初めての仕事
門から少し歩けば大通りが見えます、お城まで一直線です。
大通りにはいっぱいお店がありました、大通りに入る前に横に二つ小さな道があります。
看板も立てかけてあります。
「彩萌ちん、あの看板なんて書いてあるの」
「左がムジネコの通り入口、右がミケネコの道入口」
どうも彩萌は通訳的なあれでまだ二人に必要みたいです。
ヒズミさんとファナさんは左から行くことにしたらしく、彩萌を引っぱって行きます。
ムジネコの通りは石畳の通路に、レンガ造りの家がならんでいました。ちょっとだけ暗い印象。
というか町行く猫さんたちもちょっと暗い顔をしていました。
ちなみにここは模様が無い猫さんたちの地区みたいです。
ヒズミさんとファナさんには表情の違いは分からないみたいだったけど、彩萌には超落ち込んでるように見える。
ヒズミさんに引っぱられてた腕を放してもらって、キュートな青い目の白猫さんに話しかけてみます。
赤いリボンが似合ってます、この子は髪の毛が生えてる猫さんでした。
「にゃー……、どうかしたんですか? みんな暗い顔してます」
「にゃ? ……あ、お外から来た噂の珍しいにゃんこさんです?」
というか、ケット・シーは背の低い種族なんですね。みんな彩萌と同じくらいの大きさじゃん。
王様はすごいでかかったけどね。
「にゃにゃ、きっと今年もタビーネストがネコ式着地術大会で優勝するんですにゃ……ユニカラーズは五年連続最下位に決まっていますにゃ!」
白猫さんは悲しそうにそう言うと、手で顔をおおって泣き出してしまいました。
どうやらネコ式着地術大会はこの集落にとってはすごい大きい意味があるようです。
オリンピックみたいな感じなのかな、分かんないけど。
「にゃにゃんネコ式着地術大会のことについてくわしく聞きたいですにゃ……、もしかしたら出場するかもしれないんです」
彩萌が白猫さんに聞けば、後ろでヒズミさんとファナさんが話してるのが聞こえた。
やっぱりこの辺りの文化を知っておくのは大事かな、とか、仲良くなれば聖地についても聞きやすいだろうか、とかいろいろ。
そういえば、聖地に咲く華について調べるのがお仕事なんだっけ?
「にゃう、ネコ式着地術大会で優勝するのは猫の誇りですにゃ。そりゃあもうその地区の強者が出場しますにゃ、優勝した地区は聖地での爪とぎが一日だけ許されますにゃ! にゃにゃ、私も聖地のクロカッカゴケで爪とぎしたいですにゃ! クロカッカゴケは黒くて硬くて良い匂いがする木なんですにゃ!」
「クロカッカゴケ……、なんか木っぽくない名前ですね」
「にゃにゃにゃにゃにゃ! それに聖地には美味しい草がいっぱい生えてますにゃ、それを食べればお腹の中スッキリしますにゃ! でもそれは優勝した地区の猫しか食べられませんにゃ……にゃにゃにゃとても美容に良い草なんですにゃ! 乙女の憧れですにゃん!」
彩萌にはよく分かんなかったけど、なんか猫さんにとっては重要な話みたいですね。
彩萌は爪とぎしたことないけど、したほうが良いのかな?
うーん……美味しい草がファナさんたちが探してる幻の華なのかな?
「聞いてください旅のにゃんこさん! 実は私の兄上が三年ほど前に王様になったのですけども、最初はそんな不公平な方法を止めさせるって言ってたのに今はだらけてしまってにゃんにもやって下さらないんですにゃ! それどころかぶくぶくぶくぶく太ってしまって! 私は妹として恥ずかしいですにゃ!」
「にゃにゃ……確かに白猫でしたね、すごい大きい」
「ネコ式着地術大会は前の王様のタビーな猫が作った大会ですにゃ、むかしはそんな大会無くて一年に一度みんな聖地での爪とぎが許されてたのに! おかしいですにゃ、できてからずっとタビーネストが勝ってるってところも陰謀を感じますにゃ!」
白猫さんの不満が爆発してしまいました……、でもみんな許されてたのに変わっちゃったら不満だよね……。
というかタビーってなに? 彩萌そこらへんがよく分からないけど模様の名前なのかな?
「でもあと二年我慢すれば……新しい王様に代替わりですにゃ……、次の王様が良いにゃんこであることを祈りますにゃ」
「にゃにゃ? 五年で新しい王様になるんですか? 次の王様はどうやって選ばれるんですか?」
「にゃ、聖地に住んでる猫神様が次の王様の元にやって来て首輪を託すんですにゃ。それはどう頑張っても取れない首輪なんですにゃ」
ふむふむ、なんかけっこう聖地について情報が集まった気がしなくもないぞ。
聖地は普通では入れなくて一年に一度入ることができた、でも今は大会に優勝した地区の猫しか入れない。
聖地には猫神様が住んでいて首輪をたくしに来る、たくされた首輪は呪いのアイテムで取れなくてその首輪をつけてる猫が次の王様。
聖地にはいっぱい美味しい草が生えてて食べるとお腹がすっきりして美容に良くて、クロカッカゴケって言う木も生えてて爪とぎに最適。
そんな聖地は今はタビーネストが独占してる。ってことですね。
「にゃにゃ、聖地はどこにあるんですか?」
「あそこに大きい雪山が見えますにゃ? アレの麓に大きな湖がありますにゃ、大きな湖の中心に島があって……そこが聖地です。一年に一度だけ湖の水が凍って通れるようになりますにゃ、クロカッカゴケと美味しい草とかを守る為に湖の周りには高い塀と結界が張ってありますから普通じゃ通れないのですにゃ」
「結界ですか?」
「にゃにゃ、我等がムジネコ一の魔術師であるテグア=クロードサニス様が張ってくださっている結界ですにゃ!」
「クロードサニス様はイケネコなんですにゃ!」と白猫さんは興奮したように教えてくれました。
ふむふむ、なるほど。もしかしたらクロードサニス様に聞いたら、聖地について分かるかもしれませんね!
「いろいろ教えてくれてありがとうございます白猫さん!」
「いえいえ、お気になさらずに! もしネコ式着地術大会に出るならぜひ優勝してください、もうタビーネストに勝ってほしくないんですにゃ!」
白猫さんにバイバイして、ふり返ればヒズミさんとファナさんにじーって見られてた。
ヒズミさんはなんだか面白そうなものを見る顔だけど、ファナさんは顔が怖いからちょっと怖いです。
「すごいねぇ彩萌ちん、同族の好かもしれないけど聞き上手なんだねぇ!」
「ボク達だったら怖がられたり警戒されるから上手く出来ないんだよね」とヒズミさんが笑って言った。
お役に立てたようで嬉しいです! それにちょっと楽しかったです。
クロードサニス様の情報を調べたいからムジネコ通りにある酒場を探そうという話になりました。
クロードサニス様について聞けばよかったかも……、って思って言ったんだけど大丈夫だって。
あんまり深く聞きすぎて住民を不快にさせるとたいざいしにくくなるし、有名人なら簡単に分かるって。
いきなりたずねると相手を良く知らないから話が聞き辛いらしいです。
へんくつな人とか、頑固だったりするとよけいに話が聞き辛くて二度目がなくなっちゃうかもしれないらしいです。
だからクロードサニス様の人がらとかを調べながら住所も調べればおっけーだってさ。
なんかこの仕事って探偵とかみたいで面白いね!
――アヤメちゃんの魔法日記、六十三頁




