八咫烏は見ている
彩萌はアタリアンに肩車をされながら町の中をふーらふら、人がいっぱいいますね。
というかアタリアンは背が普通に高いほうなのに、高下駄をはいている所為で見通しがすごい良いです! でもそのぶん彩萌はいろんな人に見られてます!
人がいっぱいいるぶん、変な臭いもいっぱいです。みんな砂糖を食べちゃったのかな?
変な臭いはやっぱり食品関連のお店からすごいした、砂糖をいっぱい使ってそうな料理屋さんは特にひどいです。
アタリアンにそう言えば、意識すれば確かに臭いがするって言ってた。
意識しなきゃ臭いが分かんないんだ……、不浄について詳しいらしいアタリアンですらそうだから他のみんなは分かんないんだね。
それに普通お店で出されたお料理とかそんなふうに意識しないよね……。
やっぱり砂糖が穢れているみたい、そう言うお話をアタリアンにしたら、アタリアンはなんかきれいな飴細工を売ってる屋台に近づいたんですよ。
その飴細工屋さんの飴はすごくきらきらできれいなのに、彩萌にはきれいに見えなかったです。
アタリアンは並ばないで、屋台のおじさんに近づいたんです。並ばなくていいのかな?
「なあ、最近なんか材料とか変えた? 俺昔のチープな飴って感じの飴が好きだったんだけど」
そう話しかけられておじさんは、アタリアンの顔を見て超びっくりしてた。
仮面の所為かな? 鳥みたいな仮面の所為だろうね、うん。
「な……なんだよ、李暗かよ! 驚かせんじゃねぇよ、何でそんなもん着けてんだよ。つーか帰って来てたのか」
「おう、そりゃあ俺の美貌が仕事に影響を来すからであってだなぁ」
「はあ? お前が美しいんだったら俺だって美しいだろ」
「なんでだよ、李白が美しいって称されんのになんで同じ顔である俺は美しくねぇんだよ」
「性格と雰囲気の所為だろ、俺の弟だってそんなに変わらねぇ筈なのに俺より可愛い可愛いって言われてんぞ、上さんによ」
「なんだよ、お前結婚してたのかよ! 死ね!」
「お前なんかに言われなくっても孫に囲まれて幸せに死ぬわボケ! 四十年後ぐらいにな!」
おぉ、知り合いだったんだね。というかアタリアンたちはこの国出身だったんだね。
それにしてもおじさん器用だね。
お喋りしながら飴細工作ってるよ。職人さんだね。
「そんで、何か変えたの? 味変わった気がするんだけど」
「何言ってんだよ、お前みたいな質より量な男に分かるのかよ。まあ砂糖を変えたんだけどよ」
「お前こそ何言ってんだよ、俺は質も量も大事にする男だぞ!」
「へぇ、そんな残飯漁ってそうな見てくれでか?」
「残飯漁ってそうな見てくれってなんだよ、俺はカラスじゃねぇぞ!」
うむ、アタリアンはいじられキャラなのかな?
というか話長いよー、彩萌あきるー、って思いを伝えるために彩萌はアタリアンの頭をばしばし叩いてみた。
おじさんは彩萌が動いたのを見てびっくりしてた、ずっと動かなかったから人形だと思ったのかな?
アタリアンは叩かれて嬉しそうだった、彩萌は嬉しくないです。
「肉球が当たる感触が最高だな」って言ってたからチョップに変えてあげたら残念そうな声出してた。
「お前、ついに猫好きが高じてケット・シーを誘拐したのか!」
「おい誘拐じゃねぇよ、拉致ってきたんだよ!」
「それ訂正する意味あったの? というかなんでそんなに自信満々なの?」
顔は仮面の所為で見えないけど、なんかどやぁって感じの雰囲気だった。
というかアタリアンはそんなに猫好きなんだーって言ったら、家に来ても良いんだぞって言うから丁寧にお断りした。
すごい高くて美味しそうなキャットフード用意するからって言われたけど、彩萌はキャットフード食べません。アタリアンはお家を長い期間空けることが多いから普通の猫ちゃんが飼えないんだって、だからって彩萌を飼おうとしないでください。
三食昼寝付きで俺にもふもふされて肉球ぷにぷにされるだけの生活なんて、良い感じだろ! って言われたけどそれが山吹君だったら良い感じだったよ。
猫っぽい獣人族とか猫っぽい悪魔の彼女でも作れよ、っておじさんに言われてたけど、獣人族さんと悪魔さんは肉球がついてないしもふもふじゃないから嫌なんだって。それに悪魔さんは常に猫化してないから余計にダメらしい、普通の時は普通に人っぽいもんね。
肉球の素晴らしさを語り出しそうだったから、彩萌はアタリアンの頭をチョップした。
「あと俺は別に猫の彼女が欲しい訳じゃねぇ、……つーか話し戻すけどなんで砂糖変えたの? ギルドの砂糖も変わってたけど」
「というか、お前は何でそんなこと気にしてんだよ」
「だって俺経理なんだもん、勝手に変えられると困るんだもん。ちゃんと記述してなかったんだもん」
「そうかよ、……あれだよ首長さんの要望なんだよ、輸出がなんたら輸入がなんたら煩かったしよ。使ってみても味そんなに変わんねーし良いやって、安いし」
「もっとプロ根性見せろや! 原材料にこだわれや!」
「しょうがねぇだろ! それにちゃんとギルドを介して公正な機関にちゃんと依頼して調べて貰ったって紙見せられたし、ギルドの判もしてあったし」
それを聞いて「ふーん、ギルドねぇ……」ってアタリアンは呟いてた、それがちょっと李白さんっぽかった。
もうアタリアンはおじさんから聞くことは無いって判断したのか、ちょっとふざけた話をした後にバイバイした。
うーん、砂糖がどこから来たのかよく分かんなかったね。
「それで、彩萌は何処から行きたい? 俺的に首長の家の方から行ってみたいんだが」
「なんでしゅちょうさん?」
「……あぁ、チビッ子に理解力を求める方が酷か。……あんな見た目と言動だけどアリシエは六十の婆さんだからかぁ」
えっ、アリシエちゃん六十歳なの!?
