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〈魔力矢〉の弓

スマホからの投稿。

本日2話目

「ところで所長、もう矢が無いみたいです」

「あぁ?!さっき置いてった分全部射ったのか?!」



レオンの報告を聞いて、驚愕の声を上げる。

しかし、よく考えて見ればさっきのペースで打ち続けたのならそれも当然か…と、思い直す。



「ちっ、そいつはやべぇな。今回持って来た分は他の弓師のとこにって持ってきたんだ、大体3回に1回補給すれば間に合う計算だったからな…」

「マジっすか…」



顔を顰める所長、それを見て小さく肩を落とすレオン。

正直言って、別にここで矢を射って居たい訳ではない。

ただ「じゃあ、矢を作りに戻るか」と言われるのがイヤなだけだ。

戻って矢を作って、また来て矢を射つ。

そんな面倒な事はしたくない。



「じゃあ、矢を作りに戻るか」



が、現実は非情である。

ここに居てもやる事が無いのなら、当然の流れではあるが。

レオンは露骨にイヤそうな顔をする。


(マジかよ、面倒くさい。でも、まぁ仕方ないのは分かるし)


イヤそうな顔をしながらも、身体に取り付けた矢筒を外して行く。


そして弓を兵士に返そうとした時、レオンは思った。


(あーあ、この弓が〈魔力矢〉の魔道具だったら良かったのに)


そして、その思いに応えるかの様に弓が光り出す。



「くっ…!いったい何が起きた!?」

「…あ、忘れてた」



昨晩と同じ現象、道具に対する能力〈付与〉である。

一晩経ったという事と、緊急事態だったと言う事でレオンは自分の技能スキルの事をすっかり忘れてしまっていた。

光がおさまった頃、所長がレオンに掴み掛かる。


兵士は直視してしまったようで「目がー、目がー!」と悶ている。



「おい、今のは何だ!」

「お、落ち着いて下さい!」



掴み掛かられた手を反射的に掴んでしまい、精一杯自制して話しかけるレオン。



「今のはオレのスキルです、害は有りません!」



納得はしていないようだが、一応手を離させる事には成功した。



「お前の技能スキル?…って道具創造アイテム・クリエイトじゃ無かったのか?」



怪訝な表情を崩さず、レオンへと問いかける所長。

レオンは襟を正し、小さく息を吐いて説明した。



「アイテム・クリエイトなのは間違い有りません、ですが…どうやら少しオレのは特殊なようで」



新しい〈解析〉がとか、技能スキル位階レベルがとか少し説明しづらく思い”オレのは特殊”で通す事にしたレオン。



「どうやら既存のアイテムを更にクリエイトする事で、マジックアイテムへと進化させられる様です」

「…お前さん、それはマジで言ってるのか?」



人の手による魔道具マジック・アイテムの創造、それは所長の長年の課題である。

にわかには信じられないのも、仕方の無い事だ。



「本当です!ちょっと、この弓借りますね!」



先ほど〈付与〉を終えた弓を手に取り、小窓の外へと向ける。

魔物達は、先ほどよりもこちらへと近づいている様に見えた。



「神崎流弓術・剛射一矢縫い!」



レオンは矢を番えずに、そのまま弦を引いた。

すると、淡い光が矢の形を作り出す。

そのまま手をパッと放すと、魔力で出来た矢が魔物を貫いていく。


1体2体3体…もう何体貫いたか分からない程の距離まで進み、小さな破裂音が遠くから聞こえた。



「まぁ、という訳で。この弓は〈魔力矢〉のマジック・アイテムになっています…所長?」



矢を放って所長へと向き直ると、目と口を『これでもか!』ってくらいに開いて驚いていた。

どこぞの神を彷彿とさせるそれは…数分間、レオンが再度魔物に矢を放っている間も続けられた。



ーーー



「いやぁ〈魔力矢〉のおかげで、初めて”爆裂矢”が出来たわー」



所長が正気を取り戻して数十分、魔物の群れを殲滅する事に成功したレオン。

爆裂矢というのは”射った矢が、標的に当たった衝撃で爆散して威力が増す射法”という、所長が聞いたら「だからそれは弓術じゃねぇよ!」とツッコミが入るであろう”師範の得意技”である。


