未知との遭遇
朝、珍しく西城が「今日は日直なので先に行きますね?」と言ってきたので俺は久し振りに一人で学校に登校している。
……今まで一人で生きていくだの言っていた俺が今ではこんな有り様だ。もちろんその志は変わらないが、何と言うか、あんだけ偉そうな事言っておいて結局は人と関わっているというのは自分でもどうかと思う。
やはり何事も初心が大切だな。
と、俺が決意を新たに学校へ登校して、校門に差し掛かったところに俺は妙なものを発見した。
校門に寄りかかってうつむいている少女がいた。
ここだけ見ればちょっと具合が悪いのかな?で済まされるが、その少女の格好が問題だった。
こちら側に向けている左足には包帯がびっしりと巻かれていて、左目にはどこから買ってきたんだ?と疑問しか感じられない黒革の眼帯を着けていた。
…………これはあれだ。関わったら面倒なタイプだ。
俺はその少女から出来る限り距離をとって校門を潜ろうとした。
「そこの我が同胞よ!」
その瞬間、いきなり少女が大声で意味不明なことを叫び出した。
おーい、誰か精神科の先生呼んできてくれ。精神が錯乱してるみたいだ。
いや、もう手遅れかもしれない……。
「む、貴様いま私の事をバカにしただろう」
確かに思ったけどこっちに近寄ってくるの止めてくれない?周りの視線が痛いんですが。
近くで見たことでようやくわかった。
この少女はただの少女じゃない。美少女だ……!
しかし、中身が残念なだけに全然ときめかない。
顔のパーツも全てが計算され尽くしたかのように完璧で肩のところで切り揃えられた黒髪はとても目を引く綺麗な髪なのだが、この残念さでは誰も近寄りには行かないだろう。
それに見えている右目は青目だ。こいつカラーコンタクトして校則は大丈夫なのだろうか?他人事ながらに心配になる。
「まぁいい。それよりも全てが解放されし刻にまた会おう。…………では!」
そう言って眼帯に手を当てて「ハーハッハッ」と高笑いしながら学校とは反対方向に歩き去っていった。
どうでもいいことだが、あいつは学校には行かないのだろうか。遅刻するぞ?
ーーーーーーーーーー
教室に着くと南条が俺を見るなりこちらにやって来て話しかけてきた 。
「今朝の見たよ~。面倒な人に目を付けられちゃったね」
南条が苦笑しながら「ドンマイ!」とでも言いたげな表情を浮かべていた。
「どういうことだよ?」
「あの人は私たちと同じ学年で園咲美夏て言う人で“中二病”なんだよ」
中二病。
思春期の少年または少女に起こる妄想的な病。
自分は特別と思い込み、常に常人には理解できない行動を起こし周りを困惑させる。
常人には理解できない行動を起こす辺り、ある意味特別と言ってもいいだろう。
標準装備は包帯、眼帯。上級者になるとカラーコンタクトつけたり、黒いコートを着込んでくることもある。
なお、この説明は俺が思っていることであり、実際は違うかもしれないがそこんとこは理解してください。お願いします!
「何でそんなやつが俺に話しかけてきたんだよ」
そう、そこが疑問なのだ。
俺は別に今は中二病じゃないし、今朝話しかけられるまではあんなやつ知りもしなかった。
だから何故俺が目をつけられたのか訳が分からないんだ。
その疑問に南条は。
「う~ん、波長があったんじゃない?」
と何とも微妙な返答を頂いた。
何だよ波長って。ますます中二臭いじゃないか。
こうして、朝の無駄話はHRを告げるチャイムによって終了した。
南条が自分の席に戻るとき、何故か機嫌が良さそうだったのは何故だろうか?
まぁ、どうでも良いけど。
ーーーーーーーーーー
「…………おい、何でここにいる」
思わず低い声で唸った俺の視線の先には、今朝出会った痛い中二病患者が部室にいた。
しかもわざわざポーズを決めてだ。
もしかしてこいつ、俺が部室にやって来るまでずっとポーズを取り続けてたんじゃないだろうな。……だとしたらこいつは本物のバカだ。
ていうか、この部室は変人の溜まり場なのだろうか、ストーカーに残念イケメン、それに中二病。俺?俺は普通だよ。ソウ、ナニモオカシクナイ。
俺が内心こいつに対する認識を再確認をしていると園咲はまたポーズを変えて俺に話しかけてきた。
「また会ったな、我が同胞よ」
眼帯に手を当ててキリっとこちらに向かって決めポーズ。
その顔が「決まった……!」とドヤ顔になっている。
……窓から放り投げてやろうか、この女。
「別に同胞でも何でもない。何しに来たんだよ園咲」
俺は鞄をもはや定位置になっている席に置きながら質問してみた。
なんか○○してみたって言ってみるとYouTuberみたいだね!
…………心底どうでもいいわ。
すると園咲は驚愕に満ちたその目を見開いてこちらを見返してきた。
「……何故我の真名を知っている。いや流石は我が同胞と言ったところか……。素晴らしい!」
「別に素晴らしくないし、クラスの知り合いから聞いただけだから」
「それよりも我が同胞よ。我の疑問について我が同胞の答えを聞きたいのだが……」
無視しやがった。こいつ、それよりもとか言いやがったよな。しかも無視しといて相談事とかなめてんのかこいつ。
「……ん?相談事ってことは先生の仕業か……!」
くそ!なんて面倒なやつを送り込んでくるんだあの人は。
勘弁してくれ。前の残念イケメンで疲れているってのに更にもっと疲れそうなやつが相談とか。何これ、俺はドMになった覚えはないんだけど?
「それでは我が望みを告げよう……。我が望みは……………………」
「溜めすぎだろ、どんだけ引っ張るつもりだよ。面倒臭いからとっとと言え」
俺が我慢できずに口を挟むと園咲が「むぅ」と不満げにこちらを見てきた。
その「むぅ」って言うの止めろ。不覚にも可愛いとか思っちゃうだろ。
「ごほん、では改めて我が望みを告げよう。…………我が望みは……我と契約を結ぶ者を探し出すことなのだ!」
…………いや、「探し出すことなのだ!」とか言われても意味わかんないんだけど。何、契約を結べる者って、どういうことなのか俺にはさっぱりだ。
「つまりどういうことなんだ?」
俺が意味不明すぎる園咲の望みについて質問した。
「一般人に分かりやすく言えば、我の理解者を見つけ出すことになる」
お前も一般人だろうが。とつっこんでもどうせ聞かないので胸のうちに閉まっておく。
それにしても理解者……ね。つまりは。
「お前、友達が欲しいのか」
この一言は効果覿面だった。
面白いくらいにみるみるうちに園咲の顔が真っ赤になる。
「……た、端的にはそういうことになきにしもあらずということになるのか?」
「いや、俺に聞かれても……」
ーーーーーーーーーー
こうして俺の新たなミッションが始動した。
それにしてもいつからこの部活は何でも屋になったのだろうか。
いっそ『奉○部』にでも名前を改名した方がいいんじゃないか?と近頃切にそう思う。
まぁ、とりあえずちゃっちゃと終わらせて楽になるとしますか。
…………今までの経験からしてそんな簡単に事が終わるとは思わないけどな。……はぁ。
さぁ、新キャラは『中二病』と言うことになりました。
私は結構中二病の女の子が大好きな人間なので一番力を入れていきたいとおもいます(笑)
さて、余談ですがTwitterを始めました。
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