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アヤメちゃんの魔法日記  作者: 深光
始まる為のエンディングノート
62/107

旅小屋の旅人

 ふかふかのベッドで寝たおかげで目覚めがさいこーです。

 でも朝ごはんのなんかふあふあしててかりかりしてるマフィンみたいな美味い主食に入れられている材料を知った彩萌はどうしたら良いのか分からない。

 メイプルシロップと粉と極彩蝶の卵を練ったやつらしい、極彩蝶だよ? 極彩鳥じゃないんだよ!

 芋虫の一歩手前なんだよ……、どうしよう、美味しい。

 お花みたいな香りがするけど、それが極彩蝶の卵の匂いなんだって。

 彩萌芋虫の一歩手前を食べてるんだよ……。どうしよう、超美味しい。

 ――……考えないことにしよう、美味しいし。

 だから昨日からフェールニールさんは妖精たちが出すものを食べなかったのか、食文化の違いだね。

 シノーさんはあれだね、ブロッサムさんを演じてたから慣れちゃってるんだね。

 彩萌はシノーさんのことを早くどうにかしたいはずのフェールニールさんとかにお願いして、次の行き先を決めるための相談をしています。ご迷惑おかけしてます。


「リッテがここだから、現在地はここらへん?」

「そうですね、見ての通りここは険しい山々に囲まれていますから……違う大陸を目指すには陸続きになっている隣国のリンズを目指せばよろしいのですが……」


 フェールニールさんは地図を指さしながら教えてくれます。

 勉強になります、そして意外と優しいですねフェールニールさん。


「道は一本道ですが、豪雪地帯なんですよね。リンズとここのちょうど中間の辺りにケット・シーの集落がありますよ」

「豪雪地帯ですか……」

「えぇ、聖女様の場合ですと歩いて行くのは無理かと……。送って行きましょうか?」


 ケット・シーの集落には行ってみたかったけど、危ないからしょうがないよね。

 お願いしますと言おうとすれば、なぜかミニブロッサムさんに体当たりされた。顎が痛い。


「まだあきらめるのは早い……! 豪雪地帯でお困りのあなたに! 地図に載っていない国を旅行中でお困りのあなたに! そんなあなたにこれ一本、旅先で迷わなくなる先導ランタン君スーパーのご紹介です!」

「マジックアイテム発祥の地である妖精の国一押しの便利アイテムでーす!」

「これさえあれば辿り着くのが難しいと言われたケット・シーの集落にも、妖精の国にも簡単に行けてしまう優れものでーす!」

「あやっちはケット・シーだから寒さはたぶん問題にゃっしんぐよね」


 ミニブロッサムさんとフフちゃんとググちゃん(赤い妖精と青い妖精)による通販番組でも始まったのかと思った。

 そっか、彩萌はケット・シーだから寒さ大丈夫なんだ。

 そうだよね、雪が微妙に残ってる山の中で薄いワンピースと短パンだけで過ごせてたもんね。

 もうちょっと防寒対策すればぜんぜん大丈夫そうかも……。


「リンズからの商人がリッテに行ったりしてるから、雪の中でも分かるように魔法をかけた道が有るよ。ただケット・シーの集落への道は無いかもしれないけどね、リンズまでは歩いて行くのは可能だろ!」


 ――そんなこんなをミニブロッサムさんが主張して、彩萌は現在雪の道を歩いていました。

 先導ランタン君スーパーを持って、マフラーとか手袋とかきてるよ。

 かわいい子には旅をさせろー! と言われ、彩萌もうっかりうなずいてしまったために真っ白な世界を歩いているのです。

 ちょっとこの真っ白に飽きてきた。

 あとケット・シーの集落に行く彩萌にってミニブロッサムさんが渡してくれた瓶が重い。

 そういえば先導ランタン君スーパーは、中に火が入ってなくてきらきらしてるんですよ。

 紫色と緑色のきらきらだから、緑と紫の魔力が中に入ってるんだね。

 魔物避けのおまじないもかけられてるんだって、すごいね先導ランタン君スーパー。

 なんか風が出て来たし、ふぶいてきそう。でもあと少しで折り返し地点の小屋があると思うんだよね。

 しばらく歩いてれば小屋が見えたよ、あと雪がふってきた。

 小屋には明かりがついてて、人影が見えるから誰かいるみたい。

 こういう時どうしたら良いのか分かんないから彩萌は、とりあえずノックしてみる。


「すいませーん、誰か入ってますかー」

「誰か入ってますよー、一名様ごあんなーい」


 元気な声が聞こえて、その人は扉を開けると早い動きで彩萌を小屋の中に入れたんです。

 部屋の中に冷たい空気が入るとダメだから……かな?

