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Fake×Fate -運命を騙せ-  作者: はなぐろ
2/4

2.曇りの日は頭が痛くなる



いつも通りの一日のはずなのに、その日は何か違和感があった。

何かあると言えば入学式だけで……。

なんだろうか。

昨日は魚を食べてないはずなのに、喉の奥に魚の骨がつっかえてる気分だ。

ずっと心の中に正体のつかないもやもやが燻っている。

昨日残しておいたプリンを料理長に食べられたからだろうか。


ローデン・カレッジの門をくぐればさらにその違和感が大きくなった。

――この景色、どっかで見た事ある。

いやいや、入学前から何度か来てるから見た事があって当然だ。

しかしその後も何度か同じようなことが起きた。

名前を呼ばれたとき。

ギルバートの名前を呼んだとき。

令嬢たちに騒がれたとき。

校長のハゲを見たとき。

まるで夢に見た光景をまさに今現実で見ているようだった。

デジャヴというやつだ。

そして、ついに決定的な瞬間が訪れた。


「ごきげんよう、ギルバート様、ルイス様」


――あ。

特徴的すぎるドリルのような巻き髪、人形のように綺麗だが、キツイ印象を与える鋭い瞳、そして自信に満ち溢れた存在感。

まだ幼さの残るその少女――もっと詳しく言えばドリル――を見た瞬間。

何度も会っているはずなのに、その日は全くの別の人物として映った。

――ヴェロニカ・カスティーリャだ。

カスティーリャ家のヴェロニカ嬢ではなく、『ロイヤル・トロイメント』という乙女ゲーに登場する悪役令嬢、ヴェロニカ・カスティーリャとして自分の目に映ったのだ。


認識してしまえば、ドミノ倒しのように次々と色んなことを思い出した。

前世のこと、最期のこと、そしてこの世界が乙女ゲーム『ロイヤル・トロイント』の中だということ。

なるほど。違和感の正体はこれだったのか。

妙に納得した。


衝撃を受けている間にヴェロニカは満足したのか、ドリルと共に……じゃない取り巻きと共に去って行った。

さすがドリル。全てを思い出させるほどの魔力を持っていたとは。

あの形状維持のすごさから、只者ではないと常々思っていたんだ。



『ロイヤル・トロイメント~王子たちとの夢の花園~』

通称ロイトロ。


近代のヨーロッパをイメージした世界観に、長い歴史を持ち、いわゆる国の金持ち達はもちろん、国の王子も通うほどの超名門マンモス校ローデン・カレッジが舞台の乙女ゲーである。

物語は主人公がこの学校に転校してくるところから始まり、6人の金持ちイケメン達と恋に落ちるシンデレラストーリーという在り来たりな設定なのだが……一大ブームになるほど人気を博した。


が!


その中での自分の立ち位置を思い出すと頭が痛くなった。

自分の名前、「ルイス・シェパード」

なんと6人の攻略キャラのうちの一人なのだ。

メインヒーロー「ギルバート・エイブラム」の幼馴染であり、プレイヤーからの人気もギルバートと二分するほどだった。

なんという……。微妙な気分だ。


それに、ギルはあのギルバートなんだよなぁ。

うっわぁ、すっごい違和感。

ゲームの中のギルバートといえば、クールで容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群、エイブラム家始まって以来の天才児とまで言われていた。

まさに王様という貫禄は、現在本人を前にしてみると見る影もない。

確かに、カッコいいし、頭もいいし、運動神経もいいけど、それら全てを台無しにするくらいアホだバカだ。

俺様何様ギルバート様を地でいくような奴だ。

残念と言わずして何と言えばいいのか。


さすがに人前では大人しくして、皆が憧れる〝ギルバート・エイブラム〟を演じているけど、気を緩めるとすぐに地が出てくる。

主人公が出てくるまでに治るのかな……。

いや、それよりも自分はもっと大きな問題を抱えてるじゃないか。



心配するギルバートになんとか誤魔化を入れて歩き出す。

周りを改めて見てみると、ゲームの絵で見たような光景が何か所かあった。

本当に、ここはゲームの世界なんだと実感した。


寮に戻って制服を着替える。

寮は上流階級の生徒ほど大きな一人部屋を与えられる。

そこそこ上流階級の家である僕も例外じゃない。

たかだか学生一人に広すぎると思うが、この部屋には専用のバスルームとキッチンが付いている。

一番心配していたことがお風呂だから、ある意味そこは良かった。

小さい部屋だとバスルームが付いていないから、公衆のシャワールームへ行かないといけないのだ。


シャツを脱ぐと、おおよそ普通の男子ならつけないようなものが胸を覆っている。

白く細長い布。

日本で言うところのさらしのようなもの。

何のために付けているのかと言うと……膨らみを抑えるためのもので。

はあ、と思わず溜め息が出る。

さっさと部屋着に着替えて、制服を片付ける。


自分の意志に反して、どんどん身体は成長する。

体格差もどんどん出てくる。

声はなんとか鍛えてそれなりに低くできるようになったけど、いつまでも騙せるものじゃない。


まさか、プレイヤーなら夢にも思わないだろう。

あのルイス・シェパードが……女だなんて。


今のは少し語弊があるな。

もう少し付け加えると、ゲームのルイス・シェパードは正真正銘の男だった。……多分。

彼が半裸のシーンがあったけど、ちゃんと引き締まった筋肉でできていたはずだ。

そしてこの世界にも、その本物(・・)のルイス・シェパードは存在していた。



コンコン


「ルイスー俺様が来てやったぜ!」


返事も待たないうちに、ギルが部屋に入ってきた。

さんざん返事を待てって言っているのに、一向に聞く気がないな……。

でも今日のところは、おいしそうなスープに免じて何も言わないでやろう。


「どうだ?おいしいだろ!」

「うん、おいしい」

「だろー!さすが俺!将来は料理長になるのもいいかもな」

「うんうん、いいかもねー」


スープを飲みながら話を聞き流す。

ほっこりするおいしさだ。

ギルは貴族なのに料理もする。しかも驚くことにおいしい。

一人暮らしとなれば普通なのだが、貴族の坊ちゃんやお嬢様はだいたいメイドを数人連れて来る。家事をやってもらうためだ。

でもギルは誰も連れて来てない。

なんでも、『居たって邪魔だろ』とのこと。

どうなんだろうそれ……。

僕も連れてきてないけど、週に一度は来てもらって掃除を手伝ってもらってる。

最初は断ったけど、『ルイス様はゴミ山に住みたいのですか?』と真顔で言われては、何も言い返せなかった。


「元気出たか?」


飲み終えると、ギルが伺うように聞いてきた。

どうやらかなり心配をかけたみたいだ。

確かに今日の僕は、かなり僕らしくなかった。

このくらいで動揺するなんて。


「おかげさまで。ありがとうギル」


ギルは満足そうに頷いた。

そう、ルイス・シェパードではこのくらいでは動じない人間だ。

記憶の中のルイスを掘り起こす。

攻略キャラの中でも、一番優しく紳士的だが、すぐに懐の中にいれることはなく、自分の弱みをなかなか見せない。そして常に周りをよく見ていて、周囲との調整役でもあった。

成長した姿がそれなら、僕もそうならなければ。

これはいい見本が出来たかもしれない。しかもご本家様だ。


しっかし、これから色々考えないとなぁ。

とくにこれから台風の目になるであろう、あの縦ロールについて。


 

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