妖精と天使
道の先には普通に町があった。
彩萌と同じ大きさの妖精さんとか、すごい背の高い妖精さんとかもいた!
妖精さん自体が花みたいな感じになってて、その場から動けない感じの妖精さんもいたよ。
なんかみんなけっこう楽しそう、そしてみんなくすくす笑うんだね。
メイン通り? を歩いていれば不思議な見た目のお菓子とか、不思議な形の家具とか売ってるお店がいっぱいあった。
想像より……妖精さんってうじゃうじゃいるんだね。
もう国だね、妖精の棲み処というか国ってレベルだよ!
お菓子のお家みたいな色合いの家がいっぱいだし、道もクリームみたいな色でカワイイな……。
でもたまにいる虫の頭をした妖精さんを見ると、現実に帰って来るよ。
「あにょ大きい城がちぇりーぶろっしゃむの館だじぇ」
「おぉ、なんか……日本の城みたい」
外観がね、ピンクと白の日本のお城だった。
すごいなんか、ふぁんたじっくな城下町なのに城だけなんか、……浮いてるね!
でも……このあんばらんすさが妖精っぽいですよ。
城の前にいた門番はピンク色の甲冑着てたし、でもよく見たら門番は置物だった。
なんていうか、不思議だね。
誰でも入れるようになってて、誰でもぶろっしゃまさんには会えるらしい。
門をくぐって、敷地内に入れば空気が変わった気がする。
なんか、きれいになった感じ? 甘い匂いもなくなったね。
「ここは毒はにゃいんでし、ぶろっしゃまは匂いに酔うから嫌って言ってたにゃん?」
「たしかに彩萌もくらくらしてたから甘くないのは助かりますー」
「早く行こーじぇ、ぶろっしゃまのおやつを強奪しよーじぇ!」
怒られに行くんじゃなかったのか、ふよふよーってシースさんは先に飛んで行ってしまいました。
お城とかはピンク色だけど、なんかすごい普通に城だね。
梅の花とか桃の花とか、桜の花が咲きほこっててきれいだよ。
とりあえず入るとこにタオル置いてあったから、足の裏を拭いてから入ったよ。
庭と入口と外観は日本の城なのに、中は普通に西洋風だ……。
このちぐはぐさはなんなんだろう、彩萌の中の常識がちぐはぐだと感じさせるだけで幻想世界では普通なのかな。
とりあえず入口の目の前に大きな扉があったので入ってみる、なんか超広くてごうかな椅子が置いてあった。
あれだよ、偉い人が椅子に座りながらお客さんに会う場所だよ。
解放感が半端ないよ、だって壁とかなくて中庭に繋がってるんだよ。柱はあるけど。
中庭には一本だけ大きな桜の木があったよ。
誰も居ないから、彩萌は困りました。
シースさんはどこ行っちゃったんだろうか、なんかばさばさうるさいな。
そんなことを思って桜の木のほうを見れば、真っ白な鳥みたいな羽が生えたお兄さんがいたんですけど。
いたと言うか、今まさにおりたちましたって感じ?
えっ、なんていうか見た目的に……天使? おぉ、初天使です!
なんか感動してじーっと見てたらその人顔を上げたんです、そして彩萌にしょうげきが走ったんですよ。
恋をしたとか、そういうちゃちなものじゃないんですよ!
ちゃちってどういう意味なのか彩萌は知らないですけどね!
「や……山吹君のお兄ちゃん!?」
山吹君のお兄ちゃんの色違いだーっ!
金髪だよ金髪、しかも眼の色が青緑色で肌が超白い!
鼻がちょっと高いのはあれだよね、バランス補正ってやつですよね!
白と青で統一した鎧着てるんですよ、天使なお兄ちゃん。
なんていうか、顔とか見た目とかじゃなくて……雰囲気がすごいそっくりなんです。
というか山吹君のお兄ちゃんって髪型せいけつかんある感じにして整えたら、普通の人なんだね。
でも雰囲気が山吹君のお兄ちゃんと一緒で、なんか彩萌の苦手な感じがする。
「――……こんにちは?」
あいさつされたので、頭を下げておきます。
天使な山吹君のお兄ちゃんはチェリーブロッサムの館に何の用だったのかな。
きっとぶろっしゃまさんに用があったのに、知らないケット・シーがいたらびっくりだよね。
かつかつって音がするから、近付いてくるのが分かる。
なんか、顔上げるのが怖い。
彩萌の前まで来て天使なお兄ちゃんは止まって、彩萌のことじーって見てる。
なんていうか山吹君のお兄ちゃんも同じ事するんだけど、ねぶみする感じって言うか、品定めするって感じって言うか……。
とにかく彩萌のこと変な感じでじーって見るの、それ彩萌嫌なんですけど。
「……ブロッサムがどこに居るか、知っています?」
「わっ、わかんない」
顔を上げて見れば、天使なお兄ちゃんの顔が見えます。
なんか、目つきが鋭いですよ。怖いです。
天使なお兄ちゃんは彩萌に手を伸ばすんですよ、なんか怖いから逃げようとしたら金縛りにあったみたいに動けません。
こわー、この天使まじこわー。
山吹君のお兄ちゃんは変だったけど優しかったですよ!
