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いつも真理はそばにある  作者: ABCD
第1章 プロローグ
3/5

薔薇の乙女

アナザーワールドは領地経営シミュレーションゲーム

課金しまくりキャラを作ってほぼソロプレイの毎日

3年の運営後にサービス終了を迎えるその日に何かが起こる

 前からすごい勢いで走ってくるのは、ソードマスター(剣士)のクリスティーナだった。


「主様、どこへ行っていたんですか。みんな探していましたよ?」


 クリスティーナは、えんじ色の腰の少し上まで伸びたストレートの髪を揺らしながら、俺の両手をとって言った。

 自分で作成したキャラクターが、自分の言葉で思うように話している・・、こんな風に話すんだなぁ・・とちょっとしみじみ感動してしまった。


「ああ、クリスティーナ。ちょっと、散歩に、な。」

「今日は特別なお祭りがあるからって、みんな主様と行きたいって言っていましたよ?」


 運営はサービス終了後に、内輪で何かお祭りイベントでもする予定でいたのだろうか。

 クリスティーナは最初に作った使徒で、二人でパーティを組んで低レベルの魔物を狩ってはドロップを狙い、鉱石や薬草を採集しては売って金策をした苦労を分かち合った相手でもある。

 なので、使徒たちの中でも愛着がある。

 クリスティーナはレアドロップで手に入れたちょっと豪華な騎士風の鎧を付けて、これはフレンドから買った赤い魔石がはめ込まれた気持ち長めのロングソードを扱う。王道ど真ん中の正統派美人だ。

 ソードマスターは短剣から大剣、細剣など、剣であれば補正がつくクラスだ。

 俺のクラスがアルケミスト(錬金術師)だからどちらかというと補助中心の後衛職で、前衛になれる攻撃力のあるキャラが欲しいと思って最初に作成した。


「みんなは城にいるのか?」


 城と言ってもちょっと豪華な4階建ての邸宅という感じだ。

 執務室や応接室、寝室など無駄に部屋はたくさん用意してある。

 すぐ近くには、錬金室、研究室、図書室などを備えた塔と、ドロップや貴重品を保管しておくための倉庫、礼拝堂、厩舎、登録した地点にワープするためのゲート(転移扉)ジャンクションなど、雑然と見た目や統一感などをまったく無視した建物が集まっている。要するにそれらをまとめて城と呼んでいるのだ。


「いえ、ユルシュルは街の教会でお祭りの準備、ラウラとヘレンは周辺の警戒に出ていていません。スカーレットは防衛本部で指揮を執っているでしょうし、アンナは馬番なので厩舎にいるはずです。メアリーは調理室で食事の準備を手伝っていて、オリビアは研究室にこもって姿を見せませんが・・。残りのエリーとフランソワと私はお城で待機していました。でも、少し前に主様の姿が見えないからって、手分けして探そうってことになったんです。」

「それは悪かった。少し考え事をしていてな。軽く散歩をしていたところだ。」

「もう、出かけるなら声をかけて行ってくださいって、前から言っていますのに~。」

「悪かった。急いで城に帰ろうか。」

「はいっ!」


『ゲーム内でもそんなことは言われたことなかったよな?』とは思いながら、不要なことには口を開かないことにする。

 にっこりと笑うクリスティーナを見ながら、これから始まる世界の探索に、言葉通りの期待感を感じずにはいられなかった。


☆★☆★☆


「あら、どこに行っていたのかしら?」

「なおたん、おかえりーっ!」


 城の執務室に戻ってくると、2人の使徒たちが迎えてくれた。

 一人はウィッチ(魔女)のエリー。見た目は中学生ぐらいのエルフだ。だが、長命種であるエルフなので、見た目に反してこれでも132歳という設定になっている。

 ウィッチは魔法特化のクラスだ。男性だとソーサラー(魔法師)である。ゲーム内では魔法などの属性は、聖光・冥闇・炎獄・氷雪・生命・機械・大地と7属性あって、リアルの1週間の曜日と対応していた。ウィッチはこれらすべての属性魔法を修得することが出来る。

 エリーは、いかにもな感じの魔女のマントで身を包み、膝までのロングストレートの金髪に魔女の帽子を被っていて、見た目にもとても強そうな、身長の2倍近いド派手な魔法の杖を持っている。

 もう一人はサモナー(召喚士)のフランソワだ。フランソワ自身は、ピンク色で肩甲骨のあたりまで伸びたゆるふわのウェーブがかった髪をした5歳くらいのようじょ(幼女)である。ゲームをしたことがある人は分かると思うが、大体においてようじょはかなり強い(つおい)。ようじょだからこそ、かなり強い。大切なことなので2回言っておく。

 フランソワは、バスローブと間違えそうな少しぶかぶかの白いローブに身を包み、両腕に七色の魔石をはめ込んだ金の腕輪を付けている。

 そのフランソワを肩に乗せているのが、フランソワが召喚したゴーレムだ。このゴーレムはキ○肉マンに出てきたサンシャ○ンとよく似た格好をしている。何がとは言わないが、胸にあるはずのマークが無いくらいである。

「ごめん。少し散歩をしていたんだ。」

「では、ここにいるみんなで街のお祭りに出かけましょう!」

「・・そうだな。よし、行こうか!!」


 エリーとフランソワはこんな感じなのかとにっこり微笑んで眺めていると、クリスティーナが手を打ってお祭り行きを提案した。

 まるで、かわいい娘を見守るお父さんのような気持になって、いきなり張り切ってしまった。

おや、誰か来たようですね?

やって来たのは何者か、敵か味方か?

波乱を呼び、風雲急を告げる次話を待て!

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