世界の記憶
盗賊さんはなかなかな賞金がかかっていたらしく、李白さんはアイスをおごってくれた!
アイスおいしい、盗賊さんありがとう。
……いや、盗賊さんは悪いことしてたんだから盗賊さんに感謝するのはおかしいですよね。
李白さんとシェリエちゃんありがとうだよね。
彩萌たちは公園で噴水を見ながらアイスを食べてました。
ショコラマーブルケルミルクおいしい、でもケルミルクってなんだろう?
「グラーノさんリイムピュッセっておいしいの? というかピュッセってなに?」
「ピービェン、ハーブの一種で生食に適していない毒草、シロップ漬けおよび蜂蜜酒に漬ける事で初めて口に入れる事が出来る、ピービェンをシロップ漬けにした物をピュッセ、蜂蜜酒に漬けたものをピュッシェニア、シェニアとはシェーニアニスという聖書の中に登場する神酒の名前でありピュッシェニアはシェーニアニスを模したお酒である」
「ながい……」
でもすごい、そんなことがすらすら言えるなんてシェリエちゃんすごい。
食用に適してないけど雑菌を抑える作用があり、魔法薬の材料や丸薬を保存するために一緒に保管されることが多い、とか言ってた。
ピービェンの毒性について語ってたけど、何言ってんのかまったく彩萌にはわからんぷい。
「グラーノさん一口ちょうだい」
「うーん……もう全部、食べて良いよ……?」
「えー、彩萌お腹冷やしちゃうー」
貰うけどね、貰える物は貰うからね。
おぉ、リイムピュッセ超さわやかでおいしいー。
シャーベットだよ、うまい。
「ねぇシェリエちゃんケルミルクって知ってる? あとシェリエちゃんは何食べてるの?」
「ケルフニア、火山に住んでる牛。私が食べてるのはいちごけるみるく」
もう既に焼けてそうな牛さんなんですね……。
いちごけるみるくかぁ、いちごミルクじゃあダメなの?
ちなみに李白さんはアイスクリーム屋さんのお姉さんを口説いてるのでここにはいません。
しーちゃんはすっごい大きいサイズのアイスを買ってもらって、必死で食べてる。
もう私の羽を食べないでね、っていう契約のアイスらしい。
しーちゃんに守れるかな……その契約。
「さっき観光案内板を見た、……世界図書館というものがあるらしいから行ってみたい、前来た時は無かったから」
「前来たとき?」
「戦時中だったから、国の雰囲気も違うし……別の国に居るみたい」
そうなのか、一〇〇年くらいで変わるんだね……戦争はさんでるからかな?
アイスを食べて、シェリエちゃんと二人で行くことにした。
しーちゃんの面倒はグラーノさんに押しつけた、お腹いっぱいになったみたいでお昼寝タイムだからたぶん大丈夫だと思う。
もうすでに半分くらい寝てたし、グラーノさんも寝てるから良いよって言ってくれたし。
……大丈夫かなぁ、グラーノさん。
なんかレンガ造りって言うか、すごい古めかしい感じ。
どことなくどこの町もみんな古い感じしたけど、ミアーティスは特にそう感じる。
でも埃っぽいとかそういう感じじゃないよ、良い意味なのですよ。
世界図書館は……めっちゃでかかった。
二人で見上げながら、おぉーなんて言っちゃったくらい大きい。
誰でも入れるみたいで、中に入ったよ。
でも本を借りるには審査を受けて会員にならなきゃいけないみたいだよ。
意外と人は少ない、ように見えるだけで広すぎて分からないだけかも。
「――……んー? なんだか珍しい子達だねぇ……ケット・シーと魔人族なんて久しぶりに見たかも」
「おぉー、司書さんシェリエちゃんより耳長い! 大変じゃない?」
なんか声かけてきたのは、きれーな金髪で目を閉じててすごい耳長い男の司書さんだった。
耳の先っぽにピアス着けてるけど、重くてへにょんって下がってるね。
寝る時とか大変そう、というかなんで目閉じてるの?
