表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

非日常の終わり

「それではレオン様、こちらへ…」



一頻りの拍手が止むと同時に、クリスティーナから声が掛かった。

勇者として召喚された者には特殊な能力が宿る、というのは先程の話にあった事だ。

それを今から〈解析〉の魔法で調べてくれると言うことらしい。


つまりどの能力チカラを貸せるのかが、やっと分かると言うことだ。



「我、クリスティーナ・フローライトの名において乞い願う。彼の者の能力を識り、解したく〈解析〉」



ん?

と、なにやら不思議な気持ちになるレオン。

詳しく知るわけが無いのだが、今の詠唱に違和感を感じた。


まぁ、絶対に気のせいだと思うが。


今まで魔法という存在に触れたことの無いレオン、そんな人間の違和感などがあてになる訳もなく。

先程の〈翻訳〉の時と同じく、淡い光に包まれていった。



「…レオン・トダ…ヒューマンのオス…聖歴203年秋の2月28日生まれ…15歳…178cm…58kg…」



レオンに手を翳したまま、どこかトランス状態の様にも見えるクリスティーナ。

ぶつぶつと個人状態を読み上げていき、そばにいる兵士が茶色い紙にそれを書き記していく。


それを、ボンヤリと眺めながらレオンは思う。



(個人情報丸裸かよ、ある意味すげーな。しかし…スリーサイズまで分かるのはすごいけど、男のを知って誰が得するんだ?!)



女の子に使うとセクハラじゃね?!

とまで考えた所で、書記の兵士からゴクリとツバを飲み込む音が聞こえた。



(居たよ、得する人!てか止めて、オレにそんな趣味は無いから!)



書き記す手は止めないが、時折チラチラとレオンに視線を向ける兵士。


レオンの背中に冷たい汗が流れた。



ーーー



「お待たせしました、陛下。こちらがレオン様の能力ステータスで御座います」



先程書き記していた茶色い紙をくるくると巻きつけ、恭しく王へと献上するクリスティーナ。


先程の状態はやはりトランス状態だったようで、クリスティーナ自身もまだレオンの能力ステータスを把握出来ていない。

全ての情報を把握しているのは書記の兵士だけであり、その者も特殊な魔法によって契約されみだりに吹聴出来ない様になっている。



「うむ、確かに受け取った。勇者様よ、中身を拝見しても宜しいか?」

「えーっと…」



なんだか裸を見られる様な不思議な気持ちになってしまい、少しだけ戸惑った返事を返してしまうレオン。



「レオン様、個人情報の欄である上半分は既に切り取って有ります。犯罪者に〈解析〉を使う以外の時は、そうするのが慣例となっておりますので」



レオンの心境を察したのか、クリスティーナから追加での説明をうけた。

なら安心だな、と頷いて…ふと『じゃあその上半分は何処へ?』と思いついて、思い出した。



(そういやさっきの書記、何か懐にしまい込んでた!あれ、そうじゃ無いのか?!え、というかそんな物何すんの?ひょっとして、数字だけで妄想が捗ったりするんですか?だとしたら、オレなんかよりも数段上ですね!!)



持ち去られた個人情報の行く末を妄想し、その答えに戦慄するレオン。


まぁ、普通に考えれば『燃やして廃棄』する為に持ち帰っただけなのだろうが。



「では…」



小さな声で「ぁぁぁ…」と顔を青褪めさせているレオンは放置し、王はレオンの能力ステータスが書かれた紙を開く。



「ふむ。位階レベルは1、身体値パラメータは…一般兵よりやや低いくらいか」



むむむ、と言う声が聞こえて来そうな程に難しい顔で紙を見つめる王。


位階レベル1で一般兵よりやや下の身体値パラメータ、と言えば「結構良いんじゃね?」とも思う。

しかし、それくらいの値で有れば鍛えた所で上級兵…つまり王の護衛をしている『この場にいる兵士』達と期待値は然程変わらない。


王が難しい顔をする訳だ。



「まぁ、肝心なのはこの先。技能スキルなの、じゃが…」



気を取り直して、と視線を下へと移して行く王。

どうやら、取り直せなかったようだ。



「…道具創造アイテム・クリエイト



ポツリと呟く様に洩らした王の言葉に、クリスティーナも目を見開いて驚く。



「ど、どうしたんですか?そんなに驚いて、ひょっとしてかなり珍しい技能スキルとか…」



んなわけねーだろ、と心の中で自分にツッコミを入れるレオン。



「あー、うん。珍しいと言えば珍しい…かな?100人に1人…いや、1000人に1人くらいしか居ないから…」



王の隣に行って、紙を覗き込んだクリスティーナがそう言った。



(1000人に1人って、この世界の人口は何人だよ!)



地球での感覚で言うと、中世の頃で2億人〜5億人。

魔法の発達したこの世界には当てはまらないかもしれないが、その計算で行くと2万人〜5万人の人間に現れる技能スキルである。


中々の希少レア度だ。


等と、皮肉った事を考えてクリスティーナを見る。

相変わらず無表情ではあるが、なにやら視線が右へ左へ。

狼狽えているな、と考え王を見る。

こちらは分かりやすく、魂の様な物が出ていく幻視が見える程に口を開いて白目を剥いている。


二人を交互に見て、顎に手をやり静かに頷くレオン。



「つまり、善王系ハズレ技能スキルタイプだったって事か」



なるほど…と頷くレオンに対して、正気を取り戻した王とクリスティーナ。

それに謁見の間に居た兵士達、全員で仲良く首を傾げた。

パラメータはゲーム的な意味で使っています。


身体値と言っていますが、体力・魔力・筋力・敏捷・精神・運などのゲームに出てくるパラメータそのものをイメージしていただければ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