暗い夜に落ちても
とりあえず、魔女っ娘スティックを当てれば少しは良くなるかな?
苦しそうなドラゴンさんに近づいてみます、うん、小さいけど彩萌より大きい。
彩萌が近づけばドラゴンさんは顔を上げます。
「……にんげんなんて、ねこなんて、よわいからきらいだ……あっちいけ」
「あう、彩萌拒絶されてます」
「ジェーフィク、リィシェアはお前の為に来てくれたんだぞ! なんて言い方をするんだ!」
「そうだそうだ、彩萌に失礼だろ! こんなクソドラゴン焼いて食っちまおうぜ!」
「いや、フレアマリーさんさすがにそれはちょっと……」
フレアマリーさん悪乗りが過ぎますよ。
みんなに怒られたことに腹を立てたのか、ジェーフィクくん? はなんか火を吐きながら威嚇してます。
まあ火はちょっとだけなので彩萌たちは平気ですよ、たぶん本当に威嚇行動なんだと思います。
ごぉるるるるって感じで威嚇してる。
体調良くないから、不安なのかな?
「おまえみたいな、……おまえみたいなディルーアナナンにたたられたんだ! リィシェアなんて、リィシェアなんてしんじられない!」
「でも彩萌は何もしてないし……」
「そもそもお前が結界が緩んだ魔人の国に入るのが悪いだろ、自業自得なんだよ死ね」
「だからフレアマリーさん言葉がとげとげし過ぎです!」
「じゃあ、俺らの人畜無害で馬鹿で善良な彩萌が祟る訳無いだろ! そもそもこいつは魔法が使えない無能ちゃんなんだぞ! それにこいつは幻想世界で生きていくには可哀想な奴なんだぞ、ゲームで例えるなら始めから使える回復魔法掛けられただけで死ぬ可能性が微量ながらあるんだぞ!」
「……そうだね、彩萌超かわいそうだと思う」
「回復魔法なのに即死効果付きとかウケる」ってフレアマリーさんげらげら笑ってた。
でもやっぱり彩萌は笑えないかな、魔法こえぇ……。
ジェーフィクくんにちょっとだけ同情されたみたいで、憐れむような目で見られた。
ゲームは分からなかったみたいだけど、とりあえず簡単な魔法をかけられただけで死んでしまうかもしれないひ弱な生き物だということは分かったみたいです。
「なんか、ごめん……」ってあやまられた。
そのあやまりかたってなんかダメージあたえるって、知ってました?
「えーっと……じゃあ、この魔女っ……杖の先っぽ頭とかどっかに当てても良いですか?」
「……いいけど、いたくない?」
「超痛いぜ、もう痛すぎて泣くわー超泣くわー、俺なんか死ぬかと思って絶叫したわ」
「痛くないですよ! 全然痛くないですよ!」
フレアマリーさんの発言の所為で、ジェーフィクくんが怯えてるじゃないですか!
注射されるのを嫌がるお子様みたいになってるじゃないですか!
お願いしますからフレアマリーさん悪乗りしないでください。
「やだー、いたいのやだー」って泣いてるジェーフィクくんをフェフィークさんが押さえて、ようやく魔女っ子スティックを当てるのに成功した。
やっぱり魔女っ娘スティックはホッカホカになった。
「ほら、痛くなかったでしょ? あの人の言うことは嘘ばっかりなんですよ、ニヤニヤしながら言ってる時とか真面目そうに長々と語ってる時はだいたい嘘か意地悪なんです、だから信じちゃダメですよ!」
「……じゃあリィシェアは、かいふくまほうでしぬのはうそなの?」
「それは……、たぶん嘘じゃないですけど意地悪で言っただけですから気にしない方が良いですよ」
ジェーフィクくんに体調のことを聞いたら、ちょっと良くなったらしい。
そっかーちょっと良くなったか……、うーん……やっぱり祟りのことは神様か邪神族さんに直談判するしかない?
