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……東應大学…カフェ……
「ねぇ、今年の夏休みどこ行くの?」
「私は彼氏と沖縄行く~っ!」
「ええっ!リッチじゃんっ!」
「ねぇ?美夢は?予定あるの?」
美夢と呼ばれてる私は、藤崎美夢。今年二十歳になったばかりの大学生だ。
夏休みだったが、課題のため…大学へきて、そのついでに友人達とお茶をしていた。
大学内のカフェで友人たちと談笑していたのだが…。
皆、夏休みの予定の話で盛り上がっている。
私は問いかけてきた友人に答えた。
「今のところ…、予定はないよ…」
私の答えに驚いたのか、友人たちは互いに目を合わした。すると、友人の一人が言った。
「月島は?あんた達いつも一緒じゃないっ!」
友人の言う月島とは、私の幼馴染みの月島葵。学内でもそれなりに有名人だが、彼には妙なあだ名がある。
『東應大学の天変月島』…。どうやら天才と変人のミックスで天変と言うらしいが、幼い頃から一緒の私には…正直、実感が無かった。
刑事でもある私の兄が、葵を連れて事件の捜査をよくやってるものだから、葵も学内で変に有名になってしまった。
それにプラスして、葵は人と話す時に、どうも理屈っぽくなってしまうため、変人扱いを受けてしまう。
私はそんな幼馴染みの事を考えてたら自然と渋い表情になった。
「う~ん…葵は、ちょっと…誘っても…」
私の表情を見て何かを仕掛けて悟ったのか、友人達は少し気を使った。
「そっか…、彼、夏休みとか…気にしなさそうだもんね…」
私は居たたまれなくなり、立ち上がった。
「ごめん!私…これからちょっと、お兄ちゃんと会う約束があって…」
友人が言った。
「あのカッコいいお兄さん?いいなぁ美夢…。あんな良いお兄さんいて…」
兄のルックスは妹の私から見ればよくわからないが、友人達にはけっこう人気があった。
私は自分の分の代金を置いて、兄との待ち合わせ場所へ向かった。