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聖女さまは戦闘職をご希望です。  作者: 飛狼
第一章 聖女覚醒
27/35

◇聖女様、お目覚めの時間ですよ? (26)

短いです。


 ――ギュィィン!


 魔導機兵の甲高い駆動音が辺りに響き渡る。

 その音に皆がぎょっと驚き、争い自体は中断されてしまった。

 テロリストたちは魔導機兵へと駆け戻り、スティーブンとフレイヤはアレクの傍らへと駆け寄る。


「ちっ、魔導機兵か」


 アレクが視線を巡らすと、テロリストの中にエースの姿はなかった。それで全てを察し、しまったと顔を歪める。


「何故、魔導機兵がここに!」

「会長、やつらは何者で?」


 アレクの傍らでは、フレイヤが驚きの声をあげ、スティーブンは動き出した魔導機兵を見詰めたまま、眉間に深くしわを刻んでいた。


「奴らは、『ダナン解放戦線』に所属するテロリストたちだ。そしてアレが、今回計画していたテロの切り札のようだよ」

「どこからあのようなものを……それに、計画ですか?」


 アレクとスティーブンの二人は、魔導機兵に鋭い視線を送りながら話を続ける。その横では、フレイヤが目を剥き驚いたまま固まっていた。

 魔導機兵とは、帝国の民にとってそれほどのもの。いわば、帝国の武力の象徴でもあるのだ。


「闇ルートで、とは言っていたが、後で流出経路を調査し責任者には厳罰な対応するとして……問題は、アレをどうするかだ。奴らの目的は、魔導機兵を用いての帝城の破壊らしいからな」

「ほぅ、帝城破壊ですか……あの背中に抱える魔導砲を使う積りですかね」

「って、会長もスティーブも、落ち着いてる場合じゃないでしょう。さすがにアレは、私たちだけでどうにか出来るようなものでないから」


 目の前に迫る危機に険しい顔はするものの、二人は落ち着いた様子で会話する。それに苛立ったフレイヤが、堪らず会話に割って入ったのだ。


「フレイ、お前の方こそ少しは落ち着け。帝城の障壁は魔導砲で撃ち抜けるほどやわじゃない。でしょう、会長?」


 スティーブンがアレクへと視線を向けるが、アレクは渋い顔で応える。


「そうでもないようだが……」


 アレクの脳裏によぎったのは、先ほどの巨大な光の柱。あの魔力の奔流ほんりゅうで、どれほどの量が魔導機兵に蓄えられたかが問題なのだ。あの純粋な魔力のほとばしりを見た後では、或いはと考えてしまう。


「では、会長の余裕の源はあれですか」


 スティーブンが、頭上を見上げた。


「おぉ……あれは何?」


 上空に広がる光のサークルに、今頃になって気付いたフレイヤが口をぽかーんと開けた。


「余裕というほどではないが……ここは今、あの魔法陣の影響下にあるらしい」

「らしい? ……なるほど」


 スティーブンはアレクの言葉に、全てを察したのだ。この場では、魔法どころか直接攻撃すら無効にされる理由が、上空のサークルにある事を。


「魔法陣? ですか。では、魔導機兵の攻撃も全て無効にされると?」


 スティーブンが、眉を僅かに跳ね上げ尋ねた。

 魔導機兵は帝国が誇る決戦魔導兵器。それを無力化出来るかもと言われるのが、信じられない思いだったのだ。その横ではフレイヤが「何なに、どういうこと」と騒いでいる。


「今はそう願いたいが、どうかな――」


 アレクが背後に視線を向けると、『巨人の腰掛け』の前に立つアンジェラの傍らで、メリルとサリーが何やら話しかけている姿が見えた。そして、アンジェラが微笑む姿に、少しホッとする。それは、何はともあれアンジェラの自信の表れと思われたからだ。


「――取りあえず今は、魔導機兵の注意を帝城からそらすため、僕たちで牽制するぞ。そのうちに、治安局の連中も駆け付けるだろうからな」

「了解です」

「了解ッス。自分は考えるのが苦手ですから、指示をもらえる方がありがたいッス」


 スティーブンとフレイヤが、魔導機兵の左右へと別れて走り出した。それを確認し、アレクはもう一度アンジェラへと視線を向けた後、魔導機兵へと走り出したのだった。



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