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アヤメちゃんの魔法日記  作者: 深光
始まる為のエンディングノート
53/107

猫と球体人形

 どうやら木でできたお人形さんのような魔物なお姉さんはなんか……穴? に住んでいるらしく、森の奥って感じの場所の木の下のなんか根っことかのすきま? にやってきました。

 意外と広いです、そして意外ときれいです。

 ぽすっと彩萌を置いて、お姉さんは彩萌のお腹に頭を置くわけですよ。

 しばらくすれば、寝息が聞こえてきます。

 ……彩萌を枕にするなー! 重いぞ!

 そんなかっとうをしながら、彩萌は時間をつぶしました。

 いつか動けることを信じてです! そしてついにその時はやってきたのです!


「にゃー! おもたい!」


 彩萌の口からはそんな叫び声が上がり、ついに起き上がることができたのです。

 お姉さんは頭を地面にうってましたけど、枕にするのが悪いのです。

 お姉さんのうめき声がします、でも彩萌は知らん。

 彩萌は自分の顔に触ってみようと、手を見て気付きました。

 手がふさふさです、なんか……手のとこの毛が真っ黒で、足もひざ下からの毛が真っ黒です。

 体はまっ白の毛でおおわれてて、所々茶色の毛が生えてます。

 手は形だけ人っぽいけどなんか指が少し短くてちょっと太くて肉球があるんだけど、これ絶対物持つの大変よね。

 服はなんか、ちょっと黄色いワンピースとなんかふわってしてる短パン着てたよ。

 彩萌はそんなふさふさで、頭とか顔とかさわってみます。

 うん……髪の毛は生えてる、耳は大きくって三角だ。

 ひげもあるし、額にはコツコツしてんのある……。


「うにゃ……、靴下がらの三毛猫人間……?」


 彩萌はそう思った、たぶんそうだと思う。

 ……確かに山吹君が好きそうな生き物だけど、なんていうかふさふさだね。

 彩萌は服の汚れをはらいながら立ち上がります。

 ……なんか歩くたびにぽきゅぽきゅなるんですけど、音が出る靴なんてはいてないですよ。彩萌は素足ですよ。


「……ケット・シー?」

「にゃ……、けっとしー?」

「ケット・シーは歩くときに、ぽきゅぽきゅ音がするって聞いた……」


 彩萌はけっとしーとか言うのになってしまったんですかね?

 お姉さんは頭をさすりながら、起き上がります。

 というかぽきゅぽきゅ音がしてたら、おんみつ行動できないです!


「でも額に宝石が生えてるのは、カーバンクル……」


 たしかに石みたいなの生えてる。

 ……いったい彩萌はどんな魔物になってしまったんだ!


「猫さん……、猫さんはやっぱり猫さんだから鼻とか良いの?」

「にゃふ、わかりません」


 動けるようになったのついさっきだもん……。

 なんだかお姉さんは、彩萌に興味しんしんですね。


「ねぇ……、ケット・シーは普段は微妙に浮いて移動するって聞いたよ……猫さんも宙に浮いたりするの?」

「にゃー、たぶん彩萌は空を飛べません」


 だって彩萌は魔法使えないですし。

 というかここ何処だろう、早く家に帰らないといけないです。

 みんな心配してると思う。

 彩萌はお姉さんにバイバイしようと思ったんですけど、なんかすごい見てくるんです。


「猫さん……、猫さんにお願いがあるの」

「にゃ? 彩萌へいぼんぼんだから出来ないこともありますよ?」

「でもきっと猫さんは猫さんだから鼻が良いと思うの……、この辺に森を汚してるものがあると思うんだ……」


「探してほしいな……」とお姉さんは呟きます。

 なんだか指先をあわせて乙女チックな仕草です、髪の毛寝ぐせでぼさぼさだけど。

 なんか彩萌のツメ良い感じにブラシになりそうだから、髪の毛とかしてあげた。

 すぐさらさらになったんですよ、良い髪してますね。


「にゃー……、でも彩萌は森を汚してる物の臭いなんてかいだことないですよ」

「音でも良いの……、変な音がするらしいから……。わたし、それを見付けてごめんなさいして罪を償わないといけないの……」

「にゃにゃ、なんだかふくざつそうな事情がありそうです」

「ねぇどうして猫さんは喋る前に……にゃーって言うの?」


 ……彩萌、にゃーって言ってた?

 これもケット・シーになったせいなのかな?

