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聖女さまは戦闘職をご希望です。  作者: 飛狼
第一章 聖女覚醒
13/35

◇聖女様、お目覚めの時間ですよ? (12)

遅くなりすみません。

ぎりぎり今日中の投稿が間に合いました。

 それは、マレー教授が講義を始める少し前のことである。

 さっきまでの喧騒が嘘のように静まった『戦勝記念公園前』の駅舎。この周辺は工房団地と呼び習わされるように、多くの魔導工房が建ち並ぶ。早朝は工房で働く職人が出勤してくるため駅舎は人であふれかえるも、今は閑散としていた。多くの工房が、始業時間を鐘の音に合わせているためだった。鐘の音が鳴り響く頃には、駅舎内はひっそりとしたものなのである。

 人気ひとけの少なくなった駅舎の入り口横に、隠れるように立つ、純白の制服に身を包んだ人影が三つ。待機中の生徒会の面々であった。


「さっき鐘の音が鳴ったけど、今頃はもう講義も始まってんじゃねぇの。ってか、ここで男三人でぼぉと待ってるのって、間抜けじゃネ」


 気だるそうに口を開くのは、見た目もだらしない小柄な生徒。本人はそれが恰好良いとでも思っているのか、上衣のボタンを全て外しシャツの裾もはだけたままだ。この生徒の名前はマシュー・コルシカ・カーナハン。短めに切り揃えたブラウンの頭髪を、ツンツンに立たせた生意気そうな顔立ちをしているが、歴とした生徒会のメンバーである。役職は庶務長。生徒会執行機関の雑務全般における責任者なのだ。もっとも、一部の生徒からはマシューが関わると、逆に雑務が増えると嘆く声も上がってはいるのだが。


「マシュー君、君を呼んだ覚えはないのですが」

「スコット、お前がいるのを知っていたら来てなかったのによ!」


 マシューの着くずした恰好に眉をひそめるのは、スコット・シュッダ・コッテンブルック。こちらはマシューとは真逆に、制服にはシワのひとつもなくかっちりと着こなしている。細身にひょろりとした姿形に黒髪はオールバックで後ろに流し、眼鏡の向こうから神経質そうな瞳を光らせていた。この生徒も生徒会のメンバーで、役職は会計監査長。生徒会執行機関の会計管理すべての責任者なのである。

 マシューとスコットの相性の悪さは、生徒会だけでなく上級生の間でもつとに有名な話なのである。


「まぁまぁ二人共、そんなにいがみ合わないで下さいよ」


 二人の間に割って入り宥めようとする生徒も、生徒会の主要メンバーのひとり、ロブ・ラサ・ウィルソン。柔らかそうな金髪にはくるくるとした天然パーマがかかり、眉尻の下がった顔立ちは優しげではあるが、いかにも気が弱そうである。生徒会の役職は、こう見えて学園風紀管理部部長。統率、風紀、保健の三つの専門委員会を取り仕切りまとめる極めて重要なポスト。だが、各委員長が個性的な人物ばかりなので嫌がる者も多く、皆から押し付けられたとの噂もあるのだ。


「ちっ! ひとりだけ良い子ぶりやがって。もとはと言えば、お前の所のフレイが遅れてるから、全部の予定が狂ってるんだろう」

「それは言えてますね」

「え、えぇ、ぼ、僕ですかぁ」


 宥めに入った積もりが、反対に二人から詰問されて狼狽えるロブである。

 話に上がったフレイアこそが、ロブの管轄下にある風紀委員会の委員長。未だに姿を現さず、三人はここで待たされていたのである。


「か、彼女は朝が弱いようなので……あ、あのう、そのう……」


 言い訳するロブの声は、次第に小さくなっていく。


「だからぁ、それをどうにかするのがお前の仕事だろうが」

「その通りです。このままでは、生徒の規範となるべき生徒会として示しがつきませんよ」

「えぇ、なんで僕がぁ……」


 完全に二人の矛先が自分へと向き、しどろもどろとなっていたロブだったが、途中でその顔色がぱっと明るく綻んだ。


「ほら、二人とも、スティーブさんが戻ってきましたよ」


 ロブが指差す方向――公園の入り口ゲートから走り出て来る生徒がひとり。金色の頭髪は短く刈り込まれ、四角くい相貌に体格もがっしりとし、見た目はいわおのようである。名前はスティーブン・バンジャル・ベタンコート。彼もまた生徒会のメンバーであるものの、その武闘派然とした見た目に反して役職は書記長なのだ。仕事は主に、生徒会での記録や報告を行っているのである。


