神様と聖女の話
お家(大聖堂だけど)が出来た事で、彩萌の生活は劇的に変わりました。
何よりベッドがあることです、しーちゃんの毛とリイムの木で出来ているらしい……。
しーちゃんありがとう! そして種をくれたクレールさんありがとう!
歯を磨きたいなって思って、彩萌はリイムの枝で歯ブラシを作ったんだよ。
だって昔の人は木で磨いていたんですよ、アフリカとかいろんな国でもまだ木で磨いてますよ。
もっと早く気付けばよかったなぁ、なんて彩萌は思った。
でも作り方分かんなかったから、木の皮むいてかじったり歯でこすってみたりしたら気付いたら出来てたよ。
歯ブラシのおかげで、彩萌の歯の健康が保たれてるよ!
それから彩萌はお菓子だけの生活から、リイムの実と雑草を食べる生活になってね。
しーちゃんに毒見して貰ってるんだよ、しーちゃんは毒草も食べられるって言ってましたからね。
ちゃんと彩萌が食べても平気な草とそうじゃない草を教えてくれるんですよ
あと頑張ってなんか木をくるくるして火を起こそうとしたんだけど失敗して、結局フレアマリーさんに火を作ってもらってお風呂入ったよ。
それにトイレはねーグラーノさんが浄水する魔法を作ってくれて何とかなりました。
まあその魔法の仕組みを考えてくれたのはディーテさんなんですけどね。
その時にディーテさんに文句言われましたけどね、もっと早く話してくれればもっと早く作って彩萌ちゃんを殺さなかったのにーって。
そして彩萌はみんなとリイムの木の下で遊びながら、現実世界のお話をしてるよ。
といっても、彩萌は自然な話が好きだから動物とか木とか花とか虫とか魚の話してますよ。
ふぇっくんは、虫の話にすごい興味を持ったんですよ。
変な生き物作ってたよ、ちょっとキモい感じのです……。
グラーノさんは歌が凄い上手だったし、可愛い物好きだったよ。
本当はしーちゃんを触りたいらしいけど、食べられそうになるから怖いって言ってた。
あとね、グラーノさんがお魚さんを作ってくれたから彩萌の食がちょっと広がったりしたんですよ。
あと、生き物の話以外にも星座の話とかもちょっとだけしたんですよ。
ユースくんはきらきらしたのが好きらしくって、星座良いなぁって言ってて。
この時代でも夜が来るようになったんですよ、夜の方が星が良く見えるから良い感じです。
きらきらしたのが好きって言ってたから、宝石とか鉱石の話もしたんだよ。
そうしたらユースくんとかテスさんがなんかお話ししてた、宝石とかも作ってみたいらしい。
紙は木から作るんだよって話もしたんですよ。
それを聞いてテスさんが、神様に祈ってみたら育つんじゃないかっていうから祈ってみました。
木は育ったよ、ディーテさんが喜んでたよ。
だからいま大聖堂には本棚があって、本が入ってるんですよ。
むーちゃんは相変わらずで彩萌にいつも、いつ死ぬの? って聞いてきます。
でも悪い子じゃないですよ、良い子でもないけど。
こんなにいっぱい色々起こってるけど、まだ起きてから一週間もたってないんですからすごいですよね。
でもはやく、山吹君に会いたいです。
山吹君に会ったら、この事を話したいです。
「何を書いているんですか?」
「えっとぉ……、日記ですよ、彩萌は山吹君にいっぱいいっぱい話したい事があるから忘れないようにです」
「そうですか、幻想世界には慣れましたか? 幻想世界は嫌いですか? 現実世界に帰りたいと思いますか?」
あれ? 彩萌今誰と話しているんでしょう?
日記に夢中になってて気が付きませんでした……、振り返れば真っ黒なお姉さんがいました。
フードつきのマントを着てて、フードをかぶってるんですよ。
なんだか邪神族みたいな見た目をしてます、でも邪神族と違って赤い眼は光ってません。
顔は良く見えないから、口元しか見えませんけど。
たぶんお姉さんは彩萌より少しだけ年上です。
お姉ちゃんと同じくらいっぽいから、十三歳とか十四歳くらい?
ちらりと見える髪の毛は黒くて、なんだか肌の色とかも日本人みたい。
「どうでしょう? 現実世界に帰りたいですか?」
「でも……現実世界に帰ったら山吹君は居ないですよね? それに……、みんなとお別れするのはさびしい」
「そうですか、ではどうでしょう? この世界の為に死んでくれと言われたら死んでくれますか?」
「えっ……死にたくはないですけど、死ぬなら山吹君と結婚してからじゃダメですか……?」
彩萌がそう言えば、その人はにっこり笑ったんです。
たぶん、これがみんなが言ってた神様なのかな……?
なんだか彩萌は、神様を見ていると不思議な気分になってきます。
というか神様というより、女神様じゃんというツッコミはしてはいけないのでしょうか?
