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Fake×Fate -運命を騙せ-  作者: はなぐろ
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3.ヴェロニカ独裁



 入学してから一か月が経った。

 この頃になると、学年全体の雰囲気もだいたい定まってくる。


 男子はギルを頂点とした派閥が完成し、とくに大きな問題もなく比較敵平和な関係を保っている。

 しかしやはり女子は違った。

 完全にヴェロニカの独裁体制になっていた。


 ヴェロニカ独裁までの道のりは、まず入学式の次の日に女子全体に、『上流貴族の御曹司に近付き、あまつさえ色目を使い迷惑をかける輩があれば、ヴェロニカ・カスティーリャの名のもとに制裁を与える』という御布令が下された。

 その御布令の力は凄まじく、出された次の日にはギルや僕に近付く令嬢はほとんどいなくなり、遠巻きに見られるという程度にまでなった。


 しかしそれでも勇気のある子は近づいて来たり、ヴェロニカに直接抗議に行く子までいた。

 そりゃそうだろう。

 なんたって御布令は〝学校の女子全体〟に出された。

 先輩からしてみれば1年の女子が何を調子に乗っているんだ、というもんだろう。


 しかしそこはさすが悪役令嬢。

 近付く者には言葉にするのも躊躇われるほど容赦のない制裁を与え、抗議してきた者にはもう二度と口出しできないほど叩きのめされていた。

 家ごと失う子までいたという始末……。

 女子たちは改めて思い知っただろう。カスティーリャ家の力と、ヴェロニカという女の恐ろしさを。

 もはや女子の中には誰もヴェロニカに逆らう者はいなくなった。

 学校が始まって一週間でこれだ。

 ヴェロニカの手腕といったら、どこの独裁者だと言いたくなった。


 それからは少し落ち着いたが、ヴェロニカ独裁のための足場が着実に固められていった。もはやこの学校に彼女を止められる者は誰もいない。

 いや、いるにはいるが当の本人が、『うざい雌豚が減ったから良し』という調子だからどうしようもない。

 そうして女子たちの上に君臨し、左手を腰にあて、右手の甲を口元において、「オーッホッホッホ」と高らかに笑う姿は悪役女王の名に恥じない姿だった。


 さてヴェロニカ独裁までの歩みはこのあたりにして、これからの対策について少し。

 この一か月、ヴェロニカを見て思った。

 あれは怖い。

 まず逆らうべきじゃない。

 しかし、最終的にヴェロニカは今までの悪事を糾弾され、没落の一途を辿る。

 なので、それまで放っておくことにした。

 弱腰と言うことなかれ。ヴェロニカは僕やギルに対しては全く危害を与えないから大丈夫だと思っての判断だ。それにカスティーリャ家と問題を起こしたくない。

 付き纏ってくるのはこの際たいした問題じゃない。


 ゲームのルイスも多分同じような決断をしたんだろう。

 だから4年生になってもヴェロニカの独裁体制は続いていた。

 それに僕はあくまで〝ルイス〟でいなくちゃいけない。

 可哀そうだからと言って安易にヴェロニカの没落を阻止したり、ヴェロニカに苦しめられている女の子たちを救うようなことはできない。



「ルイス様、ボーとしていらして、どうなさいました?」


 傍にいたヴェロニカの声にはっとする。


「ちょっと考え事をしてて。ごめんね」

「いえいえ、ルイス様は多忙ですもの。致し方ありませんわ」


 はは、と曖昧に笑う。

 今日も今日とてドリルは絶好調だなぁ、とか考えていたなんて口が裂けても言えない。

 何の話をしていたんだっけ。

 そうそう、今日の夜にする寮別親睦会のことだ。


 寮はカレッジを除いて、男女合わせて12棟ある。

 それぞれの棟に1年生から6年生が混在しており、最高学年の寮長が管理しているという仕組みだ。

 それぞれの寮は少し性格が違っていたりするのだが、今は置いとこう。

 今日はその寮別(棟別)で新入生歓迎会があるのだ。


「まったくつまらないことをしますわ。そんなお遊びに付き合わされるなんて」


 そう言うと思ったよ。

 というか参加することに驚きだ。

 先輩たちもかなり気を使うだろうな。南無。


「親睦を深めるのは良いことだよ。将来のためにも繋がりを作れるしね」

「カスティーリャにとってはあってないようなものですわ。そんな小さな繋がりなんて」


 言うねぇ。

 その小さな繋がりが命運を分けたりするもんなんだよ。


「でも先輩たちに迷惑かけたらダメだよ」


 そう言うと、ヴェロニカはむっとした。

 あ、今のはちょっと言い過ぎたかな。

 いつものギルと同じ調子で言ってしまった。


「なぜこの私が彼女たちに気を使わなければいけないのですか。いつも不思議に思っておりましたが、ルイス様はどうしてたかが下級貴族にまで優しく接するのです?貴方が彼らに気を使う必要などどこにもありませんわ」


 そんなだから彼らが調子に乗ってしまうのです、とヴェロニカは捲し立てた。

 どうしてと言われても……特に理由はない。

 人は皆平等だという日本の価値観が残ってるからかな。


「……立場が上だからって気を使わないって言うのは家名を汚すことになるから……かな。礼儀知らずって言われるのは嫌だからね」


 それらしいことを言ってみるけど、なんとも言い訳くさい。

 でも一応は納得してくれたみたいだ。


「……なるほど、さすがルイス様ですわ。そんなに家を大事に思われているなんて」

「褒めるほどのことじゃないよ」

「いいえ、分かりましたわ。ルイス様からの言葉ですもの。善処はしますわ」

「え?」

「ルイス様とお話できてとても楽しかったですわ。では、ごきげんよう」


 聞き返す間もなく、ヴェロニカは行ってしまった。

 善処?

 あのヴェロニカが善処という言葉を使った、だと?


「……明日は槍が降るかな」



 

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