とにかく、どうにかしないとな
さんざん園咲をからかった俺は、売店コーナーへ足を運んでいた。
ふれあいコーナーから園咲はずっとぶすっとして明らかに、今私は不機嫌ですっ!というオーラを周りに放出しまくっていたからである。
ぶっちゃけると、食べ物で機嫌をとるということだ。まぁ、昼時だしちょうどいいかもな。
まだ、出会ってから日が浅いが、どうもこの中二病。にわかとしか思えない。
公衆の面前の前でのあの振る舞いや、学校の校門前でのあの言動など、客観的に見れば、ああ、なるほど。この娘は中二病なんだな。と理解するだろう。
だが、この俺の目を誤魔化すことは出来ない。
まず、中二病患者というのは設定を蔑ろにしない。中二病にとって設定というのは命であり、そんな簡単にボロをだすことはしないのだ。(といっても、ほとんどが勢いで作っている妄想設定だから、どこかしらで矛盾が生じている可能性がある。また自身はその矛盾に気づかない。気づかない振りをする)
なのに、園咲は『我』だの『私』だの。どちらかはっきりしろと、思わざるを得ない。
しかもたまに素に戻っているし。
よって、この中二病マイスター『邪神竜を従える反逆者』が出した結論とは…………!
「……なぁ、お前って高校デビュー失敗した口?」
「ぶっ!ち、違う!」
俺が質問すると、メロンソーダを飲んでいた園咲は思いっきりむせていた。
それにしても、この反応。やはりそうか。
少年ジャ○プでも超能力者が主役のギャグマンガにそんなキャラ出てたしな。高校デビューを考えて、結果、なぜか中二病キャラになってしまう。
俺が生暖かい目で見ていたせいか、園咲は若干涙目になっている。
「我がこの格好をしているには、それなりの訳があるのだ!」
まだ涙目になっているが、またポーズを決めながら、声高らかに宣言した。
「そうかそうか」
「絶対信じてないだろ!」
おお、鋭い突っ込み。その鋭い突っ込みでお笑いの頂点を目指さないか?
「……時期が来たら話すだろう。終焉の時まで待つがいい」
こいつ、中二病モードで誤魔化しやがった。
だいたい終焉の時って死ぬときじゃねぇか。何で死ぬ時にお前の話聞いてなきゃいけねぇんだよ。
突っ込み所満載過ぎて、そのままコンビ組めそう。ちなみにコンビ名は『黄昏を告げる者たち』で。
……いかんいかん、こいつといると封印したはずのあの頃の感覚が甦ってくる。自重しなくては。
まだぶつぶつと文句を言っている園咲に売店で買ってきたたこ焼きを与えると、途端に目を輝かしてハフハフ言いながら食べ始めた。
実に幸せそうな顔である。
……何というか、犬に餌付けしてる気分。
実際に園咲に尻尾があればきっとブンブンと千切れる勢いで振り回していただろう。
うん、凄い簡単にその風景が思い浮かぶ。
二つ名は『忠犬園咲』でいいんじゃない?
ちなみに、この事を口が滑って言ったところ「だったらケルベロスらしく、噛みついてやろう……!」と本当に噛みついて来るという一騒動があったのだが、詳しく説明するととんでもない量になるので割愛。
…………まさか本当に噛みついて来るとは。噛んだところから血が出てくるとかどんだけ噛む力強いんだよ。普段空き缶とか喰ってんの?
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腹が膨れた俺たちは、そのまま公園のベンチで日向ぼっこをしていた。
昼下がりの穏やかな陽射しが俺たちを包み込む。
目の前の広場には子供たちがキャッキャッととても楽しそうに走り回っている。
そんな子供たちを横目に俺は園咲を盗み見た。このベンチに来てからすでに三十分くらい経っているが、この中二病モドキはついてすぐに俺の肩を枕にして気持ち良さそうにすやすやと寝やがった。
……小突いてやろうか、この中二。
普通こういう時って、ラブコメとかだとドキドキする展開だよな?
