古の魔法
というか気になるとじーっと見ちゃう、耳が動くたびにぴょこぴょこしてる。
……あれ、というか司書のお兄さん彩萌が耳に注目してることに気付いてる?
なんかわざとぴょこぴょこしてない?
にこにこ笑いながら何にも言わないってことは気付いてるでしょ!
説明開始してよー、お願いしますー。
「まあもったいつけたけど、そんな長い説明ないよー。世界図書館はリィドディッガスビアの代わりであり、友好の証であり、戦争の象徴」
「それだけ?」
「まあ簡単に言うとね、……大事な知識と魔法を明媚な国に、大事な宝石と種族を勇猛な国に、大事な希望と教えを始りの地に、って言う事でミアーティスに世界図書館を建て、ヴァージハルトに魔人の国の秘宝を譲って、クレメニスに聖女の遺体と宗教を渡して、人間に管理させることで戦争を終結させたらしいよ」
それで終わるの? って聞いたら、もう既に魔人族はボロボロだったからーだそうです。
なんだかそれを聞いてると、魔人の国はすごい大きかったのかなぁって思います。
「魔人族は最初に生まれた人間なんだよ、全てが魔法で出来てるから人間より丈夫だし強いし賢いしなんかズルい感じなんだよねー」
「たしかに……それはズルい感じしますー、でもしょうがないんじゃないですかね? 最初だし」
「でもその分穢れに耐性があって、病気にならないもんだから調子に乗った結果がこれだよ」
「気をつけないとねー」と司書のお兄さんは笑います。
平和ボケしちゃった彩萌には想像もつかないくらい大きなお話だけど、その時もうすでに彩萌は存在してたって言うのが不思議。
ディーテさんが終わらせるために全部やったのかなぁ……。
「穢れてたからしょうがないって考えてくれる人もいるけど、そう思わない人達もいるしそもそも自分達から穢れていった様なもんだからしょうがないね」
「でも、そうかもしれないけど……お兄さんは何かやったの?」
「俺は魔人の国に居たよ、リィドディッガスビアにずっとねー……」
「安全地帯」ってお兄さんは苦笑いしてた、戦争の所為で無くなっちゃったって言ってたけどなんか……攻撃とかそういうので無くなったわけじゃないんだ?
でもお兄さんが何かした訳じゃないし……、安全地帯に居たのはちょっとずるいって思っちゃうかもしれないけどお兄さんが悪いわけじゃないよね。
彩萌だって安全地帯があったら安全地帯に逃げる、絶対にそうする。
お兄さん良い人そうなのになー、それでもハブられちゃうなんて他の魔人さんたちもすごい苦労してそうだ。
でも今お兄さんが魔人にかんよう? らしいヴァージハルトじゃなくってずっと世界図書館で働いてるのは罪の意識ってやつですよね。反省してるっていうか……償おうとしてる姿勢というやつを誰か評価してあげても良いんじゃないでしょうか。
「勉強になりました、お兄さんありがとうございます!」
「いえいえ、どういたしましてー」
友好の握手ねーってお兄さんが言ったので握手した、なぜかお兄さんちょっと嬉しそう。
というかーそろそろ宿探さなきゃヤバいよ、シェリエちゃんどこかな?
世界図書館の中超広い、やばいよー迷いそうだよ!
シェリエちゃんいないしー、呼んで探せれば楽だけど図書館は静かにしないといけません。
探し回っていれば、小さい本の山と椅子に縛られてる箒とシェリエちゃんの帽子があった。
なんか新しい本を探しに行ったのかな?
「んー……なんか絵本?」
シェリエちゃんらしくないな、なんて思って覗きこめばきれいな絵が見えました。
そういえばシェリエちゃんは時計職人になりたいんだっけ?
フレネージェの時計はすっごいきれいだったし、シェリエちゃんがくれた時計もきれいでかわいかった。
じゃあ別に変じゃないのかな?
「何の話なんだろう? ぜんぜん分から――ッニャ!?」
何か持ち上げられて、ぽーいって投げられた感じがした。
机にぶつかるって思って、目を閉じたらなんか水の中にダイブしたみたいな感覚だった。
水の中にダイブしたみたいな感覚がしたのに、落ちてるみたいな感覚がぁあああ!
「にゃああああああああ、彩萌死んだー!」
叫び声はとってもクリアーです、なんで落ちてるんだよぉ!
そう思ってればなんか、ぽよーんってした物に落下して無事だった。
目を開いてみれば、なんか赤くて……なんか木臭いものの上でした。
「……にゃ? ……キノコ?」
「あぁ猫、来ちゃったか」
声が聞こえたほうを見れば、帽子をかぶってないシェリエちゃん!
良かった、変なところに飛ばされちゃったとかそういうんじゃないみたい。
というか良く見れば、シェリエちゃんだけじゃなくっていろんなチビッ子もいます。
なんかお母さんっぽい人もいるね。
「……ここどこ?」
「かの有名なエリィリッアコニュクリアって言う絵本の中だと思うけど、どうだろう?」
「えりーりっあこにゅくりあ?」
「意訳するなら理の世界の小さくって不思議な人、幻想世界に来て小人になってしまった少女の冒険を面白おかしく書いた絵本だよ」
マジかよ、彩萌は今絵本の中に入るとか言うめっちゃファンタジーなことになってるの?
でも幸いに彩萌は荷物を持ってきていますよ! ふふん、ラッキーですね。
キノコの上から下りて、彩萌は地面に足をつけます。
小人化してんのかぁ……、上を見上げればなんかすごいでっかい木が見えます。
聖樹より、大きく見えますね。
「多分絵本に呪いがかけられてたんだ、あっちに居る親子に話を聞いたけど……自分たち以外は誰も居ないらしいから呪いがかけられたのは最近かも知れないね」
絵本の中に閉じ込める呪い、怖いような、怖くないような?
でも図書館にあるんだし……、すぐに呪いなんて解いてくれるよね?
それにしても小人かぁ、肉食系の虫とか小動物が出てきたら彩萌は泣く。
ちょうちょとか妖精さんとか、平和的な生き物を出してほしいな。
でも絵本の登場人物になったとか、ちょっとロマンチックかも……。
――アヤメちゃんの魔法日記、八十八頁




