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アヤメちゃんの魔法日記  作者: 深光
自由聖書
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死して完成する偶像

 小柄で、細い神様を見てディーテさんはちょっと引いてます。

 顔色悪いし、しかめっつらってやつでした。

 レニ様ほどじゃないけど、やっぱり神様を見るとこうなっちゃうんだ。

 座ったまま彩萌が神様を見ていれば、神様は近づいてきます。


「肉体は出来たと思います、あとは貴女の思い次第と言ったところでしょうか?」

「どんな体ができたんですか?」

「それはお楽しみにとっておきましょう? 文句をつけられても困りますから」


 えっ、文句をつけられるような体なんですか……?

 というか、体ができるの早いですね?

 もう少し時間がかかると思った。


「あまり時間をかけたくありません。ここには人種問わず、魔物も魔族も住まう地ですから……穢れを寄せ続けては争いの火種を生んでしまいます」


 そうなんだ、じゃあ早いほうが良いね。

 ……生まれ変わるのって、痛くないよね? 大丈夫……だよね?

 不安そうに神様を見れば、口だけしか見えてないけど笑った。


「死ぬときは眠りにつく様な感覚ですよ。……何かしておきたい事があるならしてからでも良いのですよ?」

「えっ……と、じゃあ遺書とか書きます」


 彩萌はノートをやぶって、ペンを持ってなやみます。

 うーん……、なんて書けば良いんだろ?

 遺書なんて見たことも書いたこともないから分かんないや。

 えーっと……はいけいだっけ? はいけいって入れたほうが良いの?


「それは手紙の話です、彩萌は遺書を残して何を伝えたいのですか?」

「うーん……、彩萌は幸せです」

「ならば、それで良いんじゃないですか?」

「せっかくだからもっとオシャレにしたいのです……」


 うーん……なんか、気取った感じが良いなぁ。

 なんていうか、聖女の遺書! みたいな感じで、じせのくみたいなカッコいいの……。

 全然思いつかないけど、なんかカッコいいのが良いです……。


「辞世の句っぽいの……彼岸に来りて御七夜はかくも儚き夢現かな、とかどうでしょう」

「彩萌には意味がよく分かりません……」

「異世界に来て、聖女として生まれ変わった七日間はすごい夢のように楽しかった、けど現実はやっぱり儚い。とかそんな意味でどうですか」

「よく分かんないけど、じせのくって感じがしますね! なんて書くんですか?」


 神様頭良いんですね! すごいです。

 彩萌らしく分かんないところはひらがなで良い、って言われたから全身全霊をこめてきれいな文字を書きます。

 幻想世界(ふぁんたじー)の文字は書けないから、日本語で良いや。

 ディーテさんと山吹君が読めれば、他の人も分かるし……。


「おぉ……、遺書っぽいです! すごい遺書っぽいです!」

「そうですね、私のおかげでとても聖女らしい遺書になったと思いますよ!」

「……遺書で喜ぶのは、どうかと思うんだけど」


 でも、遺書だし……。

 ディーテさんが言いたいことも分かるけど、……でも遺書だし。


「この辞世の句は後世に残っても恥ずかしくないですね、生きてる間は恥ずかしい思いをするかもしれませんけどまっとうな句ですから安心ですね」

「聖書にのる? 聖書とかなんかにのる?」

「……広まれば、載ると思うよ?」


 マジかー、彩萌も有名人だな。

 なんかディーテさんと神様のおかげで、怖くなくなっちゃった。

 痛くないらしいし、次に目を覚ます時が楽しみだね。


「お風呂入ってきれいにしてから、一番かわいい服で死にます!」

「せっかくですから、化粧でもしませんか? あ、そうだ。神様に娶られる的な感じで純白な衣装で逝きましょう!」

「良いですね! 聖女っぽいです!」

「神様……女でしょ? 良いの?」

「良いんです、別に全人類が神が女性だって認知している訳では無いですからね!」


 ウェディングドレスかぁ、なんか良い感じのあるかなー?

 でもふりふりでかわいい服いっぱいあったから、それっぽいのはあるよね。

 彩萌はなんか顔色悪いディーテさんを見ながら、神様の手を取りました。


「私たち、結婚します」

「うん……、おめでとう?」

「娘さんは私が幸せにしますから安心してください、お義父さん」


 神様意外とのりのりですね、邪神族さんに黒幕っぽいほうが面白いって言うだけはありますね。

 ディーテさんは緊張がとけたみたいで、顔色は悪かったけど笑ってくれた。

 よし、お風呂入ってこよー。

 体をきれいに洗って、髪の毛を念入りにお手入れして白くてふわふわなのを着ました。

 神様がどっかから持ってきてくれた香水をつけてくれた、リイムの花のにおいらしい。

 さわやかなにおいがします。

 化粧道具をどっかから持ってきた神様は、それをディーテさんに渡します。


「私は化粧なんてやったことないので、ディーテお願いしますね」

「えっ、マジ? お兄さんだって化粧したことないんですけど」

「ほら……私の手先ってうにょんうにょんしてますから、器用じゃないですから」


 面倒を押しつけたようにも思えます。

 「大丈夫ですよ……、知識とか愛なんだろお前!」とか神様に言われてディーテさんはしぶしぶしてくれました。

 ディーテさんのメイクは普通に大丈夫でしたよ!

 なちゅらるってやつですね。うん。

 彩萌はベッドに寝っころがって、手を組みます。


「ほら、彩萌死ぬ前に一言必要ですよ。遺書とは別の何かをお願いします」

「えっ……!? ……わ、わが人生はいっぱい悔いがあります!」

「後に残るかもしれませんよ? そんなので良いんですか!?」

「そ、……ですよね! えっと、えっとじゃあ、彩萌山吹君とけっ――」

「はい、時間切れー!」


 神様の声を聞きながら、彩萌は急に重くなったまぶたを閉じるのでした。

 すごく、眠いです。

 すごくすごく、眠い……。





 ――アヤメちゃんの魔法日記、四十九頁

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