンの方を振り返った。


「殿下、何をお知りになりたいですか?」

「そうだな。他の密偵は、どうなったとか、どの位の機密が漏れているとかが判れば嬉しいが。」


フィグロは頭を掴んだまま、暫く黙って考えている。

ガースの身体は小刻みに震え、目は白目を剥いて涙を流し、口からは泡混じりの唾液を垂れ流している。


「密偵は、全滅ですね。寝返らない者は死んでいる様です。末端の構成員なので、たいした情報は持っていませんから、漏洩は役立たずだったらしいですが、王国で共に訓練を受けた者を、次々と取り込んでいったみたいですよ。」

「どうして、そんな事まで判るのですか?」


フィグロの明確な返答に、ステファンが驚く。

ゆっくりと、その手を放す様子を見て、更に驚愕する。

ガースから放した手は、人間のソレではなく、半透明な蛸の脚の様に伸びていた。

ガースは、頭に幾つもの穴が開いており、血や白濁した物が噴き出しながら、床に崩れ落ちた。


「脳味噌を食べたからですよ。」


当たり前の様に語るフィグロに、ステファンは、腰を抜かして震えた。


「人の成せる技ではない!」

「それは、そうでしょう。私は魔族ですから。」


普通に、にこやかに笑うフィグロが、かえって恐い。


トントントン


ドアのノック音に、ステファンがびくつく。


「イフィル様。武装した十数人がやって参ります。」


ワイズが扉の向こうから告げる。

イフィルは、腰を抜かしたステファンの様子を見て。


「こっちは、少し動けない。相手をしてやれ。」

「御意。殺しても?」

「好きにやれ。」


ワイズに指示を出す。

やがて、屋外で、騒ぎ声と悲鳴が聞こえる。


----------


ワイズは、迫り来る相手を目視して、腰に挿した二本の剣を抜く。

黒い刀身に、刃の部分だけが、銀色に輝き、高い唸り音を立てる。


兜のフェイスガードが左右に開き、横に広がる。いや、これはバーンの前足だ。

ヘルメットに擬態していた目玉が周りを見回し、ワイズの額部分に牙が見え隠れする。

背中の翼を若干、開いた。


腰を落とし、左右に開いた剣先は地面に付き、刃を前方に向けている。




武装した兵は、六人づつ左右に別れ立ち止まり、それぞれ半分が小さな弓を構えていた。


「ボーガンか?」

「放て!」


左右から合計六本の矢が放たれた。

同時に、残り三人づつが、剣を振りかざし、走り出した。




ボーガンの合図と同時に、ワイズの後方から凄まじい風が吹き、ワイズの身体を左手の敵側へと追いやる。

風を背中の翼に受け、異様な速さで突進していくワイズ。


六本の矢は、空中で叩き落とされる様に地面に落ちた。

バーンの手が光を放ち、高重力の壁が出来ていた。




右翼の三人は、ワイズの急激な接近に、間合いをずらされ、振り上げた剣が間に合わない。

左右に逃げようとするが、既に遅く、突進してきたワイズの広げた剣が左右から襲ってきた。

剣で受けようとした三人だが、その剣も、鎧も、肉体すら、マッシュポテトの様に、抵抗無く切り裂かれた。

高周波ブレードだ。


切り裂かれた三人の向こうには、ボーガンを放った三人が居る。

ワイズの頭部から、炎が放たれ、火ダルマになって転げた。

バーンのブレスだ。

勢いを止めないワイズが、流れる様に、切り裂いた。




武装兵の左翼は、予想外の速さに相手を見失い、剣が空回りした。

体制を立て直して見た右側は、血の海だ。

左翼三人の剣士は追撃しようとするが、既に間合いをとられて、相手は対峙しようと向きを変えている。

ボーガン隊は、次弾装填しようてしていた。




圧倒的に、機動力が違っていた。

バーンは力場で風を起こし、翼で受けて推進力にしていた。

前足で重力を操り、口内に蓄えたマソで粒子加速の炎を放つ。

ドラゴンとしては、基本的な能力だ。


ワイズは力場で障壁を張りながら、磁力パルスによる高周波振動で金属すら切り裂いてゆく。




次の餌食はボーガン隊だった。

鈍足で素手同然の彼らに、抗う術は無い。

三人の肉体か、瞬時に六つになり、路地に転がる。


一瞬に九人を切り裂いた相手に、残った三人は恐怖しか無かった。

耳をツンザく高い音に、思考すらままならない。

化け物の様な外観の相手は、剣を構えて、最後の言葉を発する。


「崇める神を、間違えたな。」


死体が、更に三つ増えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