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魔道具創造

スマホからの投稿

「で、衝動的に買っちゃいました…と」



初給与を貰ったその日の帰り、早朝に覗いた露天に寄って耳飾り(イヤリング)を買ってしまったレオン。

そもそも『いつまでも王宮の世話になっているのは心苦しい』と思って働き出した訳だが、今回の様な半月分の給料ではひと月分の宿代にすらなりはしない。

それならば、と…もうひと月お世話になる事にして、今回の給料はささやかながらもお礼に使う事にした。



「そう、これはお礼なんだ。いつもお世話になっている訳だし、別に下心がある訳じゃ無い」



うんうんと頷きながら、誰に対してでは無く自分に言い訳を始めるレオン。

だからこれは、浮気じゃないんだよ香澄姉ちゃん!などと拳を強く握りしめているが、そもそも香澄とレオンは恋人という訳ではない。


完全にレオンの一人相撲であった。



「いらっしゃい!さっきとれたばかりのメソ…〜〜〜!」



メソ…何だよ?!

とツッコミを入れそうになって、グッと堪えるレオン。

耳飾り(イヤリング)を買って帰る道すがら、市場から聞こえていた声が途中で理解不能になってしまった。


(…あ、しまった。今日は寄り道したから、王宮まで保たなかったか)


レオンの言う保たなかったとは、毎日クリスティーナから掛け直されている《翻訳》の魔法効果の事だ。

効果時間はちょうど24時間、無いと不便…どころか、生活に支障をきたすレベルなので毎回切れた瞬間に掛け直して貰っていた。

クリスティーナが、レオン付のメイドとなったのもコレが原因と言える。


(しまったなー、門番さんになんて言えば良いのやら。顔見知りの人なら良いんだけど…)


レオンがこの世界に来て1ヶ月半、王宮の外に出るようになって半月。

まだまだ、全ての兵士や侍従がレオンの顔を覚えている訳では無い。

その証拠に、この半月の内で門番に止められた事が半分以上は有る。

その度クリスティーナを呼び出して貰い、門番に説明して貰ってようやく入れるようになるのだ。


そもそも…王側としてはこの一年間、完全に保護するつもりであったのだ。

王宮で過ごして貰い、欲しい物は与え…もし外に出たいと言われれば護衛を付ける、つもりだった。

それをレオンの我儘…と言えるかは微妙だが、によって1人で外へと働きに出た。

それによって、今まで関わりの無かった兵士や侍従にもレオンの存在を明るみにしたわけだが…残念ながら、半月では全て人間に行き渡らなかったのだろう。


(仕方ない、顔見知りである事を祈ろう。もし止められたら…強行突破か?)


本気では無いが、かなり物騒な事を考えながら帰途へつく。

そもそも、レオンが突破出来る程度の実力しかない人間が門番をやってる訳が無いのだが。

それは、まぁ…本気で考えていたわけでは無いと言う事で、ツッコミはよしておこうか。


手には贈答プレゼント用に梱包ラッピングされた耳飾り(イヤリング)を持ち、トボトボと言う音が似合うような足取りで歩いていくレオンだった。



ーーー



「だから、オレはここの客人!オッケー?!」

「〜〜〜!〜〜〜〜〜!」

「〜〜、〜〜〜〜。〜っ!〜っ!」

「あ!『しっ!しっ!』って言ってるのは分かった!何でオレのジェスチャーは通じ無いんだよ!」



大きく身体を使って、身振り手振りで門番に話かけるレオン。

門番は左右から槍をクロスするようにして、レオンを中へ入れまいとしてる。

片方の門番が手をぱっぱと振るのを見て、レオンが癇癪をあげた。


そもそもレオンは『自分を指差して王宮を指差す』動作しかしていないのだから、門番に伝わるはずも無い。

しばらく不毛な攻防を繰り返して、ようやくレオンは諦めた。


(くそぉ、運が悪かった。完全に初見だわ、この門番。どうしよう…)


レオンが門から少し離れた事により、ようやく槍を下ろす2人。

途方に暮れたレオンだったが、ふと思い付く。


(…いや、帰りが遅いとクリスティーナが心配して迎えに来てくれる筈。…来てくれるよね?)


まぁ、来ることは間違いないだろう。

心配する事も確かだ。

ただ、レオンの思っている心配とクリスティーナがする心配の意味が少しだけ違うと言うだけだ。


ひとまず落ち着いたレオンは、門から少し離れたその場でただ待つ事にした。

…門番達から受ける、鋭い視線は無視することにして。



ーーー



およそ30分くらい待った頃、レオンはしゃがんだり立ったり。

耳飾りを入れた箱を手のひらで遊ばせたり…要するに暇を持て余していた。


(あー、ヒマだ。遅いな、クリスティーナ…ひょっとして忘れられてるとか、いやいやいや)


一瞬顔を青褪めさせて、即座にそれは無いと頭を振るう。


(クリスティーナも忙しい人だし、ちょっと遅れてるだけだろ)