 彩萌を早い動きで小屋にいれたのは水色の髪をした、薄着の女の子だった。奥には赤茶色な色合いの真っ赤なマフラーを巻いた獣人族の……お姉さん? がいました。

 彩萌より薄着じゃーん、すげー。真っ赤なマフラーの狼っぽいお姉さんはスーツみたいな服着てる。


「……おぉ! ケット・シーじゃないかー! キミはケット・シーの集落から来たケット・シー?」

「えっ? 彩萌は……妖精の国から来たケット・シーです?」

「な、なんだってー! 妖精の国……どっちにしろ珍しいじゃないかー!」


 水色の人はハイテンションだね、おーばーりあくしょんだよ。

 なんか真っ赤なマフラーの狼なお姉さんは彩萌をじーっと見ながら、耳とかぴくぴくさせてた。

 彩萌から何かを感じ取っているのかな。


「ボクも妖精の国行ってみたいんだよねぇー! それでそんなケット・シーさんは何処に行くんだい?」

「彩萌はリンズに行きます、でもケット・シーの集落にも行こうかなって思ってたり」

「なんと、ケット・シーさんもケット・シーの集落に行くのかい!? ボク達もケット・シーの集落に用があるんだよ!」


「でも場所が分かんなくってずっとフラフラしてんのさ……」と水色の人はおーばーりあくしょんで壁に手をついて落ちこんでた。何かを期待しているような気がする……、うん。


「でも彩萌は小さいから道がなかったら行くのを止めようかなって思ってて……」

「その言い方だと行きかたは分かってるみたいじゃないかい、ケット・シーさんよぅ……ボクに詳しく教えてごらん」

「くわしく彩萌も教えられないけど、これです」


 とりあえず、先導ランタン君スーパーを水色の人に見せます。

 興味深そうにその人は彩萌から先導ランタン君スーパーを受け取って、見ています。

 色んな角度から見たり、ふったりしてる水色の人を見ていれば、赤いマフラーの狼なお姉さんが彩萌に近づいてきた。


「……なぁ、初対面の奴にこんな要求するのは失礼だと思うんだが……」

「なんですか?」

「――……マタタビ酒、持ってるよな? ……ずっとフラフラしてた所為で酒がきれちゃって、少しだけで良いからくれない?」


 マタタビ酒……マタタビ……あっ、ミニブロッサムさんがくれた瓶の中身ですか?

 まあ彩萌は飲まないし、なんかあったらこれ使えって言われて渡されたやつだけど……ちょっとなら平気かな?


「ちょっとなら良いですけど」

「ありがとう、感謝する」


 すごいお姉さんは嬉しそうです、尻尾がすごい勢いです。

 お姉さんが持ってたコップにそそいであげます、開ければたしかに酒臭かった。

 マタタビが入ってるみたいだけど、彩萌はなんかすごくそれに興味が出なかったですよ。ちゃんとしたケット・シーじゃないから?

 まあ、良いか。カバンに瓶をしまいますよー、ちょっとだけ軽くなった。

 お姉さんは大事そうにちびちび飲んでました、お酒好きなのかな。


「なんか特殊な魔法かけられてるのは分かったけど……、ぜーんぜんわからーん! 流石は妖精の国のアイテムだぜ……!」

「それ彩萌専用アイテムに作りかえてもらったんです」

「マジかよ、じゃあ専門の鑑定士じゃないと分からんね! ケット・シーさん良ければ迷えるボクたちを神の国に連れて行っておくれ……!」


 良いけど……、なんだろう。すごい演技がかった動きだね。

 お姉さんはなんかクールな感じで、水色の人はハイテンションだね。


「良いですけど、道がなかったら何とかしてくれると嬉しいです?」

「おっけー! ボクは何もしないけどここにいるファナが何とかしてくれるよ!」


 何もしないんだ……、お姉さんの名前はファナさんですね。

 それにしてもお姉さんたちはなんのためにケット・シーの集落に行くんだろ?

 行きかたも分からないのに大変だね……。


「ボクの名前はヒズミだよ、熱い心が宿り熱い血潮が体に流れる熱血系雪女だよ!」

「……ファナ・アルギズミ、フレイムドッグ」

「ふれいむどっぐ?」

「一応はアンデッド系モンスターだよ、特別な術を施した獣人族が焼死する事で生まれる魔物だね!」


 な……なんか生まれかた、いや作りかた? が残酷ですね。

 なんでもお姉さんたちは傭兵さんで、ケット・シーたちが守ってる聖地に咲くと言われている幻の華が本当にあるのかどうかを調べる依頼が入ってるらしい。

 そして彩萌も自己紹介すれば、なんだか聞いたことがある名前だとヒズミさんにさわがれた。さわがしい人だなぁ、って思っていればどうやら二人はフレンジアさんの知り合いらしい。彩萌はその彩萌ですって名乗り出なかったよ、だって面倒なことになりそうだし姿形が違うもんね。

 いつの間にか、フレンジアさんは本当に男性なのかどうかって話をヒズミさんが一人でしてた。実は声を変えて男装した美女だと言う可能性も否定できない、という結論に落ちついてた。でもヒズミさん的には男性であって欲しいらしい、そっちのほうが見てておいしいらしい。見てておいしいって……どういう意味なのかな?





 ――アヤメちゃんの魔法日記、六十頁

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