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友達がいらない俺に告白してきたやつがいるんだが  作者: 夢木 彼方
第一章 ストーカーの出現!?
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荒木拓也の過去 ~祭りは静かに幕を降ろす~





「……待って!どうして私を見てくれないの?」

清水が瞳を潤ませながら俺に迫ってくる。

……ちょっと近くない?


「……僕にはどうしても君とは付き合えないんだ」


「カット!……荒木君。もうちょっと感情込めて言ってみよう?」

メガネ君がここでメガホンを片手に舞台に上がってきた。

どうでもいいけど、こいつノリノリだな。

どこから持ってきた、その黄色いメガホン。



今は体育館の舞台で劇の練習中のところで、重要なシーンの練習をしていたところだ。

場面的にはヒロインが主人公に迫って告白する最も見せ場と言ってもいいシーン。


どこから集まってきたのか、クラスの連中以外のやつらも混ざっている。

舞台の周りでは女子がキャーキャー叫び、男子は俺に殺気を放ってくる。


俺だって、やりたくてやってるんじゃないんだぞ!


そんな俺にメガネ君が無慈悲な判決を下す。

「じゃあ、もう一回。……よーい、スタート!」


…………もう、ちょっと休ませて……。





ーーーーーーーーーーーー



「じゃあ、少し休憩しようか。後のクラスも待ってるし」

メガネ君の一声で皆が「はーい」と返事をし各々散らばっていった。


……マジで疲れた。素人に二時間ぶっ続けで同じシーン繰り返すとか鬼かよ!?


危うくトラウマになって、もうドラマとか見れなくなってたよ?


まぁ、ドラマとかほとんど見ないけどね。



疲れて体育館の壁に寄りかかっていると南条がこっちに来た。

「大変だったね。何回も同じシーンで疲れたでしょ?」

そう言って俺にジュースを手渡してきた。

……なんかこんな場面を、ラブコメ漫画で見た気がする。

「そう思うなら俺と変わってくれ」

「無理だよ。私、男子じゃないもん」

南条は口に手をあてて、心底可笑しそうにクスクスと笑っていた。

「そうかい、やはり世界は俺に厳しいらしい」

「世界は皆に厳しいですよ~。それに何だかんだきちんとやってるそんな拓也が私は好きだよ?」


……まただよ。

こいつの好きは親愛という意味合いで、世間一般的な好きではないのだ。

むしろ家族愛と言っても過言ではない。

ただし、この台詞を知らないやつが聞いたらどうなるか。

……まぁ、わかるだろ?

現に今も興味津々といった具合にこちらをチラチラ見てくる女子が数名。

こいつのこういうところは即刻、直してくれ。



「ごめんね?私荒木君に用があるんだけどちょっといい?」

現れたのは清水だった。

若干睨んでるのは気のせいだと思いたい。


……まさかさっきの演技のことでねちねちと言われなきゃいけないの?

嫌だよ、そんなめんどくさいの。


「……俺は用はないんだけど」

「ほんのちょっとだけでいいの。聞きたいことがあるだけだから」

いつの間にか南条が消えていたことに今、俺は気がついた。

まぁ、俺に飽きてどこかに暇潰しにでも行ったんだろ。

なんか猫みたいだな。



……というか、絶体絶命の大ピンチ♪






ーーーーーーーーーーーー



場所を変えましょうと清水が言ってきたので付いていったら、体育館裏でした。

どうしよう。金持ってこいとか言われそうな

雰囲気。

「その、いきなりごめんなさい」

下手に出てから攻撃のパターンか!

「いや、別にいいけど」

「荒木君に……聞きたいことがあるんだけど、…………荒木君って南条さんと付き合ってるの?」




…………は?



なんかラーメン屋行ったらそば出てきたみたいな感じだよ?


混乱しすぎて、自分で何言ってるのか訳がわからなくなってきた。




「……えーと、何で俺が南条と付き合わなきゃいけないの?」

とりあえず真っ先に浮かんだ疑問を問いかける。

「えっ、荒木君って南条さんと付き合ってないの?」

「そうだけど、そもそもあいつは妹みたいなもんだからな」


幼い頃から一緒だと、ただの手のかかる妹にしか見えない。

むしろ面倒事が増える。

「……そっか。じゃあ、何でもないの。劇頑張ろうね!」

そう言って清水は背を向けて走り去っていった。


じゃあ、ってなんだよ。

あいつ少し疲れてるんじゃないか?