確かに、初めは俺もすげぇドキドキしてたけどさ、今の状況でそんなこと言ってるほど余裕があるわけじゃない。
……何故なら、こいつの口から垂れてくる涎が肩にかかるのを必死に阻止しているところだからです!
幸せそうな表情を浮かべて、「えへへ、師匠。もう、食べないですよ~」と寝言を言ってやがる。
どうやら俺が食べ物を奢っている夢でも見ているらしい。…………こいつ、まだ食い足りないってのか。もう、大食い番組にでも出てくれば?そしたら腹一杯食えるぞ。
……というか、そんな呑気に考えてる暇じゃない。涎が、もうすぐそこまで迫っている……!
女子高生の涎で喜ぶのは一部の特殊なおっさんだけであり、俺はおっさんでも特殊でもない!なんとして避けなければ。
「いい加減に、しろ!」
俺は園咲の頭を俺とは逆方向に押し倒した。
そのまま園咲は面白いくらいにそのまま倒れ大地と目覚めのキスをすることになった。
「はっ!世界の運命率が書き換えられたのか!」
「アホか、さっさと目を覚ませ」
起きた途端に中二病モード全開だった。
起きてからすぐでこの反応。もしかしたらこいつ、起きてたんじゃないだろうな。
「ふむぅ、いい夢を見ていたのに……」
何やら不満そうな表情を浮かべて俺の方を見てきた。
「あんだけ食ったのにまだ食い足りないのかよ」
「なっ!何でしってるんですか!?まさか…………変態……?」
「違ぇよ!寝言を言ってたんだよ!……そろそろ涎拭けよ」
俺が指摘すると、「はっ!」と顔を真っ赤にしながら俺から顔を背けて涎を拭っていた。
今更俺から見えないようにしても、さんざん見てたから意味ないんだけど。
それに、こいつはすぐ顔を真っ赤にするけど、何?将来ダルマにでもなりたいのかな?
……恥ずかしいならもう少し女の子らしいことすりゃいいのに。
どうして俺の周りの女子は普通じゃないんだろうか。……まぁ、三人しか女子の知り合いいないんだけど。え?尾道先生?あの人は女子って年れ――何故か寒気がしたので以下略。
「……フッフッフッ、実はこれも全て貴様を騙すための演技だったのだ!どうだ、完全に騙されたことだろう!」
「あー、はいはい。すげぇ騙された」
「全く信じてないだろう!」
何だがこのやり取りにも慣れてきたな。
それにしても、こいつの手のひら返し具合は凄いな。
よくもまぁ、あんなにペラペラと嘘が出てくるもんだ。だいたい、寝たふりして俺を騙してどうすんだよ。しかも、師匠に対して貴様とか。お前の中での師匠ってどういう位置付けなのか、一回教えてもらいたいね。
「ふん、それよりもう飽きた。何処か違うところへ行こう」
「違うところって言ったってなぁ」
その時、一体何処の神の悪戯か、はたまた運命の仕業なのか、急に物凄い勢いで雨が降ってきた。
「うおっ!」
「きゃあ!」
何だが凄い女の子みたいな可愛らしい悲鳴が聞こえてきたが、そんなのは後だ。
「とりあえず、雨宿り出来るところへ行こう!」
俺が呼び掛けるとコクコクと頷いて園咲が後ろからついてきた。
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俺たちは公園によくある屋根つきのちょっとした休憩所に来ていた。
「すげぇな、いきなり降ってきやがった」
俺が雨への感想を言いながら園咲を見てみると。
雨で濡れたブレザーを脱ぎ終わった後だったので、肌に張り付いたワイシャツに透けた下着が見えていて、そりゃとても目の保養と言っても過言ではないくらいに、まぁ言っちゃえばとてもエロかった。
……一体、俺は何を言ってるんだろうね。
「とにかく、どうにかしないとな」
目のやり場に困りつつも、これからどうしたものかと考える俺であった。
活動報告でお知らせしましたが、なんとかなりました(笑)
ですが、ちょっと訳ありでしてWi-Fi環境が整っている場所でないと執筆出来ないので、これからは一週間に一回の更新ペースになりそうです。
どうかこれからもよろしくお願いします!




