魔女への道
李白さんが帰って来るまで暇だし、眠る必要がないグラーノさんが寝ずの番というやつをしてくれるらしいし、彩萌はせっかくなのでシェリエちゃんに魔法について聞いてみた。
さっきの魔法はなんだったのかなー、でも聞いたことあるような単語があった気もする。
ちなみに残党の心配はありません!
なんたってグラーノさんが力を使ってくれているのですよ。
グラーノさんすごい頼りになる、すごいやグラーノさん。
「なんて言ってたか、知りたいの?」
「うん、なんか……興味津々なんですよ、現実世界から来たから」
「猫なのに?」
「ちょっと特別な事情があって、猫やってますけど元人間です」
シェリエちゃんと一緒に干しリイムと干し肉を食べながら、たき火に当たりながら話してます。
山は寒いらしいのでシェリエちゃんは彩萌を抱っこしてます。
というか彩萌超小さいみたい……、なんかショック。
「ジェズミィ テスクァナック ナックァファガトゥグランリィア……意訳すると煌めく氷、テスターの摩訶不思議な力で使いたい 摩訶不思議な力の加護を海の精霊の愛し子に使いたい……的な感じ?」
「おぉ……ちゃんと意味あるんですね!」
「あるに決まってるじゃん、ジェが煌めくとか宝石って意味なの。ズミが冷気とか冷たいって意味ね、だからジェズミィで氷って意味になるんだよ」
「おぉ……なるほど、フルージェとか言うもんね」
「テスクァは、テスターの……って意味ね、ナックが摩訶不思議な力って意味、ナックァになると摩訶不思議な力のって意味になるわけ」
「つまり黄色い魔力で扱いますよーって意味」と言いながらシェリエちゃんは干しリイムをどんどん消費します。干し肉も食べて欲しいなって彩萌は思いますけど、でも干しリイムの方が美味しいよね。
「ファガトゥが加護って意味ね、ファグトでも良いけど……グランが海でリィアが精霊の子供、彩萌は精霊の子供じゃないから海の精霊の愛し子って訳した」
「勉強になった」
「ジェズミィ テスクァナックだけだったらそのまま氷をあやつる魔法だけど、ナックァファガトゥグランリィアが付く事によって彩萌に触れてる者、もしくは彩萌に害をなそうとする者への攻撃になる」
「ちなみに言葉だけで魔法が使えるのは魔族だけだから」と言ってシェリエちゃんはごちそうさまをした。干し肉一個しか食べなかったね、まあ良いよ、彩萌が食べるから……。
「ちなみに青い魔法使いたい時なんて言うの?」
「グラーァナック」
彩萌は古の言葉にちょっとだけ詳しくなった!
まあ、ちょっとだけだけどね。
干し肉食べ終わって、寝るときに彩萌はシェリエちゃんに抱き枕にされた。
シェリエちゃん座ったまま寝るのか、まあクッションあるから座ってたほうが痛くならないか。
彩萌も寝よう……この体制超寝辛いけどね。
――……起きたら、グラーノさんにおんぶされてた。
彩萌爆睡してたみたいだね、李白さんもいるし。超寝てたね。
もう岩山の中じゃないし、草原地帯に居るし。
「あ……彩萌ちゃん、……起きた?」
「にゃ……おきた」
眠いね、うん。体がちょっと痛い……。
グラーノさんから下りて、彩萌はのびーってした。
「ん……、ねぇあれってーシーシープドラゴン?」
「どこ? ぜんぜん分かんない、というか羊っぽいのしかいないじゃん」
「えっ? シーシープドラゴンのつばさはしまったり出したり外したりできるんですよ、だってつばさは飾りなんですよ」
そう言えば、シェリエちゃんと李白さんはちょっと驚いてた。
彩萌も最近知ったんだけどね。
最近って言ってもこの世界では何千年とか何億年とか昔だと思うけど。
グラーノさんを食べようとしたしーちゃんを捕まえた時にね、ぽろって取れたんだよ。
彩萌は死ぬほどびっくりしたね、しーちゃんは自分の落ちたつばさ食べてたけどね。
翌日には元通りでしたよ、すごいねシーシープドラゴン。
「もしかして、シーシープドラゴンの目撃情報が少ないのは羊と勘違いされてるから……とかなの?」
「そうかも……、というか意外と近いね」
近づいたら逃げられちゃうのかな……?
見てきて良いかな? って聞いたら、良いよって言われたから見て来てみる。
でも誰もついてこなかった、べつに危険じゃないよね……?
