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アヤメちゃんの魔法日記  作者: 深光
始まる為のエンディングノート
72/107

赤鬼と蒼鳥

 それにしてもここはどこだろうか、部屋の外に勝手に出るのも気が引けちゃう……。

 額の熱いのはちょっと良くなってた、まだ熱いけど。

 どうしようかなって思ってたら、部屋を勢い良く開けられた。

 そこに居たのはすごい背が高くって、なんか強そうな男の人だった。

 額から角が生えてて、髪の毛赤い……赤鬼さんですかね。

 なんか服装とかも中華っぽいです、なんか明るそうな性格の兄貴って感じな雰囲気がします。


「おぉ、起きたか! どうだ? どこか痛いところとか気分が悪いとかあるか?」

「え……っと、ないですけど……お兄さんは誰ですか?」

「俺か? ユーエンで良いぞ、ところでお前はなんて名前なんだ?」

「えっ、彩萌は叶山彩萌と言います、彩萌が名前ですよ」


「おぉそうかそうか!」ってユーエンさんは豪快に笑います。

 なんて言うか、すごい良い人に見える。

 全身から良い人ーって感じの気が出まくってる感じです!


「そこの棚の中にファナが置いて行ってくれた山分けした報酬があるからな、勝手に持って行ってくれ、だそうだ!」

「あ、……ありがとうございます」

「おぉそういえば、ファナ達は新しい仕事を受けたからもう此処には居ないからな」


 彩萌が気絶してるうちにそんなことが、……彩萌ちょっとしか気絶してなかった気がしたけどけっこう気絶してたのかな。

 ユーエンさんはファナさんの知り合いかー、じゃあここってギルドとかいうやつなのかな?

 棚の中を空ければ袋が何種類か入ってて、中にはコインが入ってた。

 この世界の通貨は金貨とかなんだね、金貨、銀貨、銅貨で分けてあった。

 彩萌にはお金のあれこれがよく分かんないから苦労しそう……、でもお金は持ってた方が良いよね。


「困ったことがあったら俺に聞けよ」

「あ……さっそくなんですけど、ここはギルドってやつですか? 彩萌はあの、……田舎出身なので色々とよく分かんないんです?」

「おぉ、まあケット・シーの集落には無いからなぁ、案内してやるよ!」


 にこにこ笑ってユーエンさんは言います、気前が良いってやつです?

 彩萌はとりあえず、鞄にお金が入った袋を入れて杖を持ちますよ!

 というかカバンの中ぎゅうぎゅうになりそうかも……。

 ランタンちょっと邪魔かも、大事だと思うけど……。どうしよう?


「なんだ、持ち物整理で困ってんのか? ……リイムの実を全部干しちまえ!」

「簡単に干せますか……?」

「まあな、種と実に分けねーといけねぇが干すのは簡単だぞ」


「ちょっと待ってな」って言ってユーエンさんは部屋を出て行きました。

 すぐ戻ってきたユーエンさんは包丁と、お料理で使うボールを持ってた。

 えっ、ユーエンさんがしてくれるの? って思ってたらユーエンさんが皮とか剥いて種に分け始めてくれた。

 気前良すぎじゃないですか!?

 驚いて見てたらユーエンさんはにかって笑った。


「俺には孫が居てよ、お前と同じくらいなんだよな! 俺が傭兵業なんてやってて全国行ってるもんだから会える時間が無くてな、なんだか構ってやりたくなるんだよなぁ」

「お……おじいさんですか……びっくりしました、皮むきはやいですね!」

「まあなぁ、長いこと一人だからな! それに昔は自分で保存食は作ったもんだ」


 その顔でおじいさんかぁ、幻想世界(ふぁんたじー)すごいです。

 けっこうあったのにすぐにリイムの実は分解されました、しかもすごいきれいです!

 ちなみに本当にリイムはすぐに干されました、だって指ぱっちんで乾いちゃったもん。

 種は洗って乾かして取っておくことにしました、これで簡単に植えられますね!

