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遥かな未来と遠い過去

信じられないでしょうが、SFです。

「幾度かの対立や戦争の後に、それまで増加の一途をたどっていた人間の人口は、減少を辿り始めた。

環境の変動による食糧難もあり、他者から奪い取る目的の戦争は暫く続いたが、やがて人口の減少は、それをも上回る驚異として、民衆にも知れ渡るものになっていった。

奇病を懸念した国々は渡航を禁じたが、人口減少の原因が遺伝子異常によるものと判明すると、戦時中に核兵器を使った国が国際批難を浴びた。


しかし、じきに本当の原因が明らかになる。

太陽活動の極小による宇宙線の増大は、人類のみならず、多くの生物、地球環境に異変を引き起こし、地球と言う惑星に、大きな波を引き起こしていたのだった。



人々は外出を控え、正常な遺伝子を求めて、別目的で保存されていた冷凍精子や卵子が、闇取引されるのも珍しくはなかった。

クローニングが限界を迎えた頃には、人類は存続の為に『人間』である事を諦めて、自らの遺伝子操作を開始する。

幾つかの試みの末に、かつて人類だった者は幾つかに別れ、その大半が自然に呑み込まれて消えて行くこととなる。

>

幾千年の時を経て、既に不老を手に入れた新しき人類は、地球の環境を保全する手段を開発した。

しかし、それにも限界はある。

不老であっても不死は無く、事故などで減少する人口にはクローニングと交配による後継者という選択肢を残した結果、人口は増え続け、有限な地球面積下では、前時代的な争いを引き起こす。


結果、宇宙への新天地開発が実施された。



数多の調査団が送り出されるが、それに人間が加わる事はない。

過剰になったからと言って、危険で成果が保証されていない所へ、人間が赴く事は稀だ。

人間に仕える。人間に近い、場合によっては人間以上の能力を持った者が先行する。


それらの、人間に代わる者が、高い可能性や成果が見えるまでは。

目ぼしい地を見つけて、人間が住める環境に近づけ、報告をあげる。


実際に、どの様な努力をしても、可能性や成果を報告しても、人間側が、如何なる判断をするかは判らない。

送り込まれた者達は、ただ、ひたすらに待つのみである。


これは、そんなお話の一つ。」




「と、こんな感じで、いいかニャ?」

「あぁ、大丈夫だ。だから『ニャ』はやめろ!」

「なぜかニャ?」

「ふざけているのか?」

「だって、猫だからニャァ」

「猫が喋るか?」

「ニャァァァ~ォン」


行商人は、頭を抱えていた。

相棒が、行商馬車の屋根でふざけているのだ。

この相棒とも長いが、いまだに悪ふざけをやめない。

『楽しく仕事する』がモットーらしいが、周りは疲れる。


「そろそろ、村に入る。ちゃんとヤレよ。」

「ニャァァ~」


暖かな日差し。頬をなでる風。

リズミカルな馬の蹄の音と馬車のキシむ音が、眠気を誘う。


馬車は森を抜け、街道を外れて、小道を進む。

狭い道に馬車を止め、行商人は、路肩の畑に足を踏み入れた。


農作物を踏まない様に注意しながら、適当な所でしゃがみ、大地に手を当てて考え込む。


馬車の屋根では、猫が長いアクビをしていた。

涙目になった顔を前足で拭うと、行商人の方へ視線をやる。


行商人は、立ち上り、近くの用水路で手を洗い始めた。かなり念入りに。

そして、手酌で少し飲む。


懐から出した手拭いで、口と手を拭うと、行商人は馬車へと戻ってきた。


「Γ(ガンマ)へ送信」


猫の方を見ながら、小さく囁く。

御者台に上ると、馬に鞭を入れて、小道を進み出した。


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