いつかの為の疑問
六日目の朝、最悪な気分ではないですけど穏やかな朝とも言えません。
嵐の前のせいじゃくってやつみたいな気持ちです?
悲しくもないけど、嬉しくもない。
恐怖もないしよく分かんない気持ち。諦めのきょうちってやつですか?
でも神様は成功してくれると信じています、そうじゃないとやってられませんよね。
今日もディーテさんの作ってくれた和食を食べていますけど、なんか違う。
うん、調味料の所為なのかな……?
なんか、いちいちスパイシーっていうか、和食には必要ない風味があります。
でもディーテさんすごいね、何でも出来ちゃうんだね。
知識と愛は万能なんですね。
でもやっぱりディーテさんも同じこと思ったのか、煮物つまみ食いして変な顔してた。
「出汁の所為かな……、次はリーディアに作ってもらおう……」
「山吹君は料理得意なの?」
「手先が器用なんだよねー、あと執念が凄いんですよ!」
ディーテさんはにこにこ笑っています、いつも以上に笑顔です。
はりつけた笑顔ってやつですね、彩萌のために頑張ってくれてます。
ありがたいです……、笑顔でいてくれてありがとうございます。
「魔法書で見た通り、リーディアが世界各地を旅してたのは知ってるよね?」
「うん、いろいろ書いてあった」
「それには書かなかったと思うけど、旅の本当の目的は日本に近い食文化を持つ地域を見付ける為で、調味料を買い込む為だったんですよ!」
えっ、だってあの本にはほとんど食べ物についてなんて書いてなかったですよ!
薬草とか、魔法薬とか、魔法とか、魔物とか人種とかばっかりでしたよ!
「それは文字が苦手なリーディアが、覚えとかなきゃヤバいって思った物を日本語でメモしたやつなんですよ」
「な……なるほど、だから専門的な事ばっかり書いてあるんですね」
一部魔族への愚痴が書いてありましたけどね……。
山吹君もイケメンになりたいんだね、彩萌はイケメンだと思ってますけど。
「お兄さんはね、動物の姿だとコウモリなんですよー。洞窟内で土蜘蛛の巣に引っ掛かってるところを助けてもらったんだ」
「何から突っ込めばいいんですか? まず、ディーテさんって霧状になれるから別に助けてもらわなくても大丈夫だったんじゃないですか……?」
「いやー、お兄さんはあの時弱い魔物ごっこして遊んでたから自力で抜け出せない設定だったんだよ」
「弱い魔物ごっこしてたから、使い魔になったんだよー」とディーテさんは笑って言った。
弱い魔物ごっこしてなかったら、ディーテさんは山吹君と出会わなかったし使い魔にならなかったんだね。
でも、なんで弱い魔物ごっこなんてしてたんだろう……。
というかディーテさん、コウモリの姿になれるんだ。
「それで次に仲間に引き入れたのはフレンジアなんだよ」
「フレンジアさんも旅のお供してたんですか?」
「うん、なんかねー宿屋で思いっきり扉に顔ぶつけたらしいよ。狭い通路の癖に外開きの扉つけてんじゃねーぞってリーディアはマスターに文句言ってたね」
「その時はコウモリだから外に居たから見てないけど」と付け足した。
あれ、これフレンジアさんの話ですよね?
山吹君が宿屋のマスターさんに文句言った話になってますけど、フレンジアさんの話だよね?
フレンジアさんがかわいそうだから、もうちょっとくわしくお願いします……。
「リーディアが思いっきりぶつかった扉を開けたのがフレンジアだったんだよね」
「なんか、よく分かんないけどぶつかって仲間になったんですね」
「すごい血が出て、大変だったらしいよ。夕飯奢らせたらしいよ、んで次の行き先が同じって訳で一緒に行ってそのままずるずると?」
たしかにフレンジアさんはそのままずるずるしそうですよね。
まあずるずるしそうなのはディーテさんもですけど、ずるずるしそうです。
フレンジアさんは護衛としてすっごい役に立ったんだって、でもディーテさんは弱い魔物ごっこしてたから何もしなかったんだって。
「いやー、実は魔王だって知られちゃったときはリーディアにキレられたよー。フレンジアが宥めてくれたおかげで許してもらったけど」
「どうして山吹君は怒ったの?」
「なんかその時お兄さんのファン的な魔族さんに殺されかけてたから? 魔王様を使い魔にするなんて冒涜だ! ってねー」
それは……、うん。怒りたくもなるかもしれない。
それに弱い魔物ごっこしてたから見てるだけで、何もしてくれなさそうだもん……。
その魔族さんを説得したり、誤解を解こうとかしなさそうだもんね。
「なんたってお兄さんが使い魔を自称してただけで、リーディアはコウモリなんて嫌いだからついてくんなって言ってたからね」
それはなおさら怒りますよね。
えっ、じゃあ今も自称使い魔なの?
彩萌に初めて会った時、使い魔だって言ってたよね。
山吹君も大変だね。
「そういえばイズマはなんか、ドルガー夫婦に頼まれてリーディアの家庭教師してたらしいよ。それで知り合いなんだって」
「へぇ……、ドルガー夫婦は山吹君と一緒に住んでるの?」
「いや、不死鳥の死ぬところが見たいとか言ってリーディアに全部押し付けて仲睦まじく旅に出たよ、不死鳥が死ぬときに残る灰とやらを求めてね!」
「夫婦仲が良いのはうらやましいです……、でも不死鳥の死ぬところはすぐに見られるものではないような気がするんですけど」
「そうだね、だからずっと帰って来てないし音信不通みたいよ」
それは、大丈夫なのだろうか。
あの人たちなら大丈夫って言ってるからなんか大丈夫なのかもしれないけど、山吹君の義理のお父さんお母さんはどんな人なんだろう。
大丈夫って言い切れるってことは、すごい人なんだろうなぁ。
ジェリさんやエミリちゃんはイズマさんを通して知り合ったのかな。
王子は学校だろうし、エミリちゃんも学校行ってるのかな。
というかエミリちゃんと王子は幼少クラスなの……?
なんかあの二人は違うような気がする、飛び級してそう。
いや、そもそもエミリちゃんは本当は幼少じゃないんだっけ?
山吹君は学校には行ってないのかな?
「リーディアの事は、いつか本人に直接聞けばいいよ」
「……そうですね」
食べ終わって、食器はディーテさんが指ぱっちんで消した。
消したわけじゃなくて、移動させたらしいけど。
そのあと彩萌は、本を読んだりディーテさんに文字について教わったりしながら時間を潰しました。
お昼を食べて勉強して、一息吐いた頃に神様があらわれたのです。
いつも通りの黒い、黒い黒い服装でした。
――アヤメちゃんの魔法日記、四十八頁




