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報告会

来た時と同じ様に、単独行動を取ろうと考えていたイフィル達だったが、思わぬゴタゴタに、考えを変えた。


王国交渉団の残りと一緒に帰る事にした。


国境までは、帝国の軍隊が同行し、国境からは、先駆けで知らせて待機させておいた王国の軍隊が同行する。

どちらも、二百人体制の行軍だ。

その、荷車の一部に紛れ込む。

誰も手出し出来ない。

間者が居ても、数で監視される。

ましてや、イフィルの馬車には、一人なのに交代で見張る鎧武者が居る。


今回は近衛隊が居ないので、奇異な目で見られる事は少なかった。

あえて言えば、見慣れぬ鎧を着た者が、若干の視線を浴びてはいたが。


交渉団は、昼夜の為に休憩を取っていた。

ラーミァがスパイスを効かせた料理を作っている。

イフィルの料理を手伝い覚え、帝国でスパイスを買い込んでは、いろいろと研究している。


「ゼルータ様は、最近、寝てばかりですね?」


夜は起きている様だが、昼間はほとんど寝ている印象しか、ラーミァにはなかった。

まぁ、猫とは本来が、その様な物だが、ゼルータ達の正体を知る彼女は、そうは思わない。


「エデンにでも、いらっしゃるのでしょう。」


ワイズが、口を滑らす。


「エデンに?ここに居るのに?」


ラーミァの質問に、ワイズは失言だった事を自覚し、イフィルに視線を送る。

イフィルは頷いて、認可を示した。


「御使い様は、地上に幾つもの体をお持ちで、使い分けていらっしゃると聞いています。エデンでは、もっと大きく勇ましいお姿で、いらっしゃいました。」


ワイズの説明に、ラーミァは帝国の謁見時に、イフィルが『影』と呼んでいた事を思い出す。


「ゼルータの領分は、本来がエデンなので、カナンに居るのが特別な訳です。」


イフィルが、追加で話す。

魔族には、魔族の為の御使い様が。人間には人間の為の御使い様が居ると言う話らしい。


確かに教典には『御使い様は地に影を落とし、人々を導く』とあった気がする。


横で、仮眠から、ちょっと目を覚ましたバーンに、ワイズが水を与えている。

装着中の兜に、コップで水を与えている姿は、意外とシュールだ。

寝ボケマナコのバーンが、意外と可愛く思えてきた。



----------


王城へは無事に到着した。

出迎えに、ステファン皇太子が待っていたのは、意外だった。


「ラーミァ殿、イフィルジータ殿。お務めご苦労様でした。」


ラーミァなどは、謁見の時の見下した感じが無い為に、別人かとさえ思ったくらいだ。

皇太子自ら、応接室に案内され、酸味と甘味の効いた冷たい果実水が振る舞われた。


「ゆっくり御休み下さい。報告会は、いつがよろしいでしょうか?」


ラーミァは、皇太子の対応に違和感を覚えたが、返事を促すべくイフィルの方を振り返り、合点がいった。

恐らくは、前回の謁見の後に、イフィルの正体を知ったであろう事に。


皇帝は知っていた。国王も対応が変だった。

御使い様と、その従者に対する対応を、公的に支障が無い範囲で模索している感じだ。


「導師様はお疲れです。明日以降で、国王陛下のご都合は、いかがでしょいか?」

「明日の午後ならば予定が空いていると伺っております。」


イフィルが、ラーミァの顔色を伺う。


「では、明日の午後に、伺います。」


皇太子は、一礼をして退室した。


因みに、ワイズ達は、昼寝のゼルータと馬車の番をしている。

ワイズには、寝所で寝る習慣が無いので、客間は辞退するし、問題ないと言われた。




翌日の昼食後に、国王陛下との謁見がおこなわれた。

前回の様な、面通しや身体検査は無かった。

皇太子が直々に確認しているのだ。さもありなん。

謁見の場所と状況は、前回と変わり無い。


「ラーミァ・ガーランド・ナジェスよ。我が特使としての働き、大儀であった。」


国王からの労いで始まる。


「幸いにも、御使い様の御慈悲があり、争いなく事は運びました。先に書状で報告致しました通り、御使い様より援助の要請がございます。」

「御使い様の命とあれば、喜んで助力いたそう。」


ラーミァの報告に、国王が応え、視線が一瞬、後ろに控えるイフィルに向く。


「なんと?御使い様が降臨されたのか?」

「創造主は、見守って下さっておられるのか!」


周囲の大臣達からは、感嘆の言葉が漏れる。


「皇帝陛下からは、客人の対応も願われております。」

「ワイズとやらの事だな?至急、通行証などを手配しておる。」


国王はひと息ついて、ラーミァを見た。


「あとは、ラーファ殿に使命の完遂を知らせて、元気な顔を見せてやると良い。」


国王は席を立ち、皇太子も退室しようとして、少し立ち止まった。

イフィルとアイコンタクトを取っている様だ。


確かに、大臣や側仕えの居る場所で、行商人が皇太子を呼び止める事は出来ない。

双方が理解し、皇太子は退室した。



客室に戻り、暫くすると、皇太子の訪問があった。


「イフィル殿から、ラーミァ殿を御自宅にお送りする様に、仰せつかった。」


側仕えが居る前で、皇太子が言葉づかいを間違えた様子を見せた。


「いや、お送りする様に懇願された。」


微妙だ。


「帝国での話を、いろいろと聞かせてもらえるだろうか?」


ステファン皇太子の第一印象は悪かったが、今は同じ御使い様の事を話せる、数少ない相手として、好感度が上がっていた。



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