 うん、なんか恥ずかしいから気を付けよう。


「かんきょうはかいは良くないのです! ゆたかな森を未来のために残すのです!」

「うん……、環境汚染良くない」


 とりあえず、この穴から出よう。話はきっとそれからですね。

 出入り口はちょっと高いところにあったから、よじのぼろうとすればお姉さんが持ち上げてくれた。

 お姉さんありがとう、動けなかったからぜんぜん見れなかったけど森すごいきれい。

 こんなきれいな森を汚すのは良くないです。

 神様が住んでいそうです、あ……神様って言っても全身真っ黒なやつらじゃなくて、なんかおうまさんみたいなのとか。

 ぽきゅぽきゅ音をさせながら、彩萌はお姉さんの後をついて行きます。


「この辺だと思うの……、何か聞こえたりしない?」


 とりあえず、なんとなーくで耳に意識を集中させてみます。

 おぉ、いっぱい音が聞こえる。というかうるさい。

 ぴくぴく耳が動いてるのが分かります! おぉ、彩萌……すごい人間やめてる!

 えーっ、じゃあ頑張れば猫さんみたいなことできるのかな!?

 すごいはやく走ったり……、高いところからかっこよく着地したり!

 あわー! 運動苦手な彩萌からしたら、すごい夢のような話ですよ!


「猫さん、何か聞こえた?」

「うにゃあ!?」


 すごいうるさい! びっくりした。

 普通のでも大声みたいだった、気を付けないと心臓が死んじゃう。

 そしてごめんなさい、彩萌は自分の能力にびっくりしてえへへってしてた。

 だってすごいはやく走れるかもしれないんだよ。すごいよね。

 もう一回意識を集中です!

 なんだか、額の宝石が熱いような気がする。

 ちょっと触れば本当に熱かった、肉球が火傷するかと思った。


「あれ……? なんかきれーにきこえる」


 さっきよりも、雑音がへった気がします。

 なんか、ぎゅいんぎゅいんがちんって音とかぺたんぺたんとか、ぴちょんって音が聞こえます!

 というか、ぴんぽいんとに物の音が聞こえてる気がします!

 なんだこれ、すげー!


「あっちから、変な音がします! 機械みたいな!」

「ほんと? ありがとー、でも猫さんは危ないから行かない方が良いよ……」

「どうしてですか? 乗りかかった船ってやつじゃないんですか?」

「汚れちゃうから、危ないよ」


 ん……、汚れちゃうから危ない……。

 汚れちゃう、危ない。……あ! もしかして魔力が汚れるってやつ?

 えっ、でもお姉さんは人形の魔物さんだから、彩萌より危ないですよね!?


「彩萌は魔法がダメな人なんで大丈夫です! それよりもお姉さんの方が危ないですよ!」

「ん、平気なの……だって、わたし……リイムの木だから」


 ……うん?

 リイムの木って言うのは動かないです、だって木だし……。

 ――あ、そういえば。

 リイムの木って汚れた場所で育つと動き出して、人間を襲う警告の木ってディーテさん言ってた!

 えぇっ!? じゃあじゃあ、お姉さんは穢れたリイムの木なんですか!?

 えっ、人間襲うんでしょ!?

 すごい、良い人っぽいですよ……!


「わたし、いっぱい人食べたから……。魔力いっぱい持ってるし、知識も奪ったから……」

「えっ、えっと。知恵がついて、罪の意識とか……色々知ったってことですか?」

「うん」


 そっか、罪ほろぼしってやつなんですね?

 ……警告の木、って大変です。

 お姉さんは良い人です……、ちょっと自然界の弱肉強食にほんろうされちゃったかわいそうな人なんですね。

 でもイケないことをしたから罪をつぐなうんだって言ってるし、あとは当事者とかこの地域のルールでの話ってことですか?


「森を汚してるオーパーツ壊したら……、わたし、村に行って討伐してもらう……」

「えっ、でも……うぅっ、彩萌が口を出して良い問題じゃないっ……!」


 今は大丈夫でも、また暴れてしまうかもしれないですし。

 遺族の気持ちとか、いろいろふくざつな問題がからんでますし……。

 彩萌には難しい……。

 でもお姉さんが罪をつぐないたくってオーパーツ壊すって言うなら、それはお手伝いしても良いと思うんですよ!

 乗りかかった船です!


「でもオーパーツ必死に探したけど見付からなかったんですよね? もしかしたらすごい分かり辛いところにあるのかもしれないです! 彩萌は大丈夫なんでお手伝いさせてください」

「……良いの?」

「乗りかかった船ですよ! 彩萌はせっ……、あれなんでぜんりょうな市民なんで!」


 聖女って言おうとしちゃった、危ない危ない。

 目の前で困っている人がいたら、助けてあげるのがぜんりょうな市民ですよ!


「……私が死んだらきっと種が落ちるから、その時は猫さんに貰って欲しい……」


「ちゃんとした木になりたいから」とお姉さんは困ったような顔で笑ったんです。

 彩萌、頑張ります!

 汚れの原因を頑張って探しましょう! てきはほんのうじにありです!

 そういえば、ほんのうじってドコにあるの?

 彩萌もほんのうじ行ってみたかったなー。





 ――アヤメちゃんの魔法日記、五十一頁

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