気になるあの人
とりあえず、ちょっと過去の話をしました。
もちろんイズマさんに売られかけたこととかは話しませんでしたよ。
すごい面倒なことになる、下手したらイズマさんと会えなくなります。
妖精さんとかがイズマさんをそう呼んでたから、彩萌は便乗しただけですってね!
「ずっちん……、そうだったんすか……。ずっちんは世界一がめついよ!」
「家から追い出すぞ貧乏人」
ジェリさんにずっちんと呼ばれるのは何があっても嫌だそうです。
ちなみにジェリさんは、イズマさんが買ったのは良いけど持て余している大きい家に住んでるんですって。
その大きな家に学生さんを下宿させて、大家さんとして頑張ってるらしいです。
イズマさんはジェリさんいわくすんげぇ狭い一軒家の二階の部屋に住んでて、一階で魔法雑貨のお店やってるらしいよ。
ありえないほどの狭さって言ってた、一階は超広いらしい。
というか二階が狭い理由は倉庫としても利用してるからだって、力説してた。
ちなみに、地下には山吹君が作った魔法薬とかの日に当たると良くない物を保存してるんだって。
すごい狭い部屋なのに、すごいでかい冷蔵庫があってウケるってジェリさん言ってた。
イズマさん……、すごい食べるもんね。
「それにしても……びっくりした。というか、恥ずかしかったんだけど……」
「あ、うん……ごめんなさい。でも彩萌、山吹君に会いたくて」
「別に、そんな事言われても、……困るっていうか、なんていうか……」
おぉ、山吹君が照れた。
顔が赤いよ、レアだね。写真があったらとっておきたいくらいだよ。
「彩萌ちゃんのストレートが決まった!」とジェリさんが茶化して言えば、山吹君に睨まれてた。
ディーテさんは山吹君にキレられた所為か、ちょっと大人しい。
フレンジアさんは、空気である。
そしてイズマさんはかかわりたくないのか、またタバコ吸ってた。
なんか、これを見るだけで山吹君の性格が分かっちゃうのはなぜでしょう?
いがいと暴君ってやつなんですかね?
さわらぬ神にたたりなしですか?
「とにかく! そういう直球な発言は困ります、恥ずかしいし。僕の性癖が疑われてしまいます」
「えっ、うん……ごめんなさい?」
「一応、幼少クラスだけだけど魔法薬を教えてる教師だし。……それなりに良い家柄だし、悪い噂がついたら困るんです」
「そういえば、王子も言ってましたね。教鞭がなんたらかんたらって」
「アレの名前は出さない、そしてアレの近くに寄らないでください。癪に障るから」
「せんせー、性癖疑われるとか言っておきながら束縛し過ぎなのは如何かと思うんすよー?」
ジェリさん、また睨まれてた。
お菓子を没収されてました、ジェリさんとしーちゃんが文句言ってたけど睨みで黙らせてた。
しーちゃんにもそれは有効だったようです……。
もしかして、なんか力使ってるの?
「というかね、彩萌ちゃん。こんな夜遅くにチビッ子が一人で出歩きなんて何考えてるの?」
「あ……、えっと、ごめんなさい」
「危ないでしょ、彩萌ちゃんは魔法も何も使えないんだから駄目だよ。危機感無さすぎるんじゃない? ずっちんなんて呼んでさぁ、イズマさんがロリコンだったらどうするの? だいたい彩萌ちゃんはいつもいつも無防備すぎるんじゃないの、いつか死んじゃうよ?」
すでに一回だけ……、死んじゃいましたよ。
でもそんなこと言ったら、この説教が長くなりそうなので何も言わずに聞いていることにします。
山吹君……、ねちねち怒るタイプだったんですね。
彩萌のことを心配して怒ってるのも分かるけど、いらいらしてるのも分かります。
うぅっ、山吹君の怒り方が怖いです。
「此処は比較的治安が良い方だけど、良い方なだけで犯罪が起こらないわけじゃないんだよ? 誘拐だって、起こることだってあるし。それに彩萌ちゃんは聖女様なんでしょ? 熱心な信者が彩萌ちゃんの姿を見てどう思うか分からないんだよ? 崇めるかもしれないし、もしかしたら冒涜的だって危害を加えようと考えるかもしれない! 彩萌ちゃんは他の十歳と比べると小さいし、幻想世界の子供たちと比べるとさらに小さいんだよ!? ロリコンホイホイなんだよ分かってるの!?」
「リーディア……ちょっと落ち着いて、彩萌ちゃんはたぶん過去で長いこと旅してきて、精神的に疲れててどうしても山吹君に会いたかったんだと思うから。リーディアだって分かるよね?」
フレンジアさんにそう言われて、山吹君はむっとした顔のまま黙り込んでしまいました。
フレンジアさん……! やっぱり大人ですねっ、ヘタレなんて思っててごめんなさい。
ムファトさんな時のフレンジアさんかっこよかったですもんねっ。
「たしかに危険かもしれないけど、彩萌ちゃんは今こうして無事にいる訳だし。次からは気を付けようね」
「うん……気を付ける」
「リーディアが彩萌ちゃんをすっごく大事にしてるのは分かったよ、でも怒るのと責め立てるのは違うからね? 嫌われちゃうよ」
「わ……、分かってる。ちょっと、苛々してただけ」
「リーディアは彩萌ちゃんより大人になったけどまだ子供だから」と近付いて来て彩萌の頭をよしよししながら、フレンジアさんは小さく笑って言った。
うん、そうだね。うん……、ちょっと嫌になりかけてたけどそうですね。
「……彩萌ちゃん、ごめん」
「じゃあ……彩萌はハグを要求しますー」
「ごめん、それは無理」
「うえ、またフラれた……ディーテさーん」
すごい良い笑顔でディーテさんはむかえてくれた。
ディーテさんはもう彩萌のおばあちゃん的存在だな。
そういえば、昔に比べるとディーテさんはあれですね。
常識的になりましたね。
「ディーテさーん、何も言わずに眠りについてごめんなさい」
「ほんとだよ、グラーノが泣いて大変だったんだからね? 海にひきこもりになっちゃったんだからね」
海から出てこないんだよ、とディーテさんは溜息まじりに話してくれた。
マジですか、グラーノさん……ごめんね。
ちょっと抱き着いてたら、山吹君に引きはがされました。
「そういうのが、無防備だと思うんだけどなぁ?」
「でもディーテさんは彩萌のおばあちゃん的存在なんですよっ!」
「えっ……お兄さんさすがにおばあちゃんはイヤだなぁ」
彩萌ちゃんが望むなら何でもいいよって言ったじゃん。
何でもじゃないじゃーん、ぶーぶー。
「というかねリーディア、彩萌ちゃんは山吹君が好きという前提を前に出しまくっているから他の奴が自分に好意を示す訳が無いと言う考えなんだとお兄さんは思います」
「そっ……、れは今は関係なくて!」
山吹君がわたわたしてる、なんか可愛いです。
でもね山吹君、彩萌が思うにディーテさんはそう言うことを言って意識をそらしてるんだよ。
慌てている山吹君をよそに、彩萌をたかいたかいしてるのが何よりの証拠です。
あと彩萌はたかいたかいで喜ぶ年齢じゃありませんからね!
彩萌は十歳ですからねっ!
――アヤメちゃんの魔法日記、四十頁