いきなり俺と南条が付き合ってるとか言い出すし。


……これはあれか、私は南条さんが好きなの!展開なのか。

百合か、百合なのか!

少女の絡み合いというのは、見ていて微笑ましいと思います。





さて、冗談もほどほどにして、そろそろ練習に戻るか。





ーーーーーーーーーーーー



それから数日間、文化祭に向けて猛練習して、何とかお客さんに見せても恥ずかしくないようなレベルまでは出来たと思う。

俺なんか何回も清水から「居残り練習をしましょう!」と言われて放課後遅くまで練習する羽目になった。


きっと練習は建前で俺と南条が一緒に帰るのを防ぐためだろう。別に俺はそんな気はないんだけどな。

そんなこんなで、皆頑張って練習して、自信がついてきたと思う。


……まぁ、個人的に見てて思ったことだけどな。


そして、本番当日を俺たちは迎えることになる。



ーーーーーーーーーーーー



「すごいたくさんの人がいるね」

舞台裏に待機していた俺に南条が話しかけてきた。

「ああ、ちょっと予想外だった」

たかが中学生の文化祭に、こんなに人が集まるとは。同じ中学のやつらもいるが、見たこともないやつらも何人かいる。

どうやら暇人が多いらしい。

「さぁ、皆!本番だよ。気合い入れていこう!」


メガネ君がそんなことを言ってるが、気合い入れただけで上手くいくのなら、皆苦労しないと思うぞ。

「その、今日はよろしくね。絶対成功させよう?」

いつの間にか隣に来ていた清水が話しかけてきた。

緊張しているのか、表情が固まってる。

こんなやつでも緊張するのかと、どうでもいい事を思った。

「……まぁ、最後までよろしく」

するとブザーの音が鳴り響き、アナウンスが流れた。


『では、これより1ー2の劇を始めます』


「よし、それじゃあ頑張っていこう!」

メガネ君の、後に皆が「おー」とか「よっしゃあ!」とか各々叫んでいた。

……一瞬、動物園にワープしたのかと思ったよ?


ーーーーーーーーーーーー


結論から言うと、劇は大成功に終わった。

お客さんは手を叩いて喜んでたし、クラスのやつの中からは泣き出すやつも何人かいた。

……俺?俺が泣くと思う?


「あのさ、荒木君。ちょっと話があるんだけどいいかな?」

一人で夕日に向かって黄昏ていた俺は、急に後ろから声がして少し驚いた。

そこに立っていたのは清水だった。

劇が成功して興奮しているのか少し顔が赤い。

「別にいいけど」

「えっと、……私ね…………その」

全くもって何が言いたいのか分からない。

熱でもあるのだろうか?

「…………私、荒木君の事が好きなの……」


……まさか、告白されるとは思わなかった。






なんて、そんなことは思っていない。何となく想像できたことだ。


俺はどっかのラノベの主人公のような鈍感でもなければ、難聴でもない。

こいつの好意には気づいていた。

むしろ気づかない方が可笑しいだろ。

俺は人からの悪意には物凄く敏感だが、好意にも敏感だ。

だから、この告白は予想できた。

思い過ごしであれば、ただの痛い奴だと自分のなかでの黒歴史が増えるだけだったのに。


……もちろん、予想していたことなので返事も決まっている。

女を待たせる趣味はない。




「悪い。清水さんとは付き合えない」




その瞬間、清水の目から涙が零れた。

「…………どう……し……て?」

嗚咽を堪えるように質問してきた。

だが、俺はそこに容赦ない返事を送る。

「俺は女子と付き合う気はない。……もちろん男子とも付き合う気はないからな?そこは誤解しないでくれ」


きちんと釘を刺しておかないと後々俺がホモだと思われるからな。


……断じて、ホモじゃないからな!


「清水さんは南条と話しているときにさ、南条を睨みながら話に割って入ったよね?

そんな他の人の事を考えないような奴とは俺は付き合いたくないし、付き合えない」

そう言い残して俺はそこから立ち去った。


ここだけ見ると、何様だよ?と思うかもしれないが、普通に考えてみてくれ。


友達と話してたら、急に他のやつがその友達のことを睨みながら話に割って入ってくるんだぞ?


