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終わり

 

 コツ コツ コツ

 階段を一歩一歩上がっていく

 目の前が開ける───


 私の両手を戒める荒縄を握る騎士が、私を小突いて前を歩けとせっつく


「………」


 私は胸を張って歩き出す

 私は何もじることはしていない

 何一つ


 ふと見れば抜き身の剣を握りしめ、私を睨んでいる男がいる


 なんだ、彼が私の首を切り落とすのか


 憎しみと侮蔑、蔑みに満ちた視線を送ってくる

 私はその視線を鼻で笑い飛ばす

 男は更に憎しみの籠もった視線を寄越すが、無視した。

 

 馬鹿に構っていられるか


「罪状、シンシア・クロウリー公爵令嬢はリリス学園にて私、第2王子の恋人であるレベッカ・ルーズ子爵令嬢に対し度重なる嫌がらせ並びに暴言の数々、全くもって許し難い。よって、ここにシンシア・クロウリー公爵令嬢の処刑を言い渡す!」


 ため息をつきたくなるのは仕方がないことだと思う

 いくら王族とはいえ、代々王妃を輩出してきたクロウリー公爵令嬢たる私を裁く権利はいっさい無く父、クロウリー公爵はこの国の宰相であり、母は先々代国王の妹。そして私の叔母は現国王の王妃。  つまり今、目の前で私の罪状(笑)を読み上げた第2王子と私はれっきとした従兄妹同士だ。


 そして私とこのバ…第2王子は公にこそしてないが、婚約している


 あぁ、ついでに言うと私の両手を抑えている騎士はこの第2王子の学友であり、近衛騎士団長のご次男で名前をルイスという。

 ご長男の方は立派な人なのに、何故、弟であるこの男は第2王子と共にレベッカ様の取り巻きとなったのかが理解出来ない。

 取り巻きといえば他の方々はどうしたのだろう?

 あれ程、私のことを疎みレベッカ様の味方を為さっていたあの方々がいないのはどうしてだろう。


 そういえばレベッカ様の姿が見えないわ。きっと他の方々は彼女の側にいるのね……


「言い残すことはないか、シンシア」


 第2王子………ルーカス様が私を睨み付けながら聞いてきた。ホント、馬鹿ではないか?


「言い残すこと?むしろ私は何故こんな事になっているのか全く理解出来ませんね」

「なんだと、貴様っ…!」


 荒縄を握るルイスの手にも力が入って私の両手はかなり痛いがその痛みを無視した。


「だってそうでしょう、度重なる嫌がらせ?彼女に王族、公爵以上の地位が無い者が使うことを禁止されている特別室の使用を止めた事ですか?それとも理事長、学園長、筆頭魔術師長の許可が無ければ使えないマジックアイテムを“勝手”に使おうとしたことを止めたことですか?」

「特別室と貴重なマジックアイテムの使用も第2王子である私が許可を出した!」


 このバ……もう馬鹿でいいやは何を言っているのだろう。特別室は(例え学生の身とはいえ)政治的密談や取引をするための公的機関である。たかだか試験勉強や、恋人とイチャイチャするための場所では決してない。

 ましてやマジックアイテムの使用の許可?理事長、学園長、筆頭魔術師長の3人で無ければ意味が無いでしょうが!!第2王子あんたに許可が出せる権限ははっきり言って無い!


「それに……あぁ、暴言でしたか?立場の下の者が上の者においそれと声をかけては駄目だと咎めたことですか?まさかと思いますが深夜、女子寮を抜け出して男子寮に侵入しようとしたことを叱り飛ばした事ではありませんよね?ルーカス様、ルイス様」


 背後でビクッと震えた気配がした。

 

 え?マジでそれが理由なの??


「黙れシンシア!私の恋人であり、彼等の友人であるレベッカが声を掛けてきて何が悪い!?深夜にレベッカを呼んだのも私だ!つまりお前は王族の命を受けた者を不当に咎めたのだ!!それすなわち我ら王族に対する反逆である!!!」


 誰かこの第2王子ばか絞めてくれ。


 前半は別に納得出来ませんが言っている意味は分かりますわよ?学園内では生徒同士は平等とうたってますから。でも後半は明らかにマズいでしょう!

 貴族間における女性の名誉を何だと思っていますの!?レベッカ様。女子寮を抜け出そうとしたときも仰天しましたけど、彼女は慎みや貞操感を強く持つべきですわ!!


 馬鹿だ馬鹿だと思っていたがここまでとは。

 陛下、王妃様、申し訳ありません。私ではこのバカは手に負えませんでした。

 期待してくださった王太子殿下、王太子妃殿下そしてお父様、シンシアは相手の頭の悪さを見くびり過ぎていました………そして自身の能力を買い被っていたみたいです。かくなる上はこの身を犠牲にしてこの第2王子くにのがいとその取り巻き共を道ずれに致します。お父様と弟のカイルを、私は天の星となり貴方方を見守っています。


「黙って聞いておれば好き勝手言ってくれる!」


 黙って無いだろう


「もういい!ルイス!!早くその女をここに跪かせろ!レベッカに対して詫びの一言を言うことの出来ない愚か者なぞすぐに首を落としてくれる!!!」

「はっ、分かりました」


 ルイスが無理矢理私を跪かせ、頭を下げてさせた。

 ルーカスが剣を高々と上げた。


「死ね、シンシア!この反逆者が!!!」


 風を切る音が私の耳に響く。


 悔しい、私は罪なんて犯して無いのに罪人として首を落とされるのか。5日後に開かれる私と第2王子の婚約披露宴に大切な友達がはるばる着てくれると手紙が届いていたに。彼女には悪いことをしたわね。立場もあって忙しい人なのに、わざわざ国に掛け合って彼女が国の代表として婚約披露宴に参加してくれると言ってきてくれたのに………第2王子との婚約なんてどうでも良いけど恩ある彼女に何一つ返せなかったわ────


ルーカスの剣がシンシアの首に落とされ掛けた、まさにその時


「そ~は問屋が卸さない。彼女に何してくれてんの?この馬鹿王子」


ガッキィーン


 謳うように弾む軽やかな声とルーカスの剣を止める金属音が、した。


 気付けば私の頭を抑えていたルイスが離れた場所でお腹を抑えて転がっていた


 どうやら蹴り飛ばされたようだ


「な、なんだ貴様は!?」


 ルーカスの裏がえった声に慌てて顔を上げた


「…………………………………」


 思考が、一旦停止した


 そこにいたのは全身黒ずくめの覆面をした見るからに怪しさ漂う不審者だった。


「私が誰かだって?」


 その珍……侵入者はルーカスの剣を自身の剣で弾き飛ばし、腰に手を当てて堂々と言い放った!



「通りすがりの正義の傭兵だ!!」



「「………」」


 この時ばかりは私と第2王子の心は一つになった


 正義の傭兵て、なに?



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