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アヤメちゃんの魔法日記  作者: 深光
幻想スケッチ
34/107

始まりはここから?

 ディーテさんのとこに出た時よりも、早く穴からは出られました。

 ですが、今回はどう頑張っても怪我は免れられないような高さです。

 あぁ、彩萌は死んでしまうのでしょうか?

 広い世界には、土しかないような感じでした。

 視界にうつるかぎり、何もありません。


「しーちゃん……!」


 頼りになるのはしーちゃんぐらいしかいません。

 水の音、が聞こえた気がします。

 彩萌は強い衝撃に、意識を飛ばしてしまったのでわかりません。

 ――やわらかな、ゆびさきが彩萌の髪を撫でています。

 目を開けば、真っ青な空が見えて黄色の髪の綺麗な女の人が見えました。

 その女の人は、角が生えていてショートヘアーが良く似合ってます。

 起き上がって、まじまじと見ればおっぱいが大きくてすごい美人さんでした。

 誰だろう……? 彩萌を助けてくれたのかな?

 じーっと彩萌がその人を見ていれば、その女の人は首をかしげます。

 辺りを見回せば、何もないです。

 建物も無いし、草も木も無いです。

 しーちゃんの吐いた水のおかげか、けっこう大きな湖は有りましたけど。

 あとなぜか置いて来てしまったランドセルとかお菓子が落ちてましたよ。


「あの……、綺麗なお姉さんが助けてくれたんですか?」

「……? おねえ、さん……?」


 そのおねえさんは不思議そうに首をかしげて、彩萌の言葉をりぴーとします。

 服装も黄色いです、ドレスみたいでかわいい服装です。

 ……なんだか、色合いって言うか、すごい黄色なところなんだかカラーゴーストさんみたいです?

 ムールレーニャちゃんとディーテさんしか見たことないけど。

 彩萌はランドセルの中身を開いて、魔法書を取り出して最後の方のページを開きます。

 そういえば忘れてたけど、魔法書に精霊について書いてあった気がする。

 山吹君は精霊に興味無かったのか、名前と色ぐらいしかまともに書いてなかったです。


「えっとお姉さんは、――なんて読むのこれ……? ……なんとかなんとかと大地の精霊のテスタト・ミモザ・オーカーさんですか?」

「てす……? てすたと、みもざ・おーかー……」


 あれ……? 違うの?

 おねえさんはその名前を何度も繰り返し呟いています。

 なんだろう、この反応。どうしたんだろう?


「テスタト・ミモザ・オーカー……」

「……? はい、テスタト・ミモザ・オーカー?」

「テスタト・ミモザ・オーカー」


 なんか、この人言葉を知らないみたいなかんじ?

 お姉さんはにこにこと笑ってうなずいてました、……え? なんで?

 彩萌が不思議そうにお姉さんを見ていれば、後ろから本が引っ手繰られたんです。

 振り向けば、真っ赤な赤い髪が見えました。

 びっくりな赤い髪は、ディーテさんに他なりません!

 なんだかディーテさん、同じような事してんだね。

 さっき会ったディーテさんよりも、過去のディーテさんだよね?


「あの……ディーテさんですか?」


 ちらりと彩萌に視線を向けて、ディーテさんは本に視線を戻します。

 あれっ、こんな反応初めてかも。

 もしかしてこのディーテさんは彩萌を知らないディーテさん?

 というか、ディーテさんの服装ちょっと違うんだね。

 なんか彩萌の知ってるディーテさんは現実世界でも通用しそうな服装だったけど、このディーテさんはすごい幻想(ふぁんたじー)だよ。

 しばらくディーテさんを見上げていれば、そのディーテさんの本を引っ手繰る男の子がいたんです。

 その子はすごい、緑色の髪の毛をしてました。

 ちょうちょみたいな羽が生えてて、なんだか妖精さんみたいです。

 もみあげだけのこしたポニーテールです。

 ぺらぺらぺらって、本をめくるとその子は顔を上げて彩萌を見ました。


「……すごいね! なんかー僕たちの知らない未来の事がいっぱい書いてあるんだね!」

「え……っと、……あの、あなたは誰ですか?」

「えっとねぇー! たぶんねぇー、この本に書いてある事が本当ならきっと僕はフェクタ・カクタスだよ!」


 なにそれ、どういうこっちゃ?

 きっと、ってどういうこと? 何でそんな曖昧なの?

 フェクタくんの目は、きらきらしたような目です。

 本をディーテさんに返しながら、フェクタくんは彩萌に言います。


「そっかー! 僕は真実と風の精霊なんだぁ、えへへーすごい事知っちゃったぁ! 僕は全部をお見通しできるんだねー」

「え……っと? え? どういうことなんですか?」

「戸惑ってるぅ? 彩萌ちゃん可愛いね! 僕たち作られたばっかりなんだよ、今できたところなんだよー!」


「出来たてほやほやなんだぁ」とフェクタくんは彩萌に教えてくれます。

 うん? 出来たてほやほや? カラーゴーストさんは作られたものだったんですか?

 え……? あれ……? なんかヤバくない?

 だってさ、これさ、もしかしたらエミリちゃんが教えてくれた創生期とやらの時代じゃありませんか?

