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アヤメちゃんの魔法日記  作者: 深光
始まる為のエンディングノート
63/107

雪原を越えて、燃える

 ずーっとヒズミさんは一人で喋りまくってた。

 リッテがすごいことになってるとか、とある小さな村の宿屋が出してるリイムのゼリーがマジ美味いとか。

 そんな話をしてたらリイム食べたくなってきたって言ってたから、一個分けてあげた。

 いっぱいあるし、食べないと腐っちゃうし重いしね。


「……ふむ、彩萌ちんはリッテにも行ってたのね」

「この辺でそのサイズが取れるのはそこくらいしかないな……」


 みんなで食べた。やっぱり美味しい。

 やっぱりずっとヒズミさんは一人で喋ってた。

 ちょっと沈んでる感じのフレンジアさんが女性に間違われてナンパされてたとか、そのナンパがすげー態度が悪かったせいで温厚なフレンジアさんの一本背負いが決まったとか、剣を持つとすごい性格が変わるとか、その変わった時の性格がすごいとか。

 ヒズミさんは今フレンジアさんとイズマさんの関係が気になってるらしい、よく分かんないけど顔見知りだと思う。ヒズミさん的にもっと仲良くなってほしいらしい、彩萌はぜったいあれ以上仲良くならないと思う。そうするともっとみてておいしいんだって、……フレンジアさんが好きなのかな?

 ヒズミさんのよく分かんない話を聞いてると、ファナさんが眠そうな顔で彩萌に近づいた。病気だから気にするな、と一言言って寝っころがった。

 病気なんだ……、ヒズミさん大変だね。幸せそうな気もするけど。

 彩萌も気にしないことにしてちょっと仮眠しよう、雪の道歩いてたから疲れちゃったよ。なんかヒズミさんが誰かと話してる気がするけど、まあいいや。





 ――世界は何で穢れているのか、分からなくなる。

 欲求か、野望か、優しさか怒りか悲しみか。それとも本当に穢れてしまっているのか。

 穢れてしまった乳白色だった魔石に触れる、黒い石に触れていると分からなくなる。

 穢れてしまったから、そうなるのか。

 そうなってしまったから、穢れてしまったのか。

 その疑問は愚問だ、と思う。穢れてしまったら崩壊するだけなのだから関係ない。

 もう後は崩壊するだけ、なら次の希望に賭けてみようか。


「簡単に言えば俺は死にたくないだけなんだよ、ただ善意に胡坐を掻いて座ってる酷い奴だからな」


「だから怨んで良いぞ」と語りかける。

 そう言えばお前は悲しそうに笑うのか、嫌味の八つでも聞けると思ったのに。

 こういう時だけ良い子ぶるのか、だから嫌われてたんじゃないのか。

 並行世界の自分も勝手に巻き込むって言うのに、被害者ぶってんのか。

 ――まあ……、一番の加害者は俺なんだけど。

 俺とアイツって似た者同士らしく性格悪いよな――……そう思うだろ?





 ――なんだかまた気分の悪い夢を見てた気がする……。

 その夢に話しかけられた気もする、なんだか疲れる夢だった。

 目を開けばなんか赤茶色の真っ赤なマフラーを巻いた狼が見える……。


「起きたか、魘されていたが大丈夫か? 集落まで行こうと思っているんだが、行けるか?」


 あ、ファナさんか……。狼の姿にもなれるんだ、びっくりしちゃった。

 彩萌はファナさんにうなずいて、立ち上がります。

 あー、座って寝たから体ばきばきだー。

 先導ランタン君スーパーとか、マフラーとか手袋を装備して彩萌もファナさんに続いて小屋を出ます。

 なんか良い天気です、雪の道から外れて積もった雪にダイブしてるヒズミさんが見える。うひゃひゃひゃひゃっ、って笑うのはどうかなって思うけど……ヒズミさんらしいのかもしれない。服の中に雪詰めてるけど、ファナさんが何も言わないからいつものことなのかな。

 そんなことしてるのは雪女だからかな? それともヒズミさんだからかな?


「ファナ見て見てー、巨乳だよ巨乳! ボクも随分と雪女らしくなったんじゃないかい!?」

「随分と硬いな」

「元から硬いよ、柔らかさなんて小指の先も無かった!」


 ヒズミさんだから、でした。

 楽しそうだから良いと思うけど、女性としてその行動はどうかなってちょっとだけ思っちゃったり。服の中から雪を取り出してるヒズミさんを見ながら、先導ランタン君スーパーを持ち上げます。ここ取っ手の部分がなんかあれだから、なんていうかきらきら部分がくるくるするんです。

 集落のことを考えていれば、しばらくしてぴたっと止まって方向を教えてくれます。

 ヒズミさんを放置して彩萌を見ていたファナさんもその方向を見てます。


「そうやって使うのか……」


 そう呟いてファナさんは雪の山に炎を吹きかけて……火吐いてる!

 すげー! ボーって、ボーって火吐いてるよ!

 でもびちょびちょだよ、すごいビチョビチョだよ!


「行くわよ彩萌ちん、風になるわ!」


 ヒズミさんわけわかんない、とか思ってればヒズミさんに肩車された。

 ファナさんの方見れば、なんか燃えてるんだけど大丈夫なの?

 なんかふぁいやーしながら雪の中を走って行くファナさんの後ろには道が出来てた。

 すごい冷たい風が吹いたなって思ったら、ヒズミさんはファナさんの後を追うんですよ。すごい早い! なんでかなーって思って道を見れば、びしょびしょじゃなくてつるつるになってた。よく見ればヒズミさんスケートの靴みたいなのはいてた。

 雪女すごい、というかすごい早くて怖い。

 ヒズミさんは風になった。……じゃあファナさんは熱風だね!





 ――アヤメちゃんの魔法日記、六十一頁

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