 干しリイム入れとく袋までもらっちゃった……えへへ。


「片付けるついでに一緒に食堂に行ってみるか?」

「あ……えーっと、行ってみたいです。でも、あの……ご飯はいらないです」

「どうしたんだ? ちゃんと食わねーと小さいままだぜ?」

「えっと、なんか……変な臭いがするから」

「……なるほどな、そうか! そういうことなら仕方ねぇな、俺も控えようかね?」


 んー、そういえばユーエンさんからは穢れた感じしないね、どうしてかな?

 ストレートに聞いてみたら、もしかしたら今まで山籠もりしてたせいかもなって笑って言ってた。

 彩萌はランタンをカバンに入れて、お金も入れることができました。良かったです。

 干しリイム、やっぱりおいしいです。

 二階部分は宿屋になってるんですって、ギルド利用者じゃない一般の人でも別にお金払えば使って良いらしいよ。

 彩萌が使ってた部屋はファナさんが払っておいてくれたらしい、本当にありがとうございます……。

 一階部分はギルドの受付とか、食堂とか、ギルド関連のあれこれがあるらしいですよ。

 奥のほうにあるあれこれはギルド運営者以外立ち入り禁止ですってよ。

 食堂は、微かに変な臭いがした。何から臭いがしてるんだろう?

 ボールと包丁を戻しに行ったユーエンさんの後姿を見ながら、彩萌は気になってふらふらして見た。

 たしかにクロ様が言うように人から変な臭いがするかも、でも食堂の変な臭いの一番の原因じゃない気がする。

 うーん、なんかぁ……扉の向こうから変な臭いがするけどここは関係者以外立ち入り禁止っぽい。

 どうしよう、でも変な臭いするよね。これは誰に言えばいいのかな。


「猫のお嬢さん、そこは食物庫だよ。不審を抱く人も居るから扉を見上げて固まるのはやめなさい」


 う……、ふり返ればなんて言うか白い人がいた。

 なんか、鳥っぽい仮面かぶってて高下駄? みたいなのはいててなんかテングみたいな格好してる。

 全身白い、もう白い。まぶしいくらい白い。

 あっ……羽が生えてる。


「えっと……ごめんなさい、……なんか、そのー変な臭いがしたから」

「変な臭いねぇ、ここにはそれが充満してると思うけどそこが臭いの出自では無いのかとお嬢さんは言うんだね?」

「あぅ、えっと……そうかもって思っただけで、……違うかもしれません」


 なんか、優しい感じで聞いてくるんだけどちょっとこの人怖い。

 というか怪しい感じです。

 真っ白なテングっぽいお兄さんは高下駄はいてるせいか、見下してくる感はんぱないです!

 でも声すごいきれいだね、透き通ってるってやつですね。

 彩萌がなんか恐縮してるとテングっぽいお兄さんは音も無く歩いて来て、扉を開けちゃったんです。

 関係者なのかな……、じーっと見てればお兄さんは手招きしてきます。

 うぅ、怖い。行きたくないです、なんか神隠しされそうです。

 でも変な臭いの元が気になっちゃったので彩萌は入っちゃいます。


「どうだい、変な臭いの出自は見付けられそうかな」

「うーん……、えっと」


 彩萌はふらふらしてみます、うーん。ここに何かがある気がする。

 額の石も熱くてちょっと痛いです……。

 なんか頭が痛い、くらくらするぞ。うん。ヤバイです。

 彩萌は棚とかがならぶ広くて暗い部屋を歩きます、後ろからテングのお兄さんがついて来てる。

 食物庫の一番奥に、変な臭いの元っぽいのあった。

 茶色い袋があって、中から変な臭いがしてる。

 あーなんかすごい頭がくらくらしてる、彩萌は袋に近づいて勝手に開けてみた。

 中身は砂糖かな……、ザラメ……みたい。

 あっ、あぁ!? ヤバイ、彩萌頭から血が出てたみたいで砂糖の中に血が入っちゃった!