なんか鎧着てるから、手先まで防御力高そうだった!
かつんって、彩萌の額の石を突くんですよ。
聖樹だけじゃなく、天使もまずそれですか。
「フルージェを額に生やした黒っぽい色合いのケット・シー、ですか。――……ここ、血がついてますよ」
まっ白いハンカチを取り出すと、天使はぐりぐりと彩萌の額を拭いてくれました。
良かった……、なんかすごい怖い雰囲気だったからどきどきしちゃった。
でも彩萌の体動かないままなんですけど、何したんですか。
「こんな噂話ご存知ですか? プルーム地方にある小さな村での出来事なのですが」
「ぷるーむ?」
「羽毛の様に柔らかい雪が降り積もる地域なのでそう呼ばれているそうです、正式な名前はありませんからそう呼ばせて頂いておりますが何か不便でも?」
「……ありません」
言葉がとっげとげしい……。なんでですか。
山吹君のお兄ちゃんに似てるけど、冷たいんだね……。
というかいつまで拭いてるつもりだろうか、乾いちゃってなかなか取れないのかな。
「……世界に一つしかなかった大樹が、突然小さな村に現れたそうですが貴女はどう思いますか」
これ、リッテのこと? 聖樹リイムの話?
何でそんなこと聞くんだろう、というか噂話じゃないよね……?
そもそもなんで彩萌に聞くの?
「突然に、一瞬で、前兆無く、リイムが急成長を遂げた。しかもその土地の魔力は穢れていたはずなんです。長い間、聖樹は育てることができなかった土地の筈なんです」
「は、はい……そうなんですね」
「それに魔力は枯渇していたのです、それが元通りになり、しかも穢れは祓われ大樹が現れたなんて……おかしいと思いませんか?」
お、おかしいかもしれません。でも彩萌がしちゃいました。
でもそれが何の関係があるんですか、そしてなんでそんなに怖いんですかお兄さん。
ようやくハンカチがはなれて、お兄さんの顔が見えます。真剣です。
真っ白なハンカチに赤い汚れがついてました。
「聖樹を成長させるなんて邪神族にはできません、魔力を元通りにさせるなんて事も出来ません」
「……どうして彩萌にそんなことを言うんですか?」
「一瞬、貴女が邪神族だと思ったのです……でも違いました、邪神族には血がありませんから。ここからリッテはとても近い、……失礼を承知で伺いますが、貴女が聖女ですね」
その通りなんだけど、うんって言ったらいけないと思う!
お兄さんの迫力もなんだけど、彩萌今腕掴まれてるんだけどそれが超痛くて。
なんか、なんか怖いんだもん。
どうしよう、聖女だったら何されるんだ。
「――……まあまあまあまあ、天使が弱い者イジメですかぁ? 天使の名前も地に落ちましたねぇ、三人もそう思うよねぇー?」
「天使ってぇ、ださださだからしょうがにゃいね~、ルールに縛られた頭の固ーい古臭い連ちゅーだもんにぇ」
「悪戯も出来ないおかたい奴らでーすよね! 天使になんて生まれたくないでーすよ!」
「最近柔軟に対応できる悪魔に地位を奪われつつあるかわいそうな連中でーすね?」
「あらあらあらあら、不器用貧乏天使ちゃんだってみんな思ってるよねぇ! ぶっははははは! マジウケんですけどー!」
笑い声が聞こえてそっちを見れば、ピンクの長い髪とピンク系の和服みたいなんだけどドレスっぽいのを来た人がお兄さん指差して笑ってた。
ピンクの人……、お姉ちゃんに似てるかも。
なんか山吹君のお兄ちゃん似な天使を見ちゃったせいか、全然おどろかなかったけどお姉ちゃんそっくり! やばい、超お姉ちゃんじゃん!
天使なお兄さんは、不快そうな顔をして彩萌の手をはなしてくれた。
「……他人に迷惑を掛ける事を生きがいにしている様な、低俗な連中にその様に言われる筋合いはない」
「はぁ? お前は今その猫妖精さんに迷惑かけてたでしょうが、他人にとやかく言える様な大層な天使様なんですかぁ?」
こっちの世界でも、お姉ちゃんとお兄ちゃんは仲が悪いようです。(そっくりさん)
しばらく二人はよく分からないことで口喧嘩してました。
というか妖精さんたちが天使さんを馬鹿にして、面白がってる感じでした。
なんて言うのかなぁ……、うん。
なんかレニ様とディーテさんの喧嘩を見てるような気分になった。
それにしても他人とは思えないくらい、二人ともそっくりです。
――アヤメちゃんの魔法日記、五十六頁




