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開拓地

新たなる境界線から五百メートル程戻って、杭打ちが始まる。

土地は使いたいが、無知な魔物が飛び出す危険性も有るので、干渉地域を作る為だ。


「城に伝令を送れ。」


皇太子の指示が飛ぶ。

現場の大半の指揮は、同行させた技術者達が、情報収集の結果で作られた、おおよその地形図を見ながら、意見を出しあっている。


ここは山合いだ。

幅一キロ、長さは十キロメートルの新天地の測量は、着々と進む。

先ずは、中央に道を作り、用水路を沿わせる。

両側の山からは、僅かだが湧水があるだろう。

中央道を基準に、周りを測定して農地の設計図を作る。


エデン側からカナン側へと、次々に杭打ちが進むと、追加の技師と作業員を乗せた馬車が十台ほど見えてきた。


約二キロおき位に、集落を作る場所を設定する。


追加の馬車は、先陣を切った者達の指示を受けて、集落予定地を起点に作業を始める。


ある程度の方針が決まれば、それを責任者であるドナルドに告げ、皇太子に報告すれば、後は技師と作業員達の仕事だ。


翌日には、第三次の馬車達が到着した。

同行してきた役人達に、書類や図面、計画方針などを渡して説明して、上の人間達の仕事は終わる。


兵士は、暫くの間は警護に駐屯するが、皇太子や大臣、導師や近衛は、城へ戻る。


作業員を下ろして、空いた馬車の中では、近衛のドナルドが、書類の複写を手に、大臣に説明と報告をしている。

概算から、入植する農民を選ばなくてはならない。

期限付きである事も考慮が必要だ。


城では更に、半年後の異変へ準備が行われているだろう。

王国との交渉。物資的な準備。異変後の区画再編成。農民や鉱業従事者への教育。

とても半年では終わらないが、やるしかない。


今、帰途につく者達は、その様な事柄には、実質的に役に立たないのが、幸いである。

ついて来るのは、野営の為の馬車と人員だけだ。



馬車の中で、カナシスは今日の出来事を思い出していた。


「姉上。私は、いえ我々人間は、思い上がっていたのかも知れません。」

「あんな者達が居るとは、正直思いませんでした。いえ、今でも信じられません。」


カナシスの言葉に、ラーミァは頷く。


「感じたでしょう?あの者達は魔力を使っていた。恐らくは、彼方に居た者達も。」

「個々の力も桁違いの様に思われました。」


本来は、人間より強く耐久力や知能を高める目的で、人工的な進化を試みた生物の改良版である魔族は、多くの点で人間を凌駕する。

魔力をも持っていれば尚更だ。

人間の優位性は、知恵と道具を使う事だと言われている。

見たところ、道具を使っている様子はなかったが、カナシスは、それを優位に感じる事が出来なかった。


「当初の予定通りに、エデンへ進軍していたら、間違いなく全滅でしょう。人間が掟を破ったからと、あの魔族の一部でも帝国入りしたら、国は滅びていたかも知れません。」


カナシスは己等の行動の愚かしさに震えた。


「実際、あのゼリーの様な生物などは、知られずに中枢部の人間に取り憑いていました。その気になれば、文字通り皇帝の首でも簡単に奪えるのでしょう。」


城での状況を思い出したラーミァが、口を押さえて青ざめる。


「父上が、あの『城の雷』。杖から発した魔法の事ですが、あれを作られた時に、過剰ではないかと思いました。しかし、御使い様は勿論、先の魔族達を見ても、全くの力不足としか言えません。」

「わたくしは、御使い様の教えを軽んじて、己の常識を過信する愚かさを痛感しています。」


正直、王国の様に、教えを守って争いを避けていれば、ある程度の豊かさと生活は実現していた。

それに対して、帝国は朝廷分裂後も、武力と権力に固執し過信していた感がある。

そして、滅びかけ、更には魔界の蓋をも開けようとしていたのだ。


「父上は、当初よりエデンへの侵攻を反対しておられた。たぶん、魔族の力を御存知だったのでしょう。ふだんから、無知で脆弱な野獣を『魔物』と信じていた者達を、説得するのは無理だ。」

「『魔物』すら知らない、わたくしからすれば、エデンには豚より狂暴なイノシシが居るくらいにしか想像出来ませんでしたから。」


ラーミァも、帝国の結果として傲慢な行為を、悪くは言えない。

無知は罪悪であり、無知なら関わらない様にすべきだったのだ。


「御使い様が、私を。いいえ、次世代を担う、私たち二人を指名で同行させた意味を、理解しました。」

「わたしくし達は、世界の真の姿を知って、人々を導いて行かねばならないと言う事でしょうか?」


皇太子は仕方無いとしても、導師である自分には、荷が重いと感じたが、自分が実は『姫』だった事を思いだし、困惑するラーミァだった。


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