でもフレアマリーさん居るから、あっちの神様に祈っちゃダメだし……。
存在がばれたら山吹君が危ないらしいし……彩萌はどうしたら良いのかな。
そういえば、夢とかで会ってた時は彩萌ってケット・シーじゃないよね。
それってあれだよね、きっとあれだよね。
幽体離脱的な感じで会ってるのかな!?
じゃあ、じゃあ彩萌が幽体離脱すれば、またあそこに行けるのかな……?
幽体離脱ってどうやってするのかな、やっぱり気絶かな……。
やっぱり……気絶かな……。
「……なに杖じーっと見て考えてんの? 打開策でも思いつきそうか?」
「フレアマリーさん……、彩萌が死んじゃったらまた生き返らせられますか……」
「ルニャ呼べば完璧に生き返らせられるぜ、まあお前の体質を考えると成功しない可能性もあるけどな」
あ……当たって砕けるしかないのか!?
山吹君のことを考えたら彩萌が当たって砕けるしかないのか!?
あ、もちろんジェフィークくんを見捨てるって選択肢は無いです!
フレアマリーさんもどうにかしないといけないと思いますし。
彩萌がうーんって悩んでると、お告げがあったんです。
「何の為に額の石を取り除かなかったと思ってるんだよ」ってあっちの神様の声が聞こえた。
誰も反応してなかったから、たぶん彩萌だけに聞こえたんだろうね。
額の石……? 額の石……と魔女っ娘スティックの黒い石かな?
くっ付けたりすればいいのかな?
「フレアマリーさん……、何かあったらお願いしますね! かっこよくて強くてすてきなフレアマリーさんだけが頼りです」
「分かった、あとその露骨なお世辞俺は嫌いじゃねぇよ?」
ちょっとどきどきする、だって彩萌魔法に弱いから死んじゃったりするかもしれないんだよ。
フレアマリーさんも言ってたし、よけいにどきどきする……。
額の石と魔女っ娘スティックの黒い石をくっつけたら、かちんって音がした。
そうしたら、なんかすごい体が痛かった。
すっごく体が痛いけど、体は動かなくってなんか倒れるのが分かった。
目の前が真っ黒になるって、こういうことを言うのかな? って感じです。
なんかもこもこしたのと、人の腕に支えられたみたい。
フレアマリーさんとしーちゃんかな?
なんかじわじわと誰かに支えられてるって感覚がなくなって行くんです、ちょっと……、いやけっこう怖かったです。
なんかよく分かんないけど足とか、腕とかの感覚がなくなって自分が消えて行くみたいな感覚?
……彩萌死んだ? って思ってたらゆっくりと落ちていく感覚に変わっていました。
水の中に居るみたいで、苦しい。
苦しいけど此処に居ると眠くなってくる、助けなくっちゃって思ってたけどどうでも良くなる。
溶けるってこんな感じなのかなぁ、って思ってれば腕を引っぱられてなんか意識が引っぱられました。
目が覚めたみたいにハッとした。
「意識まで落とすなよ、探すのはかなり面倒だからな」
……んー、突然だけどもしかしてりっちゃんがウェルサーだったりするの?
「――……それは違う、ウェルサーは俺じゃない、どっちかと言えば……お前らが一番ウェルサーに近いよ。つーかあれは少女の精霊だし」
……お前ら? お前らってどういう意味かな?
まあ良いや、彩萌はりっちゃんに聞きたいこととかいろいろあってここに来たんだよ。
世間話をしに来たわけじゃないんですよ。
ジェーフィクくんとかフレアマリーさんを助けなきゃ。
フレアマリーさん事態にはあんまりなんか影響はなさそうだけど、他に影響与えちゃうかもしれないし。
それに……神様のことも気になるから。
邪神族さんが関係してるなら、もしかしたら神様も関係してるよね。
神様を心配してあげられるのは、彩萌だけですからね!
それに一応結婚したしね、……そういう噂だけどね。
――アヤメちゃんの魔法日記、九十三頁