「そうですか、幻想世界の為に死んでくれるんですね! ということは聖女であることを認めて幻想世界の住人になるのですねっ!」
「えっ……と、山吹君と同じ墓に入りたいですけど」
「それは構いませんよ、どうぞお好きな場所でお好きに死んでくださいね。良かったです、聖女であることを認めないなんて言ったら殺そうと思ってたので」
あっさりと物騒な事を神様は言いました。
なんだか、神様も精霊さんも命を軽く見ているふしがあるんだね……。
自分たちは死なないから、その辺の価値観が違ってきてるのかな?
「過去に飛ばしたのも、貴女の体が馴染む様になんですよ。 何もしないで幻想世界に投げ出したら貴女の体がぱーんって爆発しちゃうところでした」
「貴女は体に魔力も無いし、素質もありませんからね~」と神様は笑って言います。
ぱーんって……怖いですね。爆発したくないです……。
「私は別次元に居るので、この世界に直接手を加える事が出来ません。ですので邪神族を送ってみたり、精霊を作ってみたりして世界に干渉しているのです」
「はぁ……? そうなんですか?」
「ですがそれでは足りないのですよ、だから聖女という媒介が必要なんですよ。でも貴女の自我や魂は必要ないので死んでも良いのですよ」
「むしろ死んだ方が世界的には好都合ですよ」と神様は彩萌の心をグサッと刺すような一言を言います。
酷いよ……、彩萌はまだ死にませんよ。
でも、神様なんてこんなもんなんですかね。
「貴女は祈れば良いのです、貴女が祈れば私は世界に干渉できる。私が世界に直接干渉すればもっと効率よく穢れを取り除ける。死んだ後の事は心配しないでください」
「なら……どうして彩萌を殺さないんですか?」
「私にはできない発想が、貴女にはできるかもしれないでしょう? だから私は貴女が祈るなら、綺麗な願いなら叶えてあげます」
綺麗な願いってなんだろう……。
木を成長させてください、みたいな願い事なのかな。
あの時すごい成長して、彩萌死にかけたけどね。
でも、そういえばどうして。
「彩萌なんですか? どうして彩萌だったんですか?」
「貴女が叶山彩萌である限り、貴女が魔法を使う素質の無い叶山彩萌である限り。媒介は貴女でしかありません」
「それは、私の所為ですが今は話す必要はありません」と言った神様の声は、冷たい感じでした。
うーんよく分からないけど、運命ってやつなんですかね……?
でも彩萌は、山吹君に会えるならそれでも良いですよ。
「でも今は聖女は必要ないのです……、必要なのは戦後の未来ですから貴女には眠っていてほしいのです」
「それって、もしかして棺桶の中に入ってですか……?」
「そうですね、貴女には頑張ってもらいたいので特別に山吹君と同じ時代で生きても良いですよ」
これが貴女への最初で最後の報酬ですよ、と神様は笑った。
口元しか見えないけど、なんだかちょっぴり悲しそうに見えた。
どうしよう、でも山吹君と会えるなら眠った方が良いのかな?
「みんなとお別れの挨拶をしたいです……」
「いや、……それはダメです。一部は反対しますから、面倒です。それで昔失敗しかけましたから今すぐシーシープドラゴンを連れて眠ってください」
昔ってなんだ、って思って彩萌が変な顔をすれば、神様は「並行世界の話です」と笑って言った。
寂しいけど、未来でごめんなさいってしよう……。
みんなは死なないから、会えるよね。
「説明はしておきますから、行きましょう?」
彩萌は日記とか魔道書とかをランドセルに詰め込んで寝てたしーちゃんを連れて、神様の後について部屋を出ます。
マントは置いて行きますね、誰か使って下さい。
大聖堂には誰も居ません、神様は彩萌を持ち上げると棺桶の中に入れました。
ランドセルは足元に置かれました。
彩萌が小さいのか、棺桶がデカいのか。
……きっと彩萌が小さいんだね、神様にらくらくに持ち上げられたんだもん。
しーちゃんを抱っこして、神様を見上げます。
どうやらふたは出来てたようで、神様はそれを棺桶に被せてました。
「今回は、成功させますよ。並行世界では失敗しちゃいましたけど」
……なんだか心配になる発言ですね、神様。
神様は一人だけなのかな? ……彩萌も頑張ろう。
神様は命を軽く見てるんじゃなくて、世界を良くしようと必死なんだと思った。
殺そうと思ってたり、殺しても良いよって言ってるけど彩萌のことを考えてみんなに助言してたりしてたし。
神様は世界のみんなの事を考えてるからそうなっちゃうんだね。
頑張っててすごいね。
そう思って見上げれば、なんだか驚いた顔をしてた。
「なんだか、今回の彩萌は大人ですね……」
神様は、彩萌にちょっと似てる気がした。
おやすみなさい、彩萌は聖女についてよく分からないけど頑張るよ。
世界のためって言われるとよく分かんないけど、みんなのために山吹君のために頑張ってる神様のために頑張りますね。
魔法が使えない彩萌に何ができるか分かんないけど、精一杯やってみます。
だからおやすみなさい。
――アヤメちゃんの魔法日記、三十八頁