「たしかに、近付けば分かるね……酷いねぇ、なぜ今まで気付けなかったのか不思議なくらい臭うね」


 あぁ、そうだテングみたいなお兄さん居たんだ。

 なんかよく分かんないけど彩萌一瞬忘れかけてたよ。

 ぐいーって引っぱられて、彩萌は強制的に砂糖からはなされます。

 頭の熱いのちょっとよくなった気がする、お兄さんは包帯ぐるぐる巻きの彩萌の頭に触りながら砂糖を遠目で見てます。


「あれほど離れてたのに分かるなんて今直ぐに正体を突き詰めてみたいけど、でもお嬢さんの体のことを考えれば今はここから離れた方が良いだろうね」


 彩萌はお兄さんに引きずられるように食物庫を後にします。

 あうぅ、なんかあたまがぼんやりします。くらくらして痛いです。

 いつの間にか食堂に戻って来てたみたいです、彩萌は椅子に座らされてました。

 ユーエンさんが彩萌を心配そうに見てる。


「彩萌、大丈夫か? どこか痛いところとか気分が悪いとかあるか? あとあの堕天使に何かされなかったか?」


 あぁ、テングっぽいお兄さん堕天使だったんだ……。そうなんだ。

 なんか、納得しちゃう。不思議。

 食堂の変な臭い……ちょっと無くなってた。


「酷いねぇ、私には(あた) 李白(りはく)ってちゃんとした名前があるんだよ。堕天使なんて呼び方は止めてくれないかな、そもそも私は天使じゃないんだよ、スピリット系の魔物で天狗なんだよ、分かりやすく言えばゴーストと魔人の中間なんだよ」

「そうか? というかそれなら悪魔や天使と変わらんだろうよ、あいつらだってゴーストと魔人の中間だろ?」

「似て非なる物さ、私は天使のような(みさお)を持ち合わせていないし、かと言って悪魔のように放埓(ほうらつ)という訳でも無いのだよ。あと天使と悪魔はどちらかと言えば魔人とゴーストの中間でね、魔人寄りなんだよ。天狗はゴースト寄りなんだよねぇ」

「微妙すぎるにゅあんすの違いですね……」

「微妙すぎるニュアンスの違いは大事な物だよ……お嬢さん、相手の心情を汲み取りたいのなら言葉の端々に気を配りなさい」


 なんか、ぞわぞわするんだけど。

 不快感とかそういうのじゃなくて、なんかあいいれないものがある気がした! うん、でも李白さんも悪い人じゃなさそう……。なんか受け入れがたい何かがあるけど。言い方がなんか、彩萌苦手かも……。

 そんなことを考えてれば李白さんがとなりに来ててびっくりした。

 いつの間に!? 結構離れたところにいたよね!?

 なんか手を伸ばしてくるんだけど、彩萌はびっくりして逃げる機会を失ってしまいました。

 包帯でぐるぐる巻きになった頭、というか額の石のとこを触られた。


「道が小さすぎるんだろうねぇ、鴻大すぎる汚濁した獣性を受け入れるには稚い」

「おい、てめぇ言葉がきたねぇぞ! 彩萌に近寄んな!」


 彩萌はユーエンさんに引っぱられて李白さんから離されて、しっしってユーエンさんが李白さんにしてた。

 彩萌は李白さんが何言ってんのかまったく分かんなかったけど、汚いこと言われたの?

 仮面しててよく分かんないけど、たぶん李白さんはにっこり笑ってた。


「たしかに言い方が汚かったかもしれない、でもねぇお嬢さんは知っておいた方が良いと思うけどね。君は穢れを祓ってるんじゃなくて吸収してるんじゃないのかな、何処に溜め込んでるのかは知らないけども、道はそこにあるんだね」


 道ってなんですか、よく分かんないけど神様が力をなんたらかんたらするためのあれ?

 血が出たりするのはなんかその所為なの?

 えっじゃあ彩萌はあれですか? すごい穢れてるとこに行くと頭から血が出る病気なの?

 出血多量で死んだりしないよね? 大丈夫かな。

 やっぱりあの砂糖は穢れてたんだ、もしかして町全体が変な臭いがするのは砂糖が穢れてるから……?

 どうしよう、砂糖って日常的に使う調味料だよね。

 早く何とかしないと……ヤバイですよね。





 ――アヤメちゃんの魔法日記、七十頁

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