もし、そんなことがあったらいい気持ちになるか?俺はならないけど。

まぁ、人それぞれだからな。何とも思わない人もいるだろう。別にそこは否定しない。



だが、俺は気に入らなかった。




ーーーーーーーーーーーー


文化祭があけて、次の週になった。

朝、教室に入るといつもと雰囲気が違う。

何というか、嫌な感じだ。

誰もが俺の方を見ないようにしている。

「おはよう、荒木君」

挨拶をして来たのは清水だった。

その顔はニヤニヤしていてとても気味が悪かった。

「ああ、おはよう」


よく告白して振られた次の学校で挨拶できるもんだと思いながら自分の席に向かうと、俺の机が消えていた。


…………なるほどね。


振られた腹いせに、俺に対していじめを行うと。


清水の、取り巻きは俺を見てクスクスと笑っている。


まぁ、いいさと俺は机をとりに空き教室に向かった。


ーーーーーーーーーーーー


「なぁ、ちょっといいか?」

昼休みになり、給食を食べ終えた俺は本を読んでいた。

そんなところに、あまり話したことのない男子が話しかけてきた。

「何か急用?急用じゃないなら後でいい?今良いところなんだ」

「いいから来い!」

怒鳴られて俺は渋々立ち上がった。




連れてこられたのは、トイレだった。

既に周りには数人の男子が、クラスのやつもいれば他クラスのやつもいる。

中には俺と仲が良かったやつもいた。

「ちょっと最近さ。お前調子乗ってない?」

「別に」

「ほら、そういうところ。だからさ、俺らがちょっと教育しようかなって」

……は?と思ったときには思いっきり水をぶっかけられていた。

「…………何すんだよ。テメェ」

「いや別に、ただ調子乗ってるみたいだから頭を冷やしてもらおうと思ってね?」

……上等だよ。

俺はあまりの言い草に腹が立ち、気づけば殴りかかっていた。

だが、相手は俺よりも数が多い。

あっという間に拘束され、暴行を受けた。






「……いやぁ、ストレス発散されたな」

「また今度、一緒に遊ぼうね!」

そう言い残して、そいつらは立ち去った。


何も出来なかった自分自身が情けなくて涙が出た。



学校で泣いたのは、その時が初めてだった。



ーーーーーーーーーーーー


「ねぇ、拓也。大丈夫?」

大丈夫に見えるのかよ。

俺がいじめられている中、南条だけがいつもと変わらすに話しかけてくれた。

「私は拓也の事、ずっと好きのままだよ?」

こんなことを言ってたら目をつけられるだろ。

こいつはバカか?

しかし、これだけでも俺にとっては救いになっていた。


…………だが、いつまでもこういうわけにはいかない。



俺は教室のど真ん中で大声で叫んだ。

「うるせぇんだよ!お前はただそうやって俺の事を見て内心笑ってるんだろ!もう、話しかけてくんじゃねえ!!!!」

一瞬、クラスが静かになった。


が、直ぐにクラスのやつらは俺の事を見て小声で悪口を言い始めた。

中には「南条さん可哀想」という事が聞こえてきた。


……これでいい。


こうすれば、南条は俺のいじめに巻き込まれなくてすむ。

そうして俺は教室を出た。

後ろからは、「南条さん大丈夫?」と心配する声が聞こえてきた。



こうして俺は、本格的に独りになった。




ーーーーーーーーーーーー


その後もいじめは続いた。

メガネ君も友達も誰も助けてはくれなかった。



俺だって、やっかい事には巻き込まれたくはない。


だが、きっと誰かは助けてくれるとそう、思い込んでいた。


そんなことは、ただの思い込みだとも知らずに。








こうして俺は気づいた。


他人と関わるから、こんなことになるのだと。


他人は信じてはいけないと。



だから、俺は他人を信用しないし、関わりは最低限にしようと決意した。


他人は結局他人でしかなく、自分の事が一番可愛くて、そんなことは当たり前だと知らずに。


そういう意味では俺は、あいつらに感謝している。



こんなくそったれな事を早くに教えてもらってラッキーだったよ。






これが、俺のどうでもいいような過去のお話だ。







……どうだ?楽しめたか?








この過去編は悩みました。

書き終わった今もこれで良かったのか疑問を感じています。

本当にこれで良かったのかと。

すごく悩んで書いたので少し時間がかかりました。

第一部終了まであともう少しかかりますが、よろしくお願いします!

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