レオン付きのメイドになったとはいえ、もとは宮廷魔術師筆頭という役職の彼女。

こうして、レオンが外に出ている時は色々としなくてはならない事も有るだろう。

そう思って、不安な心を圧し殺す。


(オレにも魔法が使えたらな…いや、無理なのは分かってるけどさ)


この世界での魔法と言う物は〈能力スキル〉と大きく関係している、後天的に覚える事はまず不可能なのだ。

〈魔力操作〉と言うスキルを所持してる事が大前提、そこからさらに血の滲むような修練を経てのみ魔法を使用出来るようになる。

〈魔力操作〉所持者と言うだけでも希少なのに、修練の結果魔法を覚える事が出来るのはほんの一握り。

ゆえに、宮廷魔術師と言うだけでその人はエリート中のエリートなのだ。

つまり、その筆頭であるクリスティーナはエリート中のエリート中のエリートと言う事になる。


そんなどこかの弟もビックリな言語を作り出した所で、レオンは手に持ったイヤリングの箱を見る。


(でも、魔法が使えなかったとしても。魔道具マジック・アイテムなら…)


確かに、魔道具マジック・アイテムならば誰にでも使える物も有る。

以前説明したが、道具アイテム魔道具マジック・アイテムの違いは『理解の範疇に納まるか否か』である。

〈魔力操作〉を持たない人間が、まるで魔法のような効果を生み出す事が出来る魔道具マジック・アイテムも有るだろう。


そして…


(あーあ、このイヤリングが〈翻訳〉機能付きの魔道具マジック・アイテムだったら良かったのになー)


この様な妄想を実現させる能力スキルも、当然あるのだ。



ーーー



日が落ち、辺りが闇に染められかけていたその頃。

レオンの手から、激しい光が放たれる。



「…え?うわっ!?何??」



レオンは慌てて目を塞ぎ、光が収まるのを待った。

数秒の発光の後再び辺りは暗くなり、レオンはそっと目を開ける。

今の現象に首を傾げていると、門番の内の一人がレオンの元にやってきて槍を突きつけた。



「おい!今の光は何だ?!何をした!!」

「…………え?」



門番がレオンに()う。

いきなり言葉が理解出来る様になって、レオンは狼狽した。


(え?なんで?!なんで急に言葉が??)


そこまで考えて、ふと思い当たる。

先程の発光、そして…直前の妄想。


ひょっとして…と、手に持った箱を地面に置く。



「何かの合図か?!近く…〜〜〜」

「ーーーーっ!!!」



やっぱりそうか、とレオンは驚愕した。

再び地面から拾いあげた所で、王宮の門から誰かが出てくる。



「〜〜〜…貴様!早く答えんか!!」

「止めなさい!!」



直後に聞こえた怒声に、門番はビクッと激しく反応した。

レオンはその声の主へと、声をかける。



「クリスティーナさん…!」

「ククク、クリスティーナ様!!」



門番が悪役の笑い声っぽく名前を言いどもった後、すぐさま振り返り最敬礼をした。

クリスティーナの表情は、半目で無表情(いつも通り)であったのだが…何か背後が陽炎の様に揺らめいて見える。


それが見間違えで無い事は、門番の滝汗を見れば分かる。

レオンにまで緊張が伝染したのか、額から頬にかけて一筋の汗がながれる。



「…あなた達、誰に槍を向けているか分かっているのかしら?」

「はっ!!いえ…あの、何やら怪しい言語で怪しい踊りをして怪しい道具を使った怪しい者がいたものでして…」



怪しいのオンパレードである。


レオンとしても『そこまで?!』という気持ちになる。

ただ(謎言語で)話しかけて、(指を自分と王宮に交互で動かす)ジェスチャーで伝え(られなかったのでジタバタと暴れ)て…少し離れた所で待って(る間にしゃがんだり立ったり手遊びしてた箱が急に光っ)ただけなのだが。


(…うん、充分怪しかったな。門番さんごめん!)


思い返すと充分に怪しかったと、素直に反省するレオン。



「はぁ…。あなた達にも伝わってるとは思いますが、その方は当国の客人です。傷が一つ付いたら、あなた達の首が一つ落ちるものと思いなさい」

「ーー!!申し訳ありませんでした!…先程の光は、クリスティーナ様を呼ぶ合図でしたか。早とちりをしてしまい、謝罪をいたします」



いや、そこまで…と思ったが、これには口を出さない方がいいと判断した。

王国側としては、1年後に帰すと約束した人間が下手に怪我をしたりされたら困るだろう。

それこそ、かすり傷一つにまで注意しておいてもやりすぎではないくらい。

世界そのものが違うのだ、傷口から入った菌に免疫が無くそのままポックリ…と言う可能性だってある。


合図云々も実際は違うのだが、どう説明していいのかわからずそのままにしておく。

門番に向かって小さく「気にしないで下さい」と声を掛け、クリスティーナのもとへ行きそのまま一緒に王宮に入る。


声を掛けられた門番は、扉が締まってレオンが見えなくなるまでその場に立ち尽くし…ポツリと呟いた。



「………喋れんのかよ」

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