魔力で出来た矢と言う事で、射った後もある程度干渉する事が出来た。

途中で曲げるのも当たった瞬間に爆発させるのも、割と簡単に出来た。

レオンはホクホクとした表情で、王宮へと帰る事にした。


王宮に帰ると、すでにクリスティーナは戻っており。

警戒も解除されたのか、王も避難所(シェルター)から出てきていた。

すでに時間は昼前になっており、このまま部屋へと戻る。


特別休暇は所長から貰っているので、なんの気兼ねも無い。

軽く汗を流し、軽食を摂り。

早朝に起きたため、軽く襲ってきた睡魔をそのままに。

レオンはゆっくりと、ベットへ倒れていった。


そして夕方。


夕食の為にとクリスティーナに起こされて、二人で食堂へと向かう。

中に入ると、そこには珍しく王が居た。



「王様、おはようございます。ん?おはようございます?」



ほとんど寝起きであるレオンにとっては、おはようございますの気分である。

が、実際にはもうすでに夕方だ。



「ははは、よく眠れたかな?レオン殿の勇姿はゲインから聞いておるよ、よくぞ魔物達を殲滅してくれた」

「いや、オレ一人じゃ殲滅は無理でしたよ。皆で力を合わせた結果ですね…というか、ゲイン?」



誰、それ。

とでも言いそうなレオンに、こっそりと耳打ちするクリスティーナ。



「え?所長?初耳!」

「は、はは…自分の職場の長なのだ、名前くらいは覚えておいた方が良いぞ」



というか、礼儀というか常識だ。

と、軽く叱られるレオン。



「すいません、そう言えばお互い自己紹介もしてませんでした」



お前と所長で呼び合う中だったので…と、レオンが言うと苦笑いを浮かべる王。

こいつ、絶対に余の名前も知らんな…と、確信を持った王。

まぁ、今ここでそれを咎めるつもりも無いがな…と、話を切り替える王。



「まぁ、よい。それでレオン殿の働きに報いて、何か報奨を与えようと思っているのだが…何か欲しいものはあるか?」

「いやぁ…昨日の分も思いついて無いんで、そう言われても…ん?どうしたのクリスティーナ?」



迷うなー等と呑気に構えてるレオンに、後ろからクリスティーナが耳打ちする。



「え?あー…陛下の御心のままに!」



ピシっと胸に手を当てそう答えたレオン。

どうやら、クリスティーナからは作法についてツッコまれたようだ。



「よい。レオン殿は客人だ、この国では作法などに気にする事は無い。まぁ、他国へと出るつもりが有るなら別じゃがな」



ひらひらと手を振るようにして、本当に気にしてない事を示す王。


こちらの都合で無理矢理呼びつけたのだから、無礼や無作法などいちいち煩く言うつもりはない。

だから、気にせず報奨について考えて置いてくれ。

そう告げる王。



「ありがとうございます、じゃあ考えておきますね」

「うむ、それでよい」



レオンの返事に、頷く王。

そのまま2人で一緒に食事を摂り、世間話に花が咲く。

そして食事を終え、一息ついた所で話は本題へと移る。



「して、レオン殿。一つ相談に乗って頂きたい事があっての」

「なんでしょうか?」



詳しく話を聞いてみると、詰まりは魔物達の死体の処理に追われているとの事。

今回の襲撃はいつも以上の数であり、死体を焼いて回っているのだが今日中には終わらないだろうと。

そして、その血の匂いに誘われて新たな魔物が押し寄せて来るかもしれない。

なんとかして迅速に処理が出来るような魔道具マジック・アイテムなどは思いつかないだろうか?

そして、それを作っていただけないだろうか?


要約すると、そう言う事だった。



「客人の力に頼りっきりというのも申し訳無いのだが、いかんせん良い案が出なくての」



クリスティーナの方を見ると、無表情の中にも何やら苦虫を噛み潰したような表情が見える…気がする。


まぁ、これくらいは別に手間でも無いか…と、レオンはいくつか案を出す。



「まず、下級の〈火〉魔法の魔道具を多数作るとか」



下級に限定するのは、戦力になり得るような物を量産して配布してしまうと管理が難しくなるから。



「もしくは最上級の火魔法…何かは知らないけど、それを少数だけ作るか」



信用が出来る者数名に渡して、大火力で焼き払ってしまう。



「もしくはこれの複合か、ってところですか?」

「ふむふむ、なるほどの。それならば何とか、今日中には焼却処分は出来るかもしれんな」



では、早速その方向でお願いしたい。

と軽く頭を下げられ、椅子から立ち上がるレオン。


これから素材になるものを幾らか見繕って、火炎放射器みたいな道具を作ってそれを更に魔道具化して…っと、その前に一つ確認しておかなければ。



「所で、魔物の素材とか回収しなくても良いんですか?」

「…え?」



レオンが少し疑問に思った事で、軽い気持ちで王へと投げかけた疑問。

王の表情は『何言ってるの、こいつ』といった物だった。



「あ、あれ?変な事言いました?」

「いや、そりゃあ回収出来るならそれが一番だが…」



それが出来ないから、焼却処分をしているのだ。

その証拠に、近くにいた魔物はすでに台車で回収している。

遠くで死んでいる大量の魔物達、台車に載せられる量にも限りが有り何往復した所で到底回収しきれない。

だから、泣く泣く焼却処分をしなくてはならないというのに。


王がそんな事をレオンに説明すると、レオンは逆に驚いた。



「え?!この世界って”道具袋”みたいなアイテムって無いんですか?もしくは〈収納〉の魔法とか…クリスティーナ?」

「いえ、確かに〈収納〉の魔法は存在しています。ただ、国内では私だけしか使えませんし…容量は魔力量に比例するのです」



道具袋の方に関しては聞いた事も無い、ときっぱりと言われた。



「マジかー…ん?ちょっと待って」



クリスティーナの話を聞き、軽く肩を落とすレオン。

しかし直ぐに、名案を思い付いたとばかりに顔を上げる。



「だったらさ、〈収納〉の魔道具を作れば万事解決じゃね?」

「出来るのか?!」

「…もし可能で有れば、それが最良ですね」



レオンの台詞に王が驚き、クリスティーナが顎に手を当てて頷く。

試しに…と、今自分が履いているズボンの”ポケット”に〈付与〉してみる。

その後手を入れてみると、ズブズブと腕が入っていく底なしのポケットが出来上がった。


上手くいった、と笑みを浮かべるレオン。

王は慌てて、その〈収納〉の魔道具を依頼するのであった。

ブクマありがとうございます。

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