 えっ? どうしよう、彩萌理の母ってやつになっちゃう?

 ……ってことは、彩萌が死んじゃう!?

 山吹君と会えずに彩萌は死んじゃうの!?


「そ、そんなのイヤァ――――――!」

「えっ、どうしたの彩萌ちゃん? なんで目からなんか出てるの? そんな顔も可愛いけど」


 フェクタくんは不思議そうに彩萌を見ています。

 たぶんテスタトさんは、彩萌が泣きだしておろおろして見ています。

 ディーテさんは、なんだか少し困ったような感じで彩萌の頭をなでなでしてくれました。


「彩萌死んじゃうのヤダー! 山吹君のお嫁さんになってから死ぬー!」

「なんか、よく分かんないけどぉ……なんかこれやだー! 僕も目からなんか出てきたー!」

「それ、涙だよ」


 ディーテさんが、短い言葉でフェクタくんに教えてあげます。

 作られたばっかりなのに、よく知ってますね……。

 知識とか、本とかそんな名前を名乗れるだけは有るってことですか?

 なんだか彩萌は涙が引っ込んでしまいました、フェクタくんが泣いてるから。


「……彩萌ちゃんが、聖女様なの?」

「違います、彩萌は断じて違います、聖女じゃないです。山吹君のお嫁さんになりたいただの女の子です」


 ディーテさんが彩萌を見て、首をかしげてそう聞きましたが否定します!

 だってそうでしょ? 彩萌は普通の女の子ですから。


「でも神様は一番最初に出会った女の子が聖女様だから、それのサポートをする様にって言ってたよ」

「なにそれ意味分かんない、それにほら、彩萌は大人のレディだから女の子じゃないんです」

「でも神様はその女の子は彩萌って名前でもこもこした毛が生えてるドラゴンっていうのを持ってるって言ってたよ」


 限定されてる……!

 彩萌が理の母とやらになるように、しむけられています!

 でも彩萌は、山吹君と素敵な新婚生活を送りたいので今死ぬわけにはいかないのです!

 大人の素敵なレディになって、山吹君にもう一度アタックする予定なんです!


「イヤなの? どうして?」

「だってぇ……聖女様になったら死んじゃうですよ? 彩萌は死にたくないのです……」

「聖女になったら死んじゃうの? 神様そんな事言ってたかな?」

「言ってなかった、そもそも死ってなに?」

「うーん……、分かんないけど終わり?」


 そうか、カラーゴーストさんは死なないから死ぬとか分かんないんだ。

 でも聖女になったらすぐ死ぬわけじゃないんだ?

 ……聖女にならなくても、彩萌がどうにか未来に飛ばないと……死ぬ?

 そうだよね、彩萌には寿命があるから、別に聖女になってもならなくても未来に飛ばないと寿命で死ぬよね! うわぁああ、どうしよう!


「たぶん大丈夫だよ、サポートするから」

「未来に行けますかっ!?」


 その質問には、誰もうなずいてくれませんでした。

 ちくしょう……、そう言えばしーちゃんはどこ行ったの……。

 辺りを見回せば、湖でぷかぷかと浮きながら涼むしーちゃんが見えました。

 お気楽なやろーだぜ……!

 ……あれ? そう言えばカラーゴーストさんは七人いるらしいのに三人しかいません。


「あの……、他の四人はどこ行っちゃったんですか?」

「……四人? ……全部でこれだけだよ?」

「あー、本に書いてあったね! 多分これから出来るんだよ!」


 そうなんだ……、どうしよう。

 彩萌はどうしたら良いんだろう。途方にくれて彩萌は空を見上げます。

 そして気付いてしまったのです。


「……太陽が無い」


 なんで!? だって宇宙空間ってあるでしょ!?

 幻想世界(ふぁんたじー)には宇宙無いの!? どういうことなの!?

 宇宙は必要でしょ!

 そう考えていると、彩萌のスカートのすそが引っ張られたのです。

 顔を向ければ、座り込んだままのテスタトさんが見えます。

 テスタトさん……、言いにくいからテスさんは指をさしました。

 その方向を見れば、なんかもやもやが見えました。

 オレンジ色と、紫と灰色です……。

 空を見上げれば、太陽……ありました。

 世界が作られる瞬間を見ているんでしょうか?


幻想(ふぁんたじー)って不思議だね……」

「不思議だねー」


 ほのぼのと、ディーテさんも彩萌と同じ言葉を呟きます。

 あぁ、あとは海の精霊さんとやらが必要ですね……、一人だけ仲間外れはかわいそうですから。

 彩萌はもうなんだか力が抜けてしまって、オリーネ先生に貰ったお菓子を食べます。

 飴が美味しいです……。


「なにそれー、なにそれー? 僕も欲しい」

「それ知ってる、甘いやつでしょ? 本に書いてあったやつでしょ?」


 三人が欲しそうな顔で見てたので、三人と同じ色の飴をあげました。

 すごい喜んでて、彩萌はちょっぴり嬉しくなりました。

 でも彩萌は早く山吹君に会いたいです。

 山吹君……元気かなぁ。





 ――アヤメちゃんの魔法日記、三十四頁

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