「あはっへいきへいき、ぜんぜん柔らかいからーぐにゃーってなるからー」
「そういうアナタも、純魔人族?」
「君のお仲間さんだよー、世界図書館にようこそー当館にご入館されるのは初めてですねー世界図書館について、説明聞いちゃう? 聞いちゃう系?」
「聞いちゃう系でお願いします!」
「えー良いよーん?」って何だかやる気が無さそうにふにゃって笑っておっけーしてくれた。
司書のお兄さんはちょっと面倒臭そうな動きで受付から立ち上がって、彩萌たちに椅子を用意してくれた。
うーん、長いのかな? 司書のお兄さんは受付に戻った。
「世界図書館のー、概要はというとー……まず最初に魔人の国に全ての本が揃うリィドディッガスビアがありまして、そこは原初の魔物であるディーテ・カーマイン様が管理していた為、昔の無くなった本も全てが揃う図書館でしてね」
「リィド……でぃっがすびあ」
「リィド、始めのもしくは古くからのという意味でライドとも言う、ディッガが本という意味でスビアが館ね」
ディッガスビアで図書館か……、なんか無駄にかっこよくない?
それにしてもシェリエちゃんはもう辞書並みだね。しぇりぺでぃあ。
「戦争の所為でリィドディッガスビアは無くなってしまいましてね……、世界の記憶と知恵が無くなったって言っても過言では無かったのですよー」
「戦争は怖いね、戦争はダメだね」
「そうですよー、争いは怖いですよー面倒臭いですしね、愚民どもを一々相手にするのはねー」
「そんなこと言ってたら、人の社会で生きていくのが辛くならない?」
「逆だよー、辛すぎて毒が出るんだよー。魔人=悪みたいなあれがまだちょっとあるしね」
はぁ、と司書のお兄さんはため息をついて眉間をぐりぐりしてた。
差別とか、偏見とか、うん……ダメ、絶対ですね。
司書のお兄さんは眉間ぐりぐりしてた時にちょっと目を開けてた、すっごい緑色だった。
もしかしたらいろいろ見えちゃうから、目を閉じてたのかな?
「……リィディンア アムシェクアーノ?」
「……ふーん、そうだったんだ。知らなかった……ノアテニアーシュ?」
「そうそう、リィディンア ノアテニアーシュァ アムシェクアーノ!」
な、何語……古い言葉ですか?
魔法じゃなさそうだけど、会話にもそれって使うの?
「彩萌の分からないところで会話が成立してる……! 仲間外れにしないでください!」
「元々は魔人の国の言葉だからねー、しょうがないねー」
「まあ、魔人の国の言葉だけど昔はいろんな場所で使われてたらしいよ」
「ヴァージハルトは一番魔人の影響受けてる国だよね、引っ越そうかなー」
すごい、彩萌が仲間外れ感。
うぅ、でもしょうがないよね。だって仲間だもんね……!
世界図書館の話が中断しちゃうくらいの何かがあったんだね、きっと。
「ただの世間話だから、気にしないで」
「そうだよー、……話は戻すけどそれを嘆いたディーテ・カーマイン様の御好意と平和を願う気持ちでこの世界図書館は出来ているのです」
端折った! いやー、端折らないでよ大事なところでしょ?
なんで二人で分かりあってるんだよぉ……寂しいじゃないかー。
彩萌がもうちょっとくわしくお願いしますって言えば、司書のお兄さんは面倒臭そうだったけど再開してくれそう。
このお兄さん以外に世界図書館について説明できる司書さん居ないの?
そんなことを聞いたら、暇なの俺だけーって言ってた。
ハブられてるってやつですかね……。
シェリエちゃんはちょっとの説明で理解できたのか、本を読みに行きました。
それにしてもお兄さんの耳、本当にへにょんって感じだなぁ。
――アヤメちゃんの魔法日記、八十七頁