そうなんだ……、じゃあアリシエちゃんってどっちかと言えば魔女なんじゃ……。
悪魔召喚してるし……、おんみつできないらしいし。
「あのな、ギルドが砂糖を調べる為の仲介をしたなんて記述はなか――ッ!?」
「咫 李暗探したわよ! 昨日の約束は嘘だったの!? なんで約束の場所に来ないのよ!」
突然お姉さんがあらわれてアタリアンに突撃したんです、その所為で彩萌は落ちそうになった。
アタリアンは突撃してきたお姉さんを見て、ぽかーんとしてた。
「……はぁ? 俺は昨日ギルドに籠って依頼履歴を洗い浚い見直してたんだけど?」
「言い訳なんて聞きたくない! 色変えたくらいで私の目を誤魔化せると思うなよ!」
お姉さんは叫びながら、アタリアンに掴み掛ったんですよ。その所為で彩萌は落ちちゃった。
でも彩萌はネコ式着地術大会に出られるレベルですからね!
きれいに着地してやりましたよ!
でもお姉さん、たぶんそれアタリアンじゃなくて李白さんだよ。
そう教えてあげたかったのに、人ごみの所為で彩萌はアタリアンからはなれちゃった。
……どうしよう。
「――あっ!? 彩萌! 彩萌どこだ、おい!」
「アタリアーン! 彩萌はここですー!」
あ、彩萌が小さい所為でダメっぽい……、あぁ彩萌は迷子になっちゃうんですか。
このやろー、李白さんめ。彩萌は李白さんを恨むぞ。
しばらく人ごみに押されていれば、はじき出されて人気の無いところに来ちゃった。
うむ……でも人ごみに入るのはちょっと勇気がいるよね……。
というかなんでこんなに人がいるのさ、耳をすませばリッテの聖樹がとか言ってる声が聞こえる。
聖樹を見に来た人たちなんだね……、そうだよね。リッテには泊まるとこなさそうだもんね。
というかリッテの聖樹もう有名になっちゃったのかよ、幻想世界意外と広まるの早いね。
なんか頭痛くなってきちゃったよ、それは穢れの所為か……。
「ぴぃ」
可愛い鳴き声が聞こえて、ふり返れば小さい路地に白いひよこみたいな鳥がいた。
額に三つ目の目があるけど、可愛いね。
そーっと近づいてみたけど逃げない! 人懐っこいひよこですね。
あれ、足も三つあるね。魔物なのかな。
よく見れば白い体に金色の模様が入ってます、ふわふわしてそう……。
近づいても逃げなかったから、持ち上げてみたけど嫌がらない!
このひよこぜったい人に飼われてるひよこです!
「ぴよ」
「おぉ、ふわふわです……。逃げひよこさんですか?」
「ぴぃ……、ひよこ……ちがう」
喋った!? そうか、魔物ですね。
なんだか触ってると落ち着きます、頭の痛いのがちょっとだけやわらぐ感じです。
アタリアンの近くにいた時みたいな感じですね。
頭にのせてみたら意外と安定した。うん、良い感じです。
でもこの路地の奥からなんかすごい変な臭いがするんだよね……、強い臭いがします。
……行ってみようかな、でもひよこさんは危険かも。
彩萌はとりあえずひよこさんを踏まれなさそうな場所に避難させました。
「じゃあね、えっとひよこの魔物さん」
「ぴよ……」
ちょっと見るだけですから、うん。ちょっとだけですから。
大丈夫です、忍者靴はいてるからぽきゅぽきゅ音しないしおんみつできるはずです。
ちょっと不安になって振り返ればひよこさんはいなくなってた……。残念。
――アヤメちゃんの魔法日記、七十二頁