彩萌が近づけば、ヒツジっぽいものは顔を上げた。やっぱりシーシープドラゴンだよ。
おぉー、逃げない! とか考えてたらなんかわらわら寄って来たんだよ。
「なにこれー、なにこれー、なんかーおいしそー」
「わっ、わっ……魔女っ娘スティックは食べ物じゃありません!」
「えー、えー! たべられないのー!」
「けちぃこのねこけちだよ! はじっこほしいー!」
魔女っ娘スティックを狙われた……!
みんな羽生えてないな、って思ったけどちらほらと羽を生やしはじめた子たちが……。
うぐぐ、攻撃はされてないけど……足にまとわりついてくる……!
「なんでー! なんかちょうだいよー!」
「だってしーしーぷどらごん、どらごんなんだよ! なんかちょうだいよー!」
「そうだよー! ちーちゃんにもなんかちょうだい! あやめのけちー!」
「ごめんなさいっ、あげられる物は何もなっ……あれ?」
なんか、彩萌のことを知ってるシーシープドラゴンがいるみたいなんだけど。
というか自分のことをちーちゃんなんて言うシーシープドラゴンはしーちゃんしかいない……はず。
「……しーちゃん?」
「うん! ちーちゃんだよ!」
……ごめん、どれがしーちゃんか分かんない。
すごいまとわりついて来てたシーシープドラゴンたちがちょっと離れた、彩萌のこと見上げてる。
なんなんですか、というか本当にしーちゃんいるの?
「すごーい、どらごんちゅかいだよ」
「えーすごーい、てんしゃいじゃーん! よくわかんないけど!」
「ちーちゃんどらごんつかいのちもべなんだよ! えりーとなの!」
「すごーい、えりーとすごーい! しーしーぷどらごんもしもべにしてー!」
「だめー、あやめはちーちゃんの!」
本当にしーちゃんいるのか……、なんでいるの? というかどれ?
彩萌がこんわくしてると、ぴょんって飛んできたシーシープドラゴンがいた。
……なんかよく見たらリボン巻いてあった。
リボンに猪妻・カーマイン・五郎ってサインしてあった……、これなら間違えないですね。
「あれっ……!? あやめけだらけぢゃん! ふゆげにはえかわったの?」
「えーっと……そんなところです」
ふかふかーって言いながらしーちゃんは彩萌のほっぺたに触ってきます、ひづめが硬い。
しーちゃんを持ってみんなのところに戻れば、超びっくりされた。
みんなを見てしーちゃんはよだれたらしてて、ヤバいなって彩萌は思ってすごい罪悪感があったけど天使の羽をさし出した。魔力の塊だからかわりになるかなって思って……、シノーさんごめんなさい。
「なにこれ、おいちい」
「放し飼いにしてたの?」
「いえでちたの! まおうがうっとおちかったから!」
「ふーん……魔王、猫は不思議な存在だね」
李白さんは苦笑いしたから、たぶん李白さんは彩萌のことなんだか分かってるんだろうね。
グラーノさんが珍しい行動してた、李白さんの後ろに隠れてる。
しーちゃんが怖いのかなぁ、って思いながら振り返ってみればぞろぞろとシーシープドラゴンがついて来てた。
「あー、だめだー……どらごんちゅかいいないね」
「ちょーさいあくー、しょぼじゃん!」
「しーしーぷどらごんかいしゃん!」
なんか李白さんとシェリエちゃんの品定めしてから、シーシープドラゴンたちは去って行った。
けっこう失礼なこと言ってた気がする、うん。
「しーちゃんグラーノさんとかシェリエちゃんとか李白さんとか……とにかく人っぽい見た目のやつは食べちゃダメだよ!」
「もーわかってるよー、ちーちゃんはえりーとだからね!」
そう言ったから離したら、李白さんの羽にかじりついてた。
おーい、エリート……分かってないじゃん!
李白さんは別に気にしてないって言ってた、……天使の羽とはちょっと違うのかな?
しーちゃんが李白さんの羽に引っついてたから、グラーノさんは安心してた。
そのままの状態でミアーティスまで行くことに、もう結構近くまで来てたみたい。
シェリエちゃんはしーちゃんに興味津々で、じーっと観察してました。
ミアーティスは外壁からもう良い意味で古めかしくって、素敵な雰囲気でした。
シェリエちゃんはなんか、昔とちょっと違う……って呟いてた。
アイス……楽しみです!
――アヤメちゃんの魔法日記、八十六頁




