にわかあめ
生き物は嫌いだからってジェーフィクくんとフェフィークさんを見て言ってむーちゃんはすぐに帰っちゃった。
あとでむーちゃんの家にお菓子を持って謝罪と感謝しに行こう、むーちゃんは捻くれてるけど心はやっぱり優しい。
むーちゃんと友達で良かったです、ちょっと怖いけどもっと仲良くなりたいです。
あ……お菓子よりもトカゲの黒焼きが良いのかな?
トカゲの黒焼きってドラゴンじゃなきゃダメなのかな、その辺にいるちっこいトカゲじゃダメなのかな。
ちっこいトカゲでもなんか大丈夫な気がする、ちっこいトカゲも食べそう。
むしろ爬虫類なら黒焼きにしてあれば何でも食べそうな気がする。
「あのねフレアマリーさん、彩萌は魔人の国に行かないといけないみたいなんです」
「魔人の国、か……。なんかよくわかんねーけど、お前を魔人の国に連れてくのはすげぇ嫌だな」
フレアマリーさんはすごいしかめっ面してそう言った。
穢れなら彩萌けっこう大丈夫だよ、って言ったらそういう問題じゃなくて精神的な問題らしい。
フレアマリーさんいわく考えただけでもすごいムカムカして暴れたくなる、らしい。
「でも、彩萌は神様を輪廻に戻して世界の歪みを直さなきゃいけないみたいなんです」
「……世界の歪みを戻したら、お前はどうなる?」
「えー、分かんないけど並行世界の彩萌は消えちゃうらしい?」
「……それはダメ、すごい良くない、絶対良くねぇ! それってつまりあれだろ、並行世界ではちゃんとリセットされないってことだろ、それじゃあ意味無いんだよ!」
「もっと歪んじまうだろ!」ってフレアマリーさんがなんか、錯乱したみたいな感じで叫んでた。
ど……どうしたんだろう、というかなんでフレアマリーさんがリセットされた世界だって知ってるんだろう?
なんかすごいフレアマリーさん混乱したみたいな感じで、あっちをうろうろこっちをうろうろしながらダメだダメだって呟きながらみつあみ引っぱってた。
「ダメだ、兄貴を元に戻しても足りない……、もう一人、もう一人居るんだろ!?」
「えっ、何がですか……?」
「リセットした奴がだよ! 所詮人間の癖に傲慢にも世界を作り替えようとした馬鹿が居るだろ!? 分かったふりして、分かったふりしてそれで世界の歪みが直るとか言うなよ! 直さないでくれよ、お願いだから直すなんて言わないでくれよ、人間の枠はいっぱいいっぱいなんだよ」
「お前が入る隙間が無くなっちまうだろ」ってフレアマリーさんが泣いてるけど、彩萌にはよく分からないです……。
なんか彩萌はフレアマリーさんのトラウマを刺激しちゃったんでしょうか。
泣きじゃくるフレアマリーさんなんて、初めて見た。
「フレアマリーさん、大丈夫だよ……よく分かんないけど、なんか大丈夫な気がする」
「お前の大丈夫は当てにならないんだよ、大丈夫って言って大丈夫だった時があるのか、無いだろ。大丈夫だからって言ったのに死んだじゃねーか」
「でも、今回は絶対に大丈夫だと思う! なんか、よく分かんないけど大丈夫、彩萌は神を信じてるから」
「またそんなこと言って消えるのか、寂しいからとか悲しいからとか言って死ぬのか、自己中心的過ぎるんだよ馬鹿野郎」
フレアマリーさんはしゃがみ込んで泣きだしちゃった、なんか……ごめんなさい。
ジェーフィクくんは気を失う感じで寝てるから何ともないけど、フェフィークさんは困ってる。
どうしたら良いのかな……、彩萌すごい困ってる。
「……悠久より遥か穢れた偽りの神が返る時、我の消滅でもありウェルサーの消滅でもある、って言ってたじゃないか」
「あれ? テスさんも来てたの?」
いつものように黄色いドレス着てるテスさんが入口のとこに立ってた。
そんなテスさんの言葉に「思い出せない……」ってフレアマリーさんが呟いてた。
「我の消滅とは真の意味での改革であり、ウェルサーの消滅とは復活でもある、って神は言ったんだ。私はよく覚えてるよ」
「えっ、テスさんはなんか……リセット前の記憶があるの?」
「無いとも言えるし、有るとも言える。私が覚えてるのは、最期だけ……きっとマリーが覚えてたのは怒り」
「グランは悲しみ、ルニャは後悔、ユースは寂しさ、フェクは楽しさ、ディーテは愛情」とテスさんは呟きながらフレアマリーさんの背中をなでなでしてた。
でも神って誰? なんか、神様じゃなさそう……。
なんか……よく分かんないけど、彩萌が悪いのかな……。なんか、ごめんなさい……。
フレアマリーさんごめん……。
「予定調和だよ、マリー。最初からこうなる事を分かってて、お願いしたんだ。歪みを戻してもウェルサーは消えない、だから彩萌も消えない」
「なんか……よく分かんないけど、フレアマリーさん今回は大丈夫だよ!」
なんかよく分かんないけど、今回は自信が有りますからね。
なんとなく大丈夫な気がします、神様を輪廻に帰して彩萌もクレメニスに帰れる自信です。
「元の色に戻ったら、オレンジの飴を食べながらフレアマリーさんの武勇伝が聞きたいです、その時はテスさんも一緒ですよ」
「そうだよマリー、その時はついでにディーテを一発殴れば良いじゃないか」
「……そうだな、アイツのことはそこそこ尊敬してるけど……一発くらいぶん殴ってやりたいわ」
えっ……なんでディーテさんを殴る話になってるの?
というかディーテさん他の精霊さんたちからちょっと嫌われてない? なんで?
ユースくんとふぇっくんには懐かれてるみたいだけどさ……、なんでだろう。
リセットされる前は精霊じゃなかったから……?
彩萌が心配そうに見てれば、フレアマリーさんが笑ってくれた。
「精霊なんだから殴っても死なないから大丈夫だ、問題ねーよ」
「そう、問題は無い。ディーテが嫌われるのはやはり、彩萌を独り占めしたからだ。今は一回も会って無いと聞いて、ざまあみろって内心思ってたよ」
「心配かけて悪かったな、ちょっと感情がぐちゃぐちゃになった」
「でももう大丈夫」って笑ったフレアマリーさんは、なんかちょっとだけ人が変わったみたい。
なんかもっと……ちょっと前まではぎすぎすって言うか、ギラギラしてたけど今はちょっと丸くなった感じ?
ひなたぼっこに最適な感じの雰囲気になった感じ、なんか……良かった。
まあテスさんとフレアマリーさんの会話はまったくわけ分からんだったですけどね!
あと魔人の国には連れてってくれるみたい、というかテスさんは迎えに来たんだって。
彩萌は辛いなら来なくても大丈夫ですよってフレアマリーさんに言ったけど、心配だからついて来てくれるって。
フレアマリーさんありがとう、あとごめんね。
――アヤメちゃんの魔法日記、九十七頁




