もしかして........天使?
ブックマーク、沢山ありがとうございます!
更新期間が空いてしまいました( ˙-˙ )
(これが、、、俺!?)
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意識が戻ってから5日が経過した。
今までの4日間は、ずっと寝たきり状態だった。
けれど怪我が順調に治ってきているため、今日からはリハビリも兼ねて動いていいと診断された。
朝一番にそれを聞いた俺は、直ぐに布団を飛び出してお風呂に向かった。
……実は、四日間お風呂に入れていないのだ。
ベッドから起き上がる事が出来ないくらいの激痛と、母さんと担当医の過保護っぷりが凄かったせいで毎日濡れたタオルで体を拭く生活だった。
流石にお風呂に入らないのはヤバすぎる。
という訳で急いでお風呂場に向かった。
………のだが。
お風呂場の鏡で顔を見始めてからもう15分は経っただろう。
直ぐにでもお風呂に入りたかったはずなのだが、今はそれどころじゃない。
鏡に映っているのは傾国の美女、ならぬ美少年。
艶やかな黒髪。
二重の目には長い睫毛がかかっていて、下を向けば憂いを帯びる。
瞳は暗い茶色で、潤んでいるようにも見えた。
そして黄金比をこれでもかと詰め込んだような綺麗な造形の顔。
体も程よく引き締まっていて、王子様のような天使のような、でも少し大人っぽい雰囲気もある。
つまり俺が女だったら確実に惚れるような顔だった。
二度見ならぬ五度見した。
二回なんかじゃ足りなかった。
SRがSSSRになったくらいの衝撃を受けた。
そして看護婦さんが鼻血を出して倒れた理由も分かった。
………これは気絶してもおかしくない。
この世界の女性は男性に対してほとんど免疫がないと聞いた。
まあ免疫があっても倒れる気はするけれど。
男性に対する免疫には男女比もあるが、ほとんどの男性は家に引きこもっているようなのでその影響もあるだろう。
男性の多くは、女性からの不躾な視線に耐えられずに家にこもる。
また、男性が襲われるような事件も起きている。
……病室でそういったニュースが流れた時は驚いた。
男性が引きこもると免疫のない女性が増える。
女性の視線が気になって、男性が引きこもる。
……こういった悪循環が起こっているのだろう。
とまあ、真面目な話は置いておいて。
この顔を100%活かす以外の道が見えない。
ということで表情を色々と研究してみる。
お風呂に入り始めてから既に20分は経過しているが問題はないだろう。
俺の顔には、モナリザのように"微笑んでいるけれども悲しそうにも見える"という、一種のゆらぎが存在しているっぽい。
左右のバランスが、僅かにずれている。
肉眼では分からない、0.1ミリにも満たない僅かな差なのだが。
このゆらぎがあるかないかで、印象が変わってくる。
笑顔や悲しい顔なんてのも何パターンか練習した。
0%から120%の笑顔まで完璧とまではいかないが習得することができた。
ただ、口角の上げ方や眉毛、目の動きでどう見えるかまで細かくは見れていないが。
こういった研究が凄く大事。……本当に。
(………にしてもイケメンすぎないか?)
ナルシストになるつもりはないけれど、いくらでも眺めていられる顔だった。
だが、ずっと鏡に張り付いているのもどうかと思う。
それにそろそろお風呂に入らないとまずい。
時間的な問題で。
疲れも取ってサッパリしたいし。
お風呂から上がった俺は髪を乾かし新しい服に着替えた。
向かうのは購買と談話室。
……この世界についてもだが、常識的なことも一切分からないので誰かと話をしたい。
実のところ、涼ちゃんが事故った時に携帯ごとお釈迦になってしまったみたいで、今現在ネットが使えない状況だ。
法律も見たいし、今現在のトレンドも押さえておきたい俺にとっては大変な死活問題なのである。
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(………見られてるな。)
俺の病室は6階の男性患者専用フロアにある。
ちなみに購買と談話室は3階。
エレベーターで3階に到着してからというもの、すれ違う看護婦さんや患者さんから二度見されたり、立ち止まって観察されたりと珍獣のような扱いをされている。
男性は俺以外いないからそのせいだろうけど。
…目が合った人に軽く微笑んで会釈をしたら、その人のみならず周りの人達もぶっ倒れるという事件も起きた。
病院内で患者を増やすのもなんだか申し訳ないので、それ以降はやめておいた。
「……男性!?」
「…なんでこんなところに男性が!!」
「あ、やばいトイレ。」
「イケメン……捗るわぁ。」
というような声を聞き流しながら購買に向かう。
何が捗る?え?………ナニ?
というのは置いておいて。
「お願いします。」
「ありがとうございます。こちら一点で126円になりま………………!?!?」
購買についた俺は、いつも飲んでいた水がこの世界にもあることに安堵しつつレジへ向かった。
のだが、購買員のお姉さんが俺を見た途端に顔どころか耳まで真っ赤になってフリーズしてしまった。
…やっぱりそうなるよな、なんて思いつつも茶髪セミロングのしっかり系なお姉さんをちょっとだけいじめたくなる気持ちが湧き上がってきてしまった。
お姉さんが動かないのをいいことに、
「大丈夫ですか?熱は……無いみたいですね。」
なんて分かりきったことを言いながら、お姉さんの額に手を当てて微笑み、顔を少しだけ近づける。
「っ!?ははははいっ!だだ大丈夫ですっ!!!」
「そう…ですか?あまり無理しないで下さいね。」
突然触れられて驚いている購買員さん可愛い。
なんて思いながらも微笑みは崩さずに眉毛を少しだけ下げ、軽く頬に触れながら手を離して余韻を残した。
「っ!!!!」
「これでお願いします。」
「あ、えと、ひゃ、130円ですね、お預かり致します…4円のおつりですっ!ありがとうございました!!」
「いえ、頑張ってくださいね。」
兎にも角にも、俺は無事にこの世界で初めての買い物を済ませて談話室に向かったのだった。
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「もしかして天使か…?」
「あの男性の名前は!?私も心配されたいっ!」
「あの女、羨まけしからん。」
「私も頑張る!」
「購買員になればよかった……。」