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Fake×Fate -運命を騙せ-  作者: はなぐろ
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1.ルイスとドリルの遭遇




『あなたは今日からルイスよ』



その言葉が僕の最初の記憶だ。

まるで呪いのように今なお着実に自分の心を蝕み続けている。





ーーーーーーーーー

ーーーーー

ーー




「きゃー!!!ギルバート様とルイス様よ!!」

「なんて素敵なの!今日から毎日拝めるなんて死んじゃいそう!!」

「ああ美しさが留まることを知らない!!!」

「きゃあ、目が合っちゃった!!」


あー、うざってぇ。

キャーキャー猿みたいに喚く雌豚にいい加減嫌気が差しながらも表面上は平静を繕う。

うん、さすが俺様、完璧だ。


隣のルイスもさすが俺の相方なだけはあって、まったく笑顔を崩さない。

この雌豚どもはうざいが、それなりに金も力もある家の令嬢サマだ。

粗相があってはいくらこのギルバート・エイブラムでも面倒だ。

面倒事はなるべく少ない方がいい。

……そう、この幼馴染にしこたま教え込まされた。

昔はバラの棘のように尖ってた俺様が丸くなったもんだぜ。


「ギル、顔だらしない」


おっと、俺としたことが。

ま、入学したばっかなんだし大目にみてくれよ。

思ったことが伝わったのか、ルイスはニコリと先ほどよりも笑みを深くした。

これは俺が『悪魔の微笑』と呼んでいる。

こうなればいくら俺様でも言うことを聞くほか手段は完全に断たれる。

きゅっと顔を引き締める。

ただでさえカッコいい俺の顔がさらにカッコよくなったことで、周りの歓声がさらに上がった。



今日はこのローデン・カレッジの入学式だ。

13歳から18歳の男女が入れるこの学校は国一番の長い歴史を持ち、選ばれた者しかその門をくぐることを許されない。

選ばれた者……簡単に言えば金持ち、もしくは学者並みに頭の良い奴だ。

天才の俺はどっちも兼ね備えてるがな!はっはっは!!敬うがいい!!

ルイスに睨まれたから冗談はさておき。まったく、冗談の通じねー奴だぜ。


だってよーこういう式典ほどつまらないもんは、世の中にはなかなかないもんだぜ?

校長はハゲてるし。あの輝きは国宝級だが、しかし、つまらないのだ。

だから俺はこの学校のシステムについて今一度復習する。そこに特に理由はないが、復習をする俺マジ優等生。


この学校のシステムは少し風変わりだ。

まず『ヴェゼット』と呼ばれる特別な組織がある。

それは高学年の生徒から、血筋・家柄・財力・成績などの条件を揃えた8人が選ばれる。

ヴェゼットにいることは、すなわち全生徒からの憧れでもある。

いずれ俺とルイスもその席に座ることになるだろう。

なにせ、俺様の家は国一番の貴族だからな。ルイスの家は代々、エイブラム家の補助する役割を担っているが、それでも国が誇る貴族一家だ。


ちなみにローデン・カレッジは全寮制なのだが、このヴェゼットはカレッジと呼ばれる学校の中心部分に住むことができ、また専用の食堂もある。他の奴らは学校の棟から少し離れた場所にある寮に住んでる。俺とルイスも高学年になるまではこの寮に住むことになる。

他にも生徒会は着る制服が少し違ったり、4年生になれば外部奨学生が入ってきたりする。

他に何かあったかな…というところで俺様の出番がやってきた。

そう、入学式の目玉と言えばこれ。新入生代表の挨拶!

カッコよく決めて来るぜ!とルイスに目配せしたが華麗に無視された。

しかしそんなことでは俺様のガラスのハートは傷つかないんだぜ。



「この後どうするんだ?」


入学式が終わり、人もばらばらと散らばり始める。

この後の予定をルイスに尋ねると、ルイスは少し逡巡する素振りを見せた。


「……寮に帰るよ。部屋の片づけもまだ済んでないしね」

「いいのか?」


両親に会わなくていいのか?という意味合いを込めて尋ねると、ルイスは苦笑した。

昔からこいつは家族との折り合いが悪いらしい。


「ギルは行ってきたら?」

「俺はもう別れの挨拶は済ませてきた」

「今生の別れみたいに言うね」


用はないということで二人で寮に向かっていると、前の方から見知った顔とその取り巻きが出てきて、思わずゲッと顔をしかめそうになる。

くるくるとドリルみたいな巻髪に黄金のごとく輝く金髪。人形のように整った顔は確かに綺麗だが、しかしその眼は欲に塗れ、獲物を狙う野獣のごとく鋭い輝きを放っている。

ヴェロニカ・カスティーリャ。

エイブラム家とも並び称されるカスティーリャ家の長女だ。

舞踏会やら夜会で会う度、しつこく付きまとってくる雌豚の筆頭のような女だ。

しかしかのカスティーリャとあれば、簡単に突き放すことも出来ない。


「ごきげんよう、ギルバート様、ルイス様」

「ああ」

「……こんにちは」


ん?と少し違和感を覚える。

いつもは誰に対しても愛想よく振舞うルイスの歯切れが悪い。

見てみると顔色もあまり良くない。ただ一点だけを見つめて固まっている。

視線の先にあるのは凶器のようにとぐろを巻くドリル。

ドリルか?ドリルに何かあったのか?


「これから毎日お二人に会えると思うととても胸が弾みますわ。今日をどれほど待ち望んでいたか……。私共はお二人がより良い学園生活を送れるように精一杯尽力いたします」

「あ、ああ……」


ドリルが何か喋っているが俺はむしろルイスのことが気になって全く頭に入ってこない。

未だにドリルを見つめたまま固まるルイス。

何をドリルと通じ合っているんだお前は。

早くこっちの世界に戻ってこい!


「……よろしくお願いします。では失礼しますわ」


ようやく満足したのか、ドリル達は女子寮の方へ帰って行った。

ほっと息をつき、ルイスの方を振り返る。


「何があった。ドリルと何があった」

「……さすがドリルの魔力は伊達じゃないって思ったよ」

「戦ってたのか」

「かなり厳しい戦いだったよ」


そうじゃない。

俺はこんな話をしたいんじゃない。


「どうした?顔色悪いぞ」

「ちょっと……いろいろと思い出して。でも、もう大丈夫だから」

「そうか?」


歩き出したルイスは周りをぐるりと見回した。

まるで確かめているみたいな動作だ。

ルイスには珍しい不可解な行動に疑問符が浮かぶ。


ルイス・シェパード。

幼い頃から家同士仲が良く、年齢が近いこともあって一緒に遊ぶことが多かった。

月光のような淡い金色 (光の当たり方によっては銀色)の髪に、異様な程綺麗な顔の男だ。

シェパード家はエイブラム家の護衛の役も担っており、必然、ルイスも体術を心得ている。

だからいつでも俺を守れるように、ルイスは両手には皮手袋、頑丈なブーツに、制服の上からでは見えないが服の下にも色々仕込んでいるらしい。

身体も俺よりも小柄なくせに、俺よりも圧倒的な力を持っている。

この前東の国でやるというウデズモウとやらをやったんだが、秒もつかないうちに負けた。負けたのだ。

一体どこにあんな力があるんだ。


寮について、俺とルイスは部屋の前で別れる。

部屋は隣同士、そして一人部屋だ。


「ゆっくり休めよ」

「もう大丈夫だって」


ルイスはケラケラと笑った。

確かにもう大丈夫そうだ。


でも念には念を入れて、あとで俺様特製スープを届けてやろう。



 

※学校の設定はとある有名校を参考にしました。

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