カップラーメン
サブタイトルは適当です。
『…ピッ。』
『…ピッ。』
『…ピッ。』
『…ピッ。』
………電子音が耳に触れる。
きっとここは天国なのだろう。
とても暖かくて心地が良い。
体が暖かい空気に包まれてふわふわとしている。
あいつの泣いてる顔初めて見たなぁ、と友人を思い出してくすりと笑った。
ありがとうって言えてよかったな。
ああでも、もっと遊びたかったな。
なんてとりとめのない事を考える。
『…ピッ。』
『…ピッ。』
にしてもこの音は何だろう。
先程からずっと鳴っていてかなり気になる。
俺はその音の正体を確かめようと身体を動かした。
その途端、背中から全身に電流のような鋭い痛みが走り思わず唸り声を上げた。
「っ!…うぅ……っ!」
「涼ちゃん……?っ涼ちゃん!!」
突然、すぐ近くで女性の声が聞こえた。
目を開けようとしたが、痛みのせいなのか体が強張ってしまって開けられない。
しかも驚いたせいで体に力が入ってしまい先程と同じ痛みが全身を貫いた。
「っ!…うぅっ!い…ってぇ!」
「涼ちゃんっ!?……どうしようっ!誰か!誰か来てくださいっ!!!」
至近距離で叫ばれたせいでキーンとする耳の衝撃すらも痛みに変換されたようで、頭がクラクラし始める。
女性が叫んで暫くするとバタバタとこちらに近付いてくる足音が聞こえ、ドアの開いた音がした。
「……先生っ!涼ちゃん、涼ちゃんがっ!!」
「どうされたのですかっ…!?」
「涼ちゃんの意識がっ…戻って!でもっ…苦しそうでっ!うわぁぁん!!」
誰かが来たらしい。
女性の泣いてる声が聞こえる。
「落ち着いてください、萩原さん!」
「……っすいません。でもっ!」
「直ぐに診させて頂きますので少し離れていてください!」
「はい……。」
誰かが俺の指先に触れた。
「萩原さん。萩原涼也さーん!声は聞こえますか?もし聞こえたら指動かしてみて下さい。」
(俺………じゃないよな?俺は"涼ちゃん"じゃないぞ?……でも、この"先生"って呼ばれた人は俺に向かって言っている気がする……。)
試しに指をピクッ、と動かしてみる。
「ああっ!涼ちゃんっ!」
「意識は戻ってきている様です。」
「良かったっ!……涼ちゃんっ!うわぁああん!」
(……どういうことだ?俺は死んだんじゃ無いのか?それに、涼ちゃんって…………。)
痛みで朦朧とし始めていた意識が、混乱と共に覚醒していく。
状況を把握するためにゆっくりと瞼を持ち上げ辺りを見回すと、白い天井が目に飛び込んできた。
右側には高層ビルの見える大きな窓とカーテン。
ベッドの横には脈拍などを図る機械がある。
…恐らくここは病室だろう。
そして、女性が2人。
白衣を着ているお姉さんは、さっき先生と呼ばれていた人だろう。
如何にも女医と言った雰囲気を醸し出している。
もう1人のスーツを着ているお姉さんは顔を涙で濡らしていて、その袖は涙で色が変わっているのが分かった。
そして…………目が合った。
部屋が静寂に包まれる。
見つめ合う俺達。
誰一人として喋らず、動きもしない。
先程までの騒がしさは一体何処へいったのか?
……もうカップラーメンが3個は出来ちゃうくらいの時間ぐらいは経過してる気がする。
「…………あの〜?」
「「…ハッ」」
沈黙に耐えきれなくなった俺は、動かずに固まっている女性に声をかけた。
すると驚いた2人の目が徐々に見開かれていく。
そして、はち切れんばかりに開かれた時。
「「バッターン」」
大きな音が病室に響き渡った。
そう、女性2人が倒れたのである。
その後の病室は大騒ぎだった。
大きな音を聞きつけて来た看護婦さんが、俺を見た瞬間鼻血を出して倒れたのだ。
その音を聞いて飛んで来た看護婦さんも同様に。
それが何度か繰り返された後、倒れなかった人によって全員が運び出されて行った。
…倒れなかった人は鼻にティッシュを詰めていたが。
俺はどうしていたか、というと。
ベッドからその光景をずっーと眺めていた。
体を動かそうとすると激痛が走ってしまうので、介抱しようにもできなかった。
病室は倒れた看護婦さん達と鼻血で、逃げ出したくなるような死屍累々の地獄絵図だった。
この物語の主人公、顔が良い。
そう。…顔だけは良い。
その見た目の良さを最大限に生かして女の子と遊びまくり、取っ替え引っ替えしてきた男でもある。
ただ、女の子にモテるための努力を人一倍してきたため根は真面目だが。
どうすれば女の子にモテるのか。
自分に似合う髪型はどれなのか。
言葉遣い、表情、仕草、服装、女の子を堕とすためにその全てを完璧にマスターしたプロフェッショナルなのである。
反抗期の期間を全て遊びに費やし、友人や仲間と共に女の子を漁りまくり、遊びまくった。
………つまり女の子が大好きな男である。
そしてこれはそんな主人公がこの世界でどう生きるのかを描いた物語、である。
チャラいです。ええ、それはもう。
プロローグ終了、次回から物語が進みます。