①
……某日…警視庁捜査会議室……
その日の僕は警視庁の小さな会議室にいた。
「よってこの場合…この凶器を使用できたのは、容疑者Aしかあり得ないのです…」
僕がそう言うと、捜査会議室に集まっている刑事たちは、一斉に立ち上がる。
その中の一人の男性が言った。
「よし…容疑者を確保する…。解散っ!」
男性の掛け声に刑事たちは解散した。
会議室には、僕とその男性の二人だけになった。
男性は言った。
「いつも助かるよ…。葵…」
僕の事を葵と呼ぶ男性は、警視庁の藤崎宗吾警部…、僕の幼馴染み、藤崎美夢の兄になる。
僕は言った。
「お気になさらず…。こちらこそ、いい経験させてもらって感謝してますよ…」
宗吾は言った。
「事件が解決したら、なんか奢るよ…」
僕は言った。
「楽しみにしていますよ…警部殿。では、僕はこれで…」
僕は宗吾に挨拶をし、警視庁を出た。
外はいい天気だ…。強めの日差しが、僕の色白い肌を容赦なく射してくる。
すっかり夏だ…。夏休みの時期もあってか、街は家族連れの人々がやたら目立つ。
普通の大学生なら、夏休みを満喫し、友人や恋人と遊んだりするのだろうが、僕にはあまり興味は無かった。
僕の名前は月島葵。
東應大学の学生だ。ただ大学では妙な、あだ名を付けられている。
『東應大学の天変月島』…。天才と変人をミックスして、天変と言うらしいが…、僕自信それに対して自覚は無い。
おそらく、警察の捜査に協力したりして、変に目立ってしまい、こんな妙なあだ名を付けられたのだろう…。
この年で警察の捜査に関われるのはなかなかの刺激だったが…、最近はそれも慣れてしまい、少々刺激が足りない…。
僕は適当にタクシーを拾って自宅に戻った。