「スティーブさん、此方ですよ!」


 助かったとばかりに顔を輝かせて大声で呼び掛けるロブ。と、目の前の幹線道路を渡りながらスティーブンは、それに応えるかのように片手を上げた。だが、その表情には僅かに焦りの色が浮かんでいた。


「ひとりだけかよ。会長や連れて行った風紀委員の連中がいねぇみたいだが……」

「何かあったのかも知れませんね」


 ロブが大きく手を振る横で、マシューとスコットは首を傾げる。と、そこへ、慌てた様子でスティーブンが駆け込んで来た。


「おいマシュー! すぐに治安局に走れ!」

「なんでさぁ!」

「公園の管理事務所が襲われた!」

 

 驚く三人が思わず顔を見合わす。


「何が!」

「風紀委員は、管理事務所周辺に残して来た。会長もひとり講義に潜入している。とにかく走れ!」

「お、おぅ……分かったっス!」


 説明するのももどかし気に、早口で指示を出すスティーブン。それに応えてマシューが走り出そうとした時だった。


「おっと、それは止めてもらおうか」


 彼ら四人の背後、駅舎の暗がりからユラリと現れる男が五人。フード付きのコートを頭から被り、いかにも怪しい。コートの陰からは腰だめに構えた火杖の先が覗き、四人に向けられていた。


「う、うわ!」


 ロブは悲鳴を上げるも、残りの三人は僅かに眉を潜めるだけだった。真っ先に口を開いたのはマシューだ。


「あぁん! たった五人で、俺たちをどうにか出来るとでも?」


 まるで火杖が見えていないかのように、マシューが嘲った笑いを浮かべる。


「私には、こちらを窺っていた時から分かっていましたけどね」


 そう言って冷笑を浮かべるのはスコット。眼鏡を押し上げながら、冷徹な光を宿した瞳を男たちに向けた。しかし、その言葉に反応したのは、横にいたマシューだった。


「なにぃ! 分かっていたら早く言いやがれスコット!」

「おや、分からなかったのですか? マシュー君、それでよく生徒会の役員が務まりますね」

「やかましい! 周囲の警戒はお前の役目だろうが!」

「おやおや、この程度の相手、教えるまでもないと思っていたのですが。もしかして、怖いのですかね?」

「なっ!」


 男たちを無視して、またいがみ合う二人の横では、


「……」


 無言のまま、相手をその視線で射殺すかのように睨みつけるスティーブンがいた。


「ガキが舐める――」


 フードの男たちが激高して声を荒げるが、その言葉は途中でと切れた。

 何故なら――


「どっせえぇい!」


 気合のこもった掛け声と共に、純白の制服を着た生徒が乱入したからだ。

 その生徒の放った強烈な蹴りが、男の延髄にまともに直撃する。と、男のひとりは宙で一回転して激しく叩き付けられると、そのまま床を転がっていく。

 突如現れた生徒に、残りの男たちは慌てふためいた。男たちは、そこらにいるような犯罪者ではなかった。厳しい戦いの中に身をおくプロを自認していた。それなのに、近付くその生徒の気配を一切感じられなかったのである。だから慌てた。火杖の先を向けるも、そこにはもう生徒の姿はない。


「【雷光】!」


 と、叫び声を残し、次の瞬間にはその生徒の姿がブレる。男たちが視認できたのは、赤い残像だけだった。生徒の動きが速過ぎて、視線が追いつかないのだ。


「うがぁ!」

 

 苦悶の表情を浮かべ、別の男が呻き声を上げる。

 気付いた時には、半身に腰を落としたその生徒の肘が、男のみぞおちに突き刺さっていた。すると、また生徒の姿がブレる。背中でまとめる真っ赤な長い髪が、宙で踊った。男たちにはそれが残像として、目に焼き付くのである。そしてまた、別の男が顎を拳で撃ち抜かれ、くるくると独楽のように回り倒れていく。呻き声と共に次々と倒される男たち。五人全員が意識を刈り取られるのは、本当に瞬く間だった。

 最後に倒れた男を踏み付け、その生徒が顔を上げた。そこに張り付いているのは満面の笑顔。


「ごめ~ん。寝坊しちゃたぁ、あははは。で、こいつら何?」


 その生徒こそ風紀委員会の委員長。真っ赤な流れるような長髪を背中で束ね、何故か男子生徒用の純白の制服を身に纏う。学園の最終兵器とも呼ばれる男装の麗人、フレイヤ・レヴェンその人だった。


明日の夜はきついかも。

今日はボランティアの夜回りがあったのですが、明日はその飲み会があぁぁぁ……。

もしかすると日をまたぐかもしれませんが、出きるだけ早く次話の投稿をしますね。

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