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アヤメちゃんの魔法日記  作者: 深光
始まる為のエンディングノート
75/107

甘い魔術をどうぞ

 頭が熱い、痛みはもう感じないけど感覚がなくてくらくらする。

 うつむけばぽたぽたと地面に血が落ちて赤いあとがついてる。

 少し奥に入っただけでこうなっちゃったんだから、奥までは行かないほうが良いのかもしれない。

 ……あ、奥まで行かなくてもここで祈れば少しは穢れきれいにできるかな?

 魔女っ娘スティックを支えにして、彩萌は地面に膝をつけます。立ったまま祈れないからです。

 神様お願いします、このすごい穢れをはらってください。

 このままだと病気になったり色々なことが起きちゃいます。


「――うっ、い……ッたぁ」


 祈ってたら、すごく額が痛くなった。

 手で押さえればもう包帯なんて意味無いんじゃないかってくらい血が出てるよ。

 うわぁ、どうしよう……! りゅうけつざたってやつですよ!

 穢れはきれいにならないし、彩萌の頭からは血がどぼどぼだし……。どうしたら良いのかな?

 彩萌には何も出来ないのかな、誰も助けられないのかな。

 彩萌聖女なのに、穢れきれいにするって決意したのに。

 やっぱり彩萌は死んでたほうが良かったのかな。死体のほうが役に立ってたのかな。

 涙が出てきちゃうよ、……なんで彩萌こんなにねがてぃぶな考えかたしてるんだろ?

 魔女っ娘スティックで彩萌は自分を叩いてみた。

 けっこう力入っちゃって……痛いです、うぅ。


「あ……、なんか黒くなってる」


 魔女っ娘スティックの装飾の一部が黒くなってた、……彩萌も穢れていたのか。

 やっぱり穢れは汚れた魔力だから吸収できるんだね、すごいや魔女っ娘スティック。

 あ、なんか彩萌元気が出て来たかも。

 おぉ、なんかむーちゃんが魔力注いでくれたところの色が薄くなってる。

 魔法か!? 彩萌も魔法みたいなことをしちゃったのか!

 いやぁ、彩萌も魔法少女ですよぉ。うへへ。

 ……なんか頭痛いのは治ったけど、気持ち悪くなってきた。吐きそう。

 あっ、そうか。彩萌が魔力を拒絶する体質だから、魔法はダメなんだ……。


「うぇっゲホッ、……うぅ朝から干しリイムの実一個しか食べてないからセーフだった」


 まさに、もろはのつるぎ?

 本当に困ったときだけ自分を叩こう……。うぅ、気持ち悪い。


「――……猫妖精さん、大丈夫ですか?」


 あっ、人が来ちゃったみたい。

 大丈夫だって、伝えようと思って見上げたんだけど……彩萌はなんて言ったらいいのか分かんなくなっちゃった。

 だって、なんか……お兄さんだったんだけど……すごい、穢れてるの。

 今まで臭いとか、そういうので見分けてたんだけどお兄さんは見てからに穢れてるってわかっちゃった。

 見て分かるって言っても変な色をしてるとかそういうんじゃなくて、なんかずれてる。

 本当にずれてるんじゃなくて、なんか……なんかちょっと違う。

 なんて言ったらいいのか分かんないけど、ラップしてるみたいな感じで周りにまくがある感じ?

 何も言えずに彩萌が口を閉じてると、お兄さんは首をかしげたんです。

 青黒い髪の毛で、目が赤くて肌が青白いです。首のところ包帯巻いてる、黒い服装のお兄さん。

 なんか、ローブ着てて白いワイシャツで……魔法使いの格好をしてますね。

 お兄さんは不思議な甘い匂いがする。


「気分が悪いんでしょう?」


 手を差し出してくれるんだけど、なんか触るのが怖くて彩萌は魔女っ娘スティックではらっちゃった。

 ごめんなさい……つい、なんかすごい穢れてたから触ったら痛くなりそうだなって思っちゃって。

 お兄さんは彩萌にはわれた手をじーっと、無表情で見てます。怖い。


「……すごいですね、その杖。とっても高性能みたい」

「え、そ……そうですか? というかごめんなさい、なんかつい」

「良いんですよ別に、なんか面白いもの見せてもらえましたし……ほら」


 お兄さんは彩萌にはらわれた手を見せてくれたんですけど、なんか変。

 えっ、何。えっ……、なんか……腐ってる?

 腐ってるんだって分かってなんか彩萌は怖くなっちゃって、なんか逃げ出してた。

 なんかゾンビみたいになってて……、映画でしか見たことないけどなんか怖いです!

 穢れちゃったからゾンビになっちゃったの!? それとも元々そういう、アンデッドとかいう魔物なの?

 なんか体調があんまり良くなかった所為か、彩萌は転んじゃった。

 魔女っ娘スティックで自分を叩かなきゃよかった……。


「魔力を吸い取るなんてすごい高性能ですよね、魔力で生命維持してる私みたいな生き物にとってはすごい脅威になりそうですね」

「ごっ……ごめんなさいっ、彩萌知らなくて!」

「良いんです、やっぱり私は魔力が無いと腐っちゃうんですね……認識できてよかったです」


「大丈夫ですよ、もう治っちゃいましたから」って言ってお兄さんは手を見せてた。

 ……腐ってなかった、良かったです。

 彩萌がホッとしてるとそのゾンビなお兄さんはじーっと杖を見てるんです。


「もしよろしければ……、その杖を譲ってくださいませんか? お金なら幾らでも用意しますから……お願いします」

「えっ……でもこれは彩萌が友達に特別に作ってもらったから」

「それなら、貸してくださいませんか? 用事が済んだら返しますから、お願いします! その杖が必要かもしれないんです!」


 お兄さんは、すごい必死だった。なんか、泣きそうな感じなんです。

 何かあったのかもしれません……、でも見知らぬ人に簡単に物を貸すのはどうかと思うし……。

 お兄さんが町にいる人よりすごい穢れてるのに関係あるのかな……?

 ……なんか、彩萌にはよく分かんない。


「えっとぉ……、それはお兄さんがすっごく穢れてるのと関係あることですか?」


 なんかよく分かんないから聞いてみたら、お兄さんすごいびっくりした顔してた。

 あ、なんかいけないこと聞いちゃったのかもしれない。お兄さんの顔色が悪いです、死にそうです。

 ……まあ、ゾンビだったらもうすでに死んでるのかもしれないですけど。

 というか……震えてる? なんか、怯えてるみたい。


「そ……れは、――……もし、理由を話したら……貸してくれますか?」

「えっと……内容によって?」

「……私は、――……私は禁忌を犯してしまったんです」

「きんき……? いけないことをしちゃったんですか?」


 お魚とか、地方のあれではないですよね。

 あんまりこーとーでは聞かない表現だったから一瞬分かんなかったぞ……、危ない危ない。

 いけないことってなんだろう……、うーん……穢れちゃうほどのことだからいけない魔法かな?


「……はい、アンデッドが生まれる条件をご存知ですか?」

「えっ……、死んだ魔物が生き返ったら?」

「正しいですが、違います。多分に魔力を含んだ地で多量の魔力を持った者が特殊な技法で死ぬ、或いは死体にゴーストが宿った状態です」


 なるほど……、前の説明はファナさんのことですね。

 そんで後ろはあれかな、クレイドールみたいなのかな。


「……生き返らせてしまったんです。生まれる条件を無視して、穢れた技法を使って」

「だから……お兄さんはすっごく穢れているんですか?」

「――……えぇ、そうですね」


 お兄さんは彩萌の言葉にうなずいたんだけど、なんかちょっと嘘吐いてる気がする。

 うーん……あと、生き返らせるは自分に使わない言葉だと思うからお兄さんがゾンビなのとは関係ない?

 そう言えば李白さん言ってたね、微妙すぎるにゅあんすの違いって大事だよって!


「穢れた技法ってどんなのですか?」

「……そうですね、生き返らせる……魔法みたいなものでしょうか」

「嘘ですよね?」


 なんとなく嘘だと思う、うん……なんとなく。

 お兄さんは嘘を吐くのになれてないんだと思う、自信が無さそうというか……なんというか。

 彩萌に腐っちゃった手を見せた時はすごいもっと、自然だったもん。

 今なんか不自然だよ。


「――……はい、嘘ですよ。正確に言えば捻じ曲げる魔法ですかね」

「ねじ……まげる?」

「えぇ、そうです。その人の真を捻じ曲げちゃう魔法です、すごいですよ。生きながら人間から魔物に、魔物から人間になれちゃうんですよ」

「んーでも魔物さんは人間さんに変身できますよね……?」

「そうですね、でも根本的に人間になった訳では無いでしょう? それに人間に化けられるのは魔力の高い魔物だけですよ」


 なんでそれがいけない魔法なの? 彩萌だって変わっちゃったよ?

 あ、でも彩萌の場合生まれ変わった状態だからちょっと違うのかな……?

 やっぱり嘘ついてたんだね、お兄さんじょうぜつになったね。


「これが禁忌とされる理由、分かりませんか? 魔物にも種類があります、人間と同等の知能を持っている魔物もいれば、そこら辺に居る小動物と変わらない魔物もいるんですよ。それにこの魔法、自分に使う事は出来ないんですよね」

「……はぁ」

「それにこの魔法、相手が穢れている状態で無ければ効果が無いんですよねー、おかげで私もこんなに穢れちゃって……困ったもんですよー。まあでも穢れてアンデッドになっちゃったくらいで済んで良かったですよ、理性が完全に吹っ飛んだりしたら何も出来なくなってしまいますから」


 うん……、うん?

 えーっと、うん……、え? えーっとつまり、もしかして、お兄さんがこのリンズの穢れの原因?

 お兄さんは彩萌に話しかけて来たときと同じように、ニコニコ笑ってます。

 えっ……お兄さんは町の人をみんな魔物に変えたいの?


「本来の使い方は穢れてしまって手の付けられなくなった知能の高い魔物や人間、それに魔人とかに使われていた魔法らしいですよ」

「あの、お兄さんはどうしてそんなことを……?」

「えー、だってーみんな魔物になったら幸せじゃないですかー? 見た目を気にする必要なんて無いんですよー」


 えっ……? 見た目?

 え……別にお兄さんすごい普通ですよ、気にするような容姿じゃないです。

 ぶっちゃけ言うと山吹君より整ってますよ、まあ山吹君は童顔だからどちらかと言えば幼い顔してるだけですけどね!

 でも見た目を気にしてお兄さんこんな事やっちゃったの……? 穢れちゃうとどうなるかとか分かってるみたいなのに……なんで!? 誰かが死んじゃうかもしれないんだよ!? えっ、彩萌には理解できない!

 彩萌が混乱していれば、お兄さんは首をかしげてました。

 なんか……このお兄さん怖い、普通そうなのにちょっと変なところが怖い……。


「別に良いじゃないですか、魔力を多分に含んだ地で多量の魔力を持った者が特殊な技法で死ぬに当てはまるんですから。ほら、私だってゾンビになりましたし? 怖がることないじゃないですか、死んでも死にませんよ?」

「ちょっと……彩萌にはちょっと難解でした……」


 嘘を吐いてるだろ! なんて言わなきゃよかった。

 杖あげちゃえば良かったかもしれない……、ユースくんたちには土下座すればよかった。


「杖、貸してくださいよ。こんなに喋ったんですから……、貸さないなんて言わないですよね? 言わないですよね? むしろ言えないですよね?」


 あうぅ、このお兄さん怖い人だ。

 しかもちょっとおかしい怖い人だ。

 何でそんなニコニコしながら彩萌を脅すんですか!

 首をかしげないでください、その動作が怖いんですよ!

 彩萌は怖すぎてついうっかりうなずいてしまいました、お兄さんは嬉しそうでした。


「よかったですー、喋れないように加工して殺さなきゃいけないのは面倒だって思ってたんですよ」


 超フレンドリーに喋りかけてくるけど、内容が超怖い。

 あんまり抵抗しない方が良いと、彩萌の勘が告げてます!

 彩萌は大人しくお兄さんに背中を押されて一緒に行くことになってしまいました。

 ゆううつです、空を見上げれば白い鳥が飛んでるのが見えます……。

 ……口封じに殺されちゃったらどうしよう。





 ――アヤメちゃんの魔法日記、七十三頁

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