輪廻した世界
りっちゃんの髪は相変わらずさらさら、澱みの海の真っ黒な穢れに溶けこんでます。
服装も真っ黒だから、青白い肌がちょっと目立つね。
そんでもって黒目が怪しい感じで赤いから、なんか悪役みたいだね。
パッと見たらラスボスかもって思ってもおかしくないよね。
そういえば昔、隠しボスが超強いーってお姉ちゃんがイヤ―ってヒステリックになってたけど隠しボスは誰かな?
あ、ディーテさんが魔王なんだから普通だったら神が隠しボスだよね!
だって神のほうが偉いもんね!
じゃありっちゃんは隠しボスだね、ラスボスはディーテさん?
または神様がラスボス?
「なんだよ、ラスボスについて話しに来たのかよ? 違うだろ、祟りと邪神族と神様についてだろ?」
でもりっちゃんすごい、悪役っぽい見た目してる
「髪は一番穢れを吸うんだよ、汚れた環境に行くなら髪は伸ばしておいた方が良いんだよ」
それってりっちゃん必要なの? 神なのに?
そう思えばりっちゃんは難しい顔してた。なんか悩んでるみたい。
「正確に言えば俺は神じゃないから、冒涜者……かな?」
ぼうとく? 神じゃなかったの?
「おまえが神様だって思ってた、いやあいつが神だって名乗ったのかもしれないけど……アイツだって神じゃない、俺と同じだ」
そっかー……神様じゃなかったんだ。
でも神様じゃないのに、どうしてこんなところに居るの?
それにどうやってそんなに長生きしてるの? だって精霊さんとか作ったんでしょ?
始まりより昔が本当にあったの?
……じゃあ、本当にウェルサーは居たの?
疑問がいっぱいあってどれから聞けばいいのか、分かんない。
「神を偽って、時間を操って、世界を潰して、構築して、穢して、浄化する。作り直してんだよ全部、穢れて消えるはずだった世界を全部リセットしてんだよ」
リセット……? えーっと、ちょっとむずかしくてよく分かんない……
「そういう魔法なんだ、全てをリセットする魔法。……まあ俺が予想してたより並行世界が多すぎて、幾つリセットしたのか覚えてねぇけど」
「ボタン一つでリセット出来る様な世界じゃなかったんだ」ってりっちゃんはなんかちょっと後悔したような顔で呟いてた。
そういえば神様も、並行世界では失敗しそうになったとかいろいろ言ってた気がする。
失敗したって言うのは、リセットしたけど望む世界にならなかったってこと?
それともリセットしたのにやっぱり穢れの所為で世界そのものが消えちゃったのかな?
成功したこともあったみたいな言い方してたから、消えなかった世界と消えちゃった世界があるのかな……?
「俺がそのシステムを作って、動力になった。そのシステムを管理する存在が必要だった」
それが神様なの?
「そう、……あとあいつは神じゃなくて、魔法が使える叶山彩萌だから」
……うん? えっ? 彩萌なの?
えー、だって……神様彩萌より大きかったのに!?
えぇ!? 彩萌って二人居たの!?
「リーディア・マクレンシア・ドルガーだって二人居るだろ」
えっ……じゃありっちゃんも山吹君なの?
「いや……俺は正真正銘のリーディア・マクレンシア・ドルガー、幻想世界には現実世界の人間にそっくりな存在が居ただろ? 俺はリセット後の世界には存在しない幻想世界の山吹陸斗だよ。ちなみに魔法が使える叶山彩萌が原物で、お前はリセットした所為で歪みを生じた世界が元に戻ろうとして産み出した複製なんだよ」
やばい、どうしよう。
りっちゃんが頑張って説明してくれてるけど、けっこう理解できてない……。
とりあえず彩萌がクローン人間的な何かだっていうのは分かった、でも彩萌は彩萌でしょ?だって彩萌は彩萌で生きてきたんだから、彩萌でしょ。
彩萌以外として生きてたなら彩萌じゃないかもしれないけど、彩萌で生きてたから彩萌だよね。でも欲を言うなら、彩萌も魔女っ娘にしてほしかったなって思う……。
「だから俺達は神じゃない、……だから何時か、苦しんでのた打ち回ってから俺も死ぬんだよ」
なんか……かわいそう
「自業自得なんだよ、素直に消える世界と共に消滅しなかったから悪いんだよ」
でも死ぬのは普通怖いし……、他に生きられる道があるって分かったらそっち行っちゃうよね。
生きるって苦しいのかなぁ……なんかよく分かんないけど、世知辛いね。
神様とりっちゃんのことはなんとなーく分かった。
なんとなーく事情は分かったけど、なんで彩萌に今話したの?
「あいつが穢れで死にそうなんだよ、このまま死んだら消滅するかもしれない。輪廻に戻してやりたいって思うんだけど、でも輪廻に戻すと並行世界の魔法が使えない叶山彩萌が消滅すると思う」
よく分かんないけど、彩萌が死なないんなら別に並行世界なんてどうでも良い
「……お前、優しいんだか優しくないんだかよくわかんねぇ性格してるよな」
え? だって魔法が使えない彩萌は消滅しちゃうけど、そのかわりに魔法が使える彩萌が歪んじゃった世界に戻って来るって話でしょ?
結果的に彩萌は消えてないじゃん、どっちも彩萌じゃん。
魔法が使える彩萌が戻ってくれば、世界の歪みがちょっと良くなるんじゃないの?
痛くなくて怖くない方法で消滅するなら、別に良いんじゃないかな。
どうせ生まれる前にかわるんでしょ?
「そうだけど……良いのかよ、もしかしたらこの世界の現実世界にも、魔法が使える彩萌が最初から存在してたかの様に現れるかもしれないんだぜ?」
でも、彩萌は現実世界に帰れないんだから確かめるすべないじゃん
「……お前、意外と冷めてるんだな」
だって彩萌の心は厳しい社会の荒波に揉まれて冷え冷えなんですよ、悲しい現実ですよ。でも意外と秘めたる熱い心を持つすてきなレディーなんで良いんです。
まあ、でも彩萌のかわりが現れたらちょっぴりさびしいけどね。
だって神様はずっと頑張ってたんでしょ、世界が穢れないようにずーっと頑張ってたんでしょ? じゃあ彩萌の現実世界での立場を取られても良いです、彩萌には山吹君がいるんで……譲ってあげます
「本当に良いのかよ?」
本当は良くないけど、良いってことにしておけばすべてが円満に解決するみたいだから良いです
悲しいけど、りっちゃんじゃないほうの山吹君に責任取ってもらうから良いです。
それにきっと、お姉ちゃんとかお母さんとかお父さんもその方が寂しくないと思う。
彩萌がちょっと悲しいって気分を我慢すれば、平和的解決ですよね。
消えちゃったり、怖がられたり、寂しいのはもっともっと悲しいから彩萌はそれでいいと思う。神様も幸せになれると良いなって思う、彩萌も幸せになれたらいいなって思う。
責任は山吹君に取ってもらえば、万事解決! 責任転換ですよ!
……神様のことは分かったけど、邪神族と祟りのことはどうしよう?
神様が動けない状態なら、なんか無理っぽくない……?
――アヤメちゃんの魔法日記、九十四頁




