1 お砂場からダンジョンへ
きれいなお山を作るには、お水とお砂をちょうどいい量で混ぜるのがコツである。
お水が少なすぎてもさらさらで、多すぎてもドロドロで、きれいなお山はできないのである。
つまり、
「バランスがとってもだいじです」
バケツに入ったお水を砂の上にちょっとずつこぼしながら、ふみはメリーに教えてあげた。
バランス。ふみは三才だけど、ちょっとムズカシイことばも知っている。ぬいぐるみのメリーは、「ふみはすごいなあ」と言うみたいに、長い耳をちょこんと折っていた。
お水がなくなったので、バケツを持って水道に行く。じゃぐちをひねって、水を汲んだ。
「よいしょっと」
バケツを持ち上げると、手がぎゅうっと痛くなった。ちょっとお水が多すぎたかもしれない。
だけど、大丈夫。運べない重さではない。ふらふらしながらも、お砂場に向かって歩き出した。
公園のお砂場はとっても広くて、きっとこのあたりはもともと砂漠だったのだとふみは思っている。
きっと、ふみが生まれるちょっと前くらいに、砂漠の中にみんなで木を植えたりおうちを建てたりしたのだ。
それで、このお砂場は、その頃のナゴリなのだ。
……もしかしたら、このお砂場は砂漠の子どもで、これからどんどん成長するのかもしれないけれど、それだとちょっと困る。
だって、ふみのおうちはこの公園のすぐ裏にあるのだから。
砂漠の子どもがどんどん大きくなったら、ふみのおうちも砂漠になってしまって、水道からお水が出なくなって、ふみのおかあさんがぷんぷん怒ってしまうのだ。
お砂場遊びは好きだけど、おうちが砂漠になったら大変だ……
……そんなふうに、ぼんやり考えごとをしていたせいだろうか。
「あっ」
お砂場のふちにつまづいた。
バケツがふみの手を離れ、ぽーんと空を飛んで、お砂の上にひっくり返る。
お水が一気に砂にかかって、お砂場に小さな池が生まれた、まさにその瞬間。
砂場全体が脈打つように震えた。
突如、強い風が公園全体に吹き荒れる。木々の葉が騒ぎブランコがギイギイと金属質の音を立て、鳥たちが狂ったように鳴き始めた。雨の気配などかけらもないのに、なぜか湿り気を帯びた生ぬるい空気があたりを満たす。
最初こそさざ波のようだった砂の脈は、みるみるうちに荒れ狂う嵐に変わる。うねり、暴れ、乱れたのち、まるで腹を空かせた獣のように大きく口を開いた。広がるものは奈落よりも深く夜よりも暗い闇――
お砂の中に落ちていきながら、ふみは。
やっぱり、バケツにお水を多く入れすぎたかもしれない。
と、思っていた。
この物語は、なみあと(@nar_nar_nar)のツイート「公園でおすなばあそびをしていたふみちゃんが、砂場を掘ってたら謎の穴に落下してしまってそこはなんとダンジョンで(略)ふみちゃんの大活躍」から派生したゆるゆる物語です。
大体一万字弱でさくっと完結予定。よろしくお願いします。