変わらない日常
朝、目覚ましの音で目が覚める。
窓からはポカポカした暖かい日差しが差し込み、朝から穏やかな気持ちにさせてくれる。
寝巻きのまま下に降りて台所へ向かう。
両親は既に他界していて、俺は両親が残してくれたこの家に一人で生活をしているのだ。
親戚の人たちは皆、優しく引き取ってくれると言ってくれたが、俺としては迷惑を掛けたくないので高校からは自分一人で生活している。
とはいっても、日々を暮らせるほど金を稼げるわけでもないので、そこは親戚の人たちに頼っている。……働き始めたら返さないとな。
テレビをつけて、朝のニュースにチャンネルを合わせる。そして、簡単に目玉焼きとパンを準備して、食べ始めた。
いつもと変わらない。平和で変化のない日常だ。
だが、平和や平穏というのは、いつも唐突に破られる。
「せんぱ~い、起きてますか~?」
まるでドアを叩き割るんじゃないかと心配になるくらいに、ドンドンと叩いているのはこの前、俺の親友になった西城朱音だ。
この西城は親友になってからも変わらずに朝、必ず家にやって来て一緒に登校しようとするし、昼になると教室に押し掛けてきて「せんぱ~い、一緒にご飯食べましょ~」と大声で呼んでくれるので、最近クラスの中で少なかった居場所は更になくなった。どうしてくれるよ?
そして、部活は強制参加だから放課後もこいつと顔を合わせることになる。
つまり、ほとんど毎日、俺はこいつと行動を共にしている。
…………なんか、俺の思っていた親友とは違うと思うんだけど、どう思う?
「寝てるなら早く起きてください!」
朝からうるさいやつだな、そのうち本当にご近所さんから苦情が来るぞ。
「……起きてるよ、今出る」
そうして俺は、まるでパンドラの箱を開けるときはきっとこんな気分なんだろうなぁと思いながら、ドアを開けた。
「改めまして、おはようございます!」
「…………ああ、おはよう」
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西城が来てしまったので、急いで支度をして家を出る。
道に等間隔で植えられた桜は、もう散っていてもう、春は終わるのかと思うと、それはそれでなんたが寂しい気分になるのは何故だろう。
「それにしても、先輩って朝は弱いタイプですよね」
「別にそういう訳じゃない。お前が早いだけだ」
「先輩はゆっくりしすぎなんですよ。私が迎えに行かなかったら遅刻してたかもしれないんですよ?」
苦手ということじゃない。ただ、苦手なんだよな。
朝起きたときのまた今日が始まるのか……、という暗澹とした気分になるのは誰だってそうだろ。
むしろ「よし!今日も頑張るぞ!!」と、ベランダから叫んでいるやつがいたら俺は引くね。
「まぁ、そんなこと気にしても意味ないだろ。それよりも、少し急ぐぞ」
「あっ!話逸らしましたね!?」
……面倒になったとかそういうことじゃないよ?ボク、ウソツカナイ。
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昇降口で西城と別れて、俺は自分の教室へと向かった。
結局、時間的には間に合いそうなので、廊下は走らないでゆっくり歩く。
小学生や中学生の頃だと、よく廊下で走り回っているやつも見かけたが、高校に入ってからは見かけないな。
まぁ、むやみに疲れることをするくらいなら教室でスマホいじってる方が楽だもんな。
…………こうして、ニートは量産されていくのである。
まぁ、そんなわけはないのだが。
そんな下らない事を考えていると頭を衝撃が襲った。
…………結構、痛かった。
「っ!なにすんだ!?」
「あっ、ごめん、そんな強くしたとは思わなかったんだけど」
そういうやつに限って、「いじめてた訳じゃないんです。ただ、遊んでいただげなんです」といじめの主犯は言うんだぞ。
まぁ、俺を叩いてきたのは、いじめとかにはまったく縁がなさそうだが。
「それよりもいきなり叩くなよ。…………おはよう、南条」
「おはよう!」
いつも通り、元気な南条遥であった。
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教室に入ってからも南条は俺に話しかけてきた。
「それにしても、やっぱり二人とも仲が良いよね~」
「誰と誰のことだよ?」
「もちろん、拓也と西城さんのことだよ」
そりゃ、親友になればそうなるだろう。
「だから何だよ、なにか問題でもあるのか?」
すると南条はまるで豆鉄砲ではなく、機関銃をばらまかれたかのように驚いていた。
「……へぇ~、否定はしないんだ」
「…………別に」
ニヤニヤするな。その顔を見てると腹が立つんだよ。
そんな俺とは対照的に、南条はHRを告げるチャイムがなるまで笑っていた。尚更腹が立つ。
始業のチャイムが今日も鳴る…………永遠に鳴らなくていいぞ?
お待たせしました。
大体の方向性が決まったので本日から再開していきます。
よければ最後までおつきあいお願いします!