俺たちの一日
この日、悠太と遼はファストフード店でだらけていた。
要するに「やることがない」状態だ。
「なあなあ、遼さんや…何か面白いこととか降っては来ないかね…」
退屈そうにハンバーガーを貪る悠太が語りかける。
それに対し、遼は呆れたかのように返す。
「それ今日で何回目だよ…そんなに言うなら姐さんの作業手伝ったらどうだ?リアメアでさえ手伝ってるのに」
「それ言ったらお前だって手伝いとか行かないじゃんか。人のこと言えんじゃろう」
まあねえ、と遼はため息をつく。
「はーぁ…やることねえなあ…やっぱ姐さんとこ行くかぁ?」
「やることがないって言うくらいならその方がよっぽど有意義かもな。チームに貢献するって意味でも」
「待て、それじゃ俺が何もしていないナマケモノみたいじゃないか?」
「あながち間違ってもいないだろう」
そうかも、と二人は笑いながら店をあとにした。
二人の言う、リアとメアと姐さん…双子のキーボードとドラマーである純子のことだ。
曲は専ら純子が手がけており、出来上がったらメンバーで意見を出し合って手直ししていく、それがいつもの流れだ。
初めは全員意見が合わず、騒ぎ立てることが多いが最終的にはこれだ!、と言ってまとまることも多い。
よくある世間話をしながら二人は純子のいる家へと辿り着く。
そこは言うなればさながら自動車の整備工場のような建物で、少し鉄や油の匂いが充満している。
曰く、割と防音されてるし、雰囲気が好きだから買ったとの事だ。
遼がインターホンを鳴らし、純子を呼びかける。
「純姐〜。きたよー。入れてくれんかー」
完全に脱力した声でインターホンに話しかける。
「あー?ああ、お前らか。鍵空いてるから入っといで」
「なになにー?悠にぃとりょーちゃん?はやくはやく、入ってきてよー!」
「入ってきてよーって、ここあたしの家なんだけど…まあいいや、誰かさんがこの通りだから。ガレージの方にいるよ」
「りょーかい。お邪魔しますよっと」
言われるがまま、純子の作業スペース…兼スタジオへと